看護師さんの中で、こんな悩みを持ったことありませんか?
訪問看護では嚥下障害を持った方が、多くおられますよね。
少しでも安全に楽しく、食事を摂り続けてほしいと思う看護師さんも多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、訪問看護師でもできる嚥下訓練をリハビリ視点で解説したいと思います。
目次
嚥下障害の原因は?
嚥下とは食べ物を口に入れて飲み込むことです。
嚥下の一連の動作は以下の5つに分けられます。
このように嚥下の一連の動作を段階的に分けてあることで、嚥下障害がある場合、どの時期に問題があるか把握できます。
嚥下障害の原因は脳血管などの原疾患がある場合や疾患を背景として、認知機能障害や意識レベル、廃用による嚥下機能低下など様々です。
嚥下障害の原因については、以下のような背景があります。
(引用:高齢者の嚥下障害 図1 音声言語医学 Vol.54 No.3)
食事は食べ物を口に含め咀嚼し、飲み込める状態である食塊を舌で口腔後方部に送ります。
そして、嚥下する際に喉頭蓋が気道を閉鎖し、誤嚥を防ぎ、咽頭部を通過して食道入口部へと送られます。
高齢者の多くは、喉ぼとけである喉頭の位置が下降し、嚥下能力が衰えてきます。
喉頭が下降することは、嚥下時の咽頭期で行われる色々な運動機能低下の原因とされます。
嚥下での咽頭期に対する運動機能悪化を防ぐことは重要です。
今回は特に咽頭期での嚥下訓練をお伝えしますが、特に訪問看護現場で道具もいらず、比較的導入しやすい訓練を解説します。
訪問看護師でもできる嚥下訓練をリハビリ視点で解説します
咽頭での通過をスムーズにさせる前舌保持嚥下法
咽頭期では舌の付け根である舌根部と咽頭後壁が接触することで咽頭圧という圧が生まれます。
この咽頭圧は、食塊が咽頭をスムーズに通過するために必要になります。
咽頭圧が弱いことで、咽頭部に残留物が滞り、嚥下障害が起きてしまいます。
そこでこれらを改善させるための訓練として「前舌保持嚥下法」があります。
- 方法:舌の前方を軽く噛んで固定したまま、唾液を飲み込む
- 回数:1セッションに6~8回繰り返し、1日3セッション
舌を前方に出すほど、飲み込みにくくなり、負荷量も調節できます。
意外と大変で、舌を噛んだまま唾液を嚥下することは、嚥下障害のない方でも飲み込みにくくなります。
利用者さんに指導する前に、看護師の皆様も是非やってみてください。
咽頭残留を少なくする頭部挙上訓練
この訓練は嚥下訓練の中でもお馴染みであり、看護師さんも知っている方も多いのではないでしょうか。
シャキア法とも言われとても有名な嚥下訓練になります。
嚥下は咽頭圧があがり、舌骨喉頭挙上が行われ、食堂入口部が開大することでスムーズに行えます。
舌骨喉頭が挙上とは、いはゆる喉ぼとけを上げることで、嚥下には重要です。
頭頚部屈曲させることで、舌骨喉頭を挙上させる筋群の筋力を改善させることができます。
- 方法:臥位にて頭頚部を屈曲(頭を持ち上げる)
- 回数:1分挙上位保持、1分間休息を3セットおよび頭部挙上反復運動を30回
顎をあげたままの頭頚部屈曲ではなく、顎を引いたまま頭頚部を屈曲します。
頭を持ちあげる筋力が弱い方には30回とかはけっこうきついため、一度どの程度できるかなど評価し、負荷量を調整してみましょう。
高齢者などでは10回でもできない方もいるため、臥位ではなく座位にて行う「嚥下おでこ体操」と呼ばれる方法もあります。
- 自分でおでこに片手の掌をあてます
- その状態のまま、頭頸部を前屈させ(おじぎするような動き)、前屈する力に負けないよう抵抗をかけます
この頭部挙上訓練は、食道へ食塊通過を促進し、咽頭残留を少なくする効果があります。
特に嚥下おでこ体操は座位での方法で負荷量も手の力で調整しやすいため、より取り組みやすい運動だと思います。
より簡単に簡単な方法で嚥下訓練ができる開口訓練
頭部挙上訓練と同じような効果がある、「開口訓練」というものもあります。
また、頭部挙上で鍛えられる筋は口を開くためのメインの筋でもあるため、口を開くだけで同じような運動効果となります。
- 座位もしくは臥位にかかわらず、体幹が安定した姿勢で行います。
- 閉口した状態から最大限の開口を行います。
- 最大開口10秒間を10秒間の休憩を入れて5 回
- 上記を1セットとして1日2セット
これもやり方は簡単なので出来そうであれば、ぜひ試してみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか?
どれも道具はいらず、取り掛かりやすいものを紹介させてもらいました。
簡単なので看護師さんはもちろん、利用者さんにも覚えやすいと思います。
リハビリ時以外でもやって欲しいため、簡便でかつやりやすいほうが利用者さんも習慣化につながりますね。
また嚥下訓練以外にも、看護師さんが慣れている口腔内の清潔も重要です。
口腔ケアは嚥下障害や肺炎に対する予防にも効果があるため、改めて口腔管理を注意しておこなっていきましょう!