訪問スケジュールの良し悪しが売上を決める!?最適化に向けたポイント

 

他の事業所では訪問スケジュールをどのように作っているのか、平均的に1人何件くらい訪問しているのか、気になっていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

今回は理想的な訪問スケジュールとは何か、そのうえで最適な訪問スケジュールの作成方法について解説いたします。

 

スケジュール管理が売上に直結

 

訪問看護ステーションの売上を持続的に拡大するには、各職員の訪問件数を1日あたり平均で4~6件確保することが重要です。

すべての職員が、平日は午前中に2件、午後に2~4件利用者さんのところへ訪問しサービスを提供できれば、経営も安定します。

読者のみなさんの事業所では、1日あたり1人何件訪問できていますか?

 

もし1日の平均訪問件数が低い場合、その理由はいくつか考えられます。

例えば以下のようなことです。

 

  • 「営業活動が十分でないため訪問先となる利用者さん数が少ない」
  • 「スタッフの出入りが多く訪問件数を思うように増やせない」
  • 「訪問ルートが非効率で無駄が多い」
  • 「紙など雑務に時間がとられ過ぎて訪問ルートの改善に十分な時間が取れない」

 

 

この状況を直ちに改善できるものとして、訪問の順序やルートを調整し、無駄な移動を少なくすることにより、効率が良くなるように訪問ルートを最適化するという試みがあります。

そうすることで、売上の向上が見込まれ、安定した経営を実現することが可能になります。

 

最適な訪問ルートとは?

 

効率面で最適な訪問ルートを見出す試みは、古くから「巡回セールスマン問題」と言われ、さまざまな最適化手法が試みられてきました。

巡回セールスマン問題とは、セールスマンが自分の担当する都市をどのルートで巡回していくのが最も効率が良いかを見つけ出す問題です。

全ての都市を一度ずつ巡り出発地に戻る訪問パターンは順列(並べ方)・組み合わせ問題でもあり、その組み合わせパターンは、順列・組み合わせの公式で得られる数だけ存在します。

その訪問パターンのうち、総移動距離が最も小さくなる巡回ルートを求めるというもので、数理工学の分野では「組み合わせ最適化問題」とも言われ、様々な最適化手法が研究されています。

 

「巡回セールスマン問題」の最適化手法は、宅配便などの配送ルートの決定などにも応用されています。

一方、訪問看護ステーションの世界は、「巡回セールスマン問題」の世界よりもさらに複雑ですよね。

「セールスマン」に相当する職員が、事業所に所属する看護師や療法士の数だけ存在し、どの職員がどの「都市」を担当すべきかもあわせて解く必要があります。

つまり、巡回セールスマン問題では、セールスマンが訪問すべき都市は事前に決まっているのですが、訪問看護の世界では、提供するサービスの内容に応じてどの職員がそのサービスを提供すべきかを、訪問ルートの決定と並行して決めなければなりません。

 

看護・介護サービスの内容とサービスを提供する職員をマッチングする上で、各サービスを提供するために必要となる資格やスキルを保有する職員を割り当てなければなりません。

また、利用者さんのご都合や職員のシフトも考慮しなければならず、ケアプランで指定されている訪問日時や訪問可能な時間帯を把握しておく必要があります。

 

担当するエリアを決めておく

スケジュール最適化の複雑さを回避するために、職員が訪問するエリアをおおよそ決めておくのも良い試みだと思います。

その職員が特定のエリア内だけで移動するのであれば、訪問エリアが限定でき、長距離の移動を少なくすることができます。

そのエリアのケアマネジャーやメディカルソーシャルワーカーへ集中的に営業することで、徐々に、訪問先を特定のエリアに集中させることができるかもしれません。

 

チームでサービスを提供する

 

さらに、担当エリアをチームでカバーするようにすると、事業所全体の訪問移動効率をより高めることができます。

利用者さんへのサービスを常に特定の職員が担当していると、職員の訪問ルートの組み合わせパターンが自ずと限定されます。

一方、利用者さんの担当をチームでカバーするようにし、利用者さんへのサービスをチームメンバーの誰もが提供できるようにした場合、訪問組み合わせのパターンが増え、事業所全体でのさらに最適な訪問ルートの組み合わせを模索することができます。

しかし、この最適化問題を人間の力だけで解くのには限界があります。やはり、ICT(情報通信技術)の力を借りるべきでしょう。

 

ICTの活用

 

訪問スケジュールを最適化するツールに「ZEST」が知られています。

「ZEST」とは今まで紙やエクセルで対応していた在宅医療のスケジュール調整を自動化し、「最短ルート」で「訪問すべきスタッフ」を「訪問すべき時間」に割り当てることで業務効率化を実現可能なツールです。

使い方もカンタン。

まず、利用者さん、職員、ケアプラン・訪問看護指示書で指示されているサービスに関する情報を、ZESTへインポートします。

次に、利用者さんにサービスを提供する上で必要となる資格やスキルを定義し、どの職員がどの資格やスキルを保有しているかを設定します。あわせて利用者さんの担当職員や担当チームなど、利用者さんと職員のマッチング(組み合わせ)の上で必要となる条件も指定しておきます。

それらの情報に基づき、システムの支援を受けながら全職員の訪問ルートを割り当てていけるのです。

 

「ZEST」に利用者さん、職員、サービス内容、資格・スキル等を設定してしまえば、訪問スケジュールが一元的に管理でき、訪問ルートの再作成や調整の手間が大幅に削減され、これまで悩んでいたルート策定の煩雑な手間から解放され、しかも移動効率を大幅に高めることができるのです。

事業所全体のスケジュールが可視化できるので、急な訪問のための対応も調整しなければならない予定をマウス等でドラッグ アンド ドロップして移動するだけで簡単に行えます。

予定がシステムで管理されているので、スケジュールの重複や抜け漏れも避けられます。

 

一方、チーム制を実現するためには、チーム内で利用者さんの情報を共有し、チームメンバーの誰もがきめ細かいサービスを均一に提供できることが求められます。訪問効率をいくら高めても、利用者さんへのサービスレベルが下がり、顧客満足度が低下しては意味がありません。

例えばタブレットなどを活用して、訪問看護の内容や利用者さんの状況、気づいたことを電子的に記録し、あわせて画像や動画なども残すなどして多角的な情報を共有することを検討すべきでしょう。

また、チームを統率するリーダーを設け、利用者さんや同じ利用者さんを担当する多職種の方々とのやり取りを統括したり、メンバーの教育・育成を委ねたりすることが望まれます。

 

終わりに

以上、訪問看護ステーションのスケジュール管理について述べてきました。

スケジュールを最適化し、経営効率を向上する試みにはいくつかの手段があります。

皆さんの事業所においてスケジュールを最適化するベストなアプローチをぜひ模索してみてください。

 

 

Ns上妻

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ABOUT US
野代 龍平看護師
訪問看護ステーションと看護小規模多機能型居宅介護の元管理者。訪問看護8年目。精神科訪問看護、腹膜透析の件数多く受けています。認知症初期集中支援チーム員。群馬県在住。レセプトもこなすマルチプレイヤー。調子に乗るのがたまにキズ。株式会社のびしろ運営しています。