口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防のためにも重要なケアのひとつです。
なぜ訪問看護師が口腔ケアを行う必要があるのか解説します。
目次
口腔内観察を行う
訪問看護のアセスメントとして定期的に口の中を観察することをおすすめします。
利用者のお口の中の状態は要介護度と比例するということはなく、要支援であっても口腔内環境がよくないことがあります。
また、お口の中は誰にでも見せたいものでもなく、プライベートゾーンと同じ扱いと考えてコミニケーションをとりながら見せてもらえるようにしましょう。
- 汚染程度
- 乾燥
- 炎症
- 歯の動揺
- 以前との変化 など
日常生活動作が自立しておられても、びっくりするほど食物残渣で汚れている場合もあれば、義歯に歯石が付着していたりやひどいときはカビで真っ黒になっていることもあります。
また舌や口腔粘膜には舌苔や痂皮(剥離上皮)が乾燥してついていることがあります。
意外と口内炎が治らないと訴える場合、欠けた歯や義歯が当たってできていることもあります。
義歯を利用している方の中には義歯安定剤が口蓋部についたままになっていることもまれにみられます。
食欲がなくて困っている利用者の中には口の中の環境を改善すれば、食べるようになったりします。
「歯垢(プラーク)」「バイオフィルム」「歯石」「舌苔」について
お口の中を観察するとさまざまな状況を確認することができます。
それぞれについて説明します。
「歯垢」とは
食後8時間程度でできる微生物の塊のことです。
食べかすが細菌の栄養源となるために食後に発生します。
歯垢は歯と歯のすきまや歯と歯肉のさかいめにつきやすいです。
「バイオフィルム」とは
「歯垢」が口腔内に長時間溜まって膜のようになったものです
- 細菌が凝縮したもの
- 付着性がある
- 水洗いでは落ちない という特徴があります。
バイオフィルムは、うがいでは落ちないため基本ブラッシングが必要になります。
「歯石」とは
「歯垢」が唾液中に含まれるカルシウムやリンと反応して石灰化することです。
歯石になってしまうと残念ながら歯科での歯のクリーニングを受ける必要があります。
「舌苔」とは
舌の表面に付着する苔状のものです。
舌の表面にある凸凹に口内の細菌が堆積して苔状になったものです。
口内が乾燥すると細菌が増えやすくまた付着した舌苔が乾いて落ちにくくなります。
痂皮「剥離上皮」とは
新陳代謝で剥がれた粘膜、痂皮は粘膜が傷つき出血した場所にできるかさぶたのことです
口腔ケアの道具について
歯ブラシはケアする場合、柔らかいものをを選びます。
大きすぎず、持ち手が太いものは握りやすいです。
歯がある人は必ず歯ブラシを使用しましょう。
必要に応じて歯間ブラシやフロス、ポイントブラシタイプを選ぶとよいでしょう。
舌のケアは舌ブラシを使用します。
スポンジブラシについて
スポンジブラシの使用目的には粘膜ケアです。
- 痰の除去
- 上あごにはスポンジブラシを使用
- ターミナル期に使用するときは目が細かいものや小さめのスポンジブラシを選ぶ
- スポンジブラシで取れない場合は粘膜ブラシかガーゼでふき取る
口腔用ウエッティーについて
うがいができない時の仕上げは口腔用ウエッティーでふき取ります。
私が訪問看護を始めた頃にはありませんでしたが、すごく便利な商品と思うほどです。
吸引ブラシについて
特にうがいができない場合や誤嚥する方、遷延性意識障害の方や吸引が必要な場合には便利です。
吸引器に接続して、ほほ粘膜や舌の脇の口腔ケアに使用したりします。
なにを使って磨く?
おすすめはジェルタイプの歯磨き剤です。
うがいができない場合は歯磨き剤ではなく口腔用保湿剤を使用します。
発泡しないので汚れが見えやすいのと薬効効果も期待できます。
義歯の扱いについて
義歯は外して洗います。
義歯専用のブラシを用いてなるべく義歯用の洗剤を使用しこすり洗いを行います。
研磨剤が入っている歯磨き剤を使用するのはよくないようですので、食器用洗剤で代用することも可能です。
この場合使用前にはしっかりと水洗いをします。
嚥下機能を改善するサブスタンPを分泌させる
「サブスタンP」とは正常に食べ物を飲み込んだり、咳をしたりできるように神経に働きかける物質です。
通常はのどや気管の神経の中に蓄えられていますが、この物質が低下すると嚥下や咳の反射が鈍くなってしまいます。
「サブスタンP」は脳梗塞やパーキンソン病で減ってしまうと言われています。
高血圧治療ACE阻害剤やトウガラシに含まれるカプサイシンには分泌を活発にする効果があるそうです。
また口腔ケアによって口腔周囲組織の刺激することで唾液の中に含まれている「サブスタンP」の濃度が上がることが報告されています。
つまり、口腔ケアを通して正常な嚥下や正常な咳反射を促すことになります。
口腔ケアの実際
①観察する
②ブラッシングは痛みがないようにやさしくていねいにおこなう。
③舌ブラシで舌ケア 何回もこすらないこと
④スポンジブラシにて粘膜ケア
⑤うがいがむずかしい時は口腔用ウエッティーでふき取る
⑥乾燥がひどい時は保湿剤にて保湿ケアをおこなう。
まとめ
- 口腔ケアとは単に歯を磨けない人の援助ではなく食べられる口づくりを目指すものである。
- 口腔内を清潔にするだけでは誤嚥性肺炎は予防できない。
- 口腔内細菌の除去、口腔周囲組織の刺激(サブスタンPの分泌)、口腔ケアによって飲み込み機能を向上させる。噛んで食べて良好な栄養状態によって抵抗力をつけることが誤嚥性肺炎の予防につながる。
今回は訪問看護師が知っておきたい口腔ケアについて解説しました。
最期まで食べることはQOL(生活の質)を向上させることができます。
そのため口腔ケアはQOLを向上させるためには欠かせません。
口腔ケアによって利用者の状態が改善していくことは、支援が役にたてることが実感できます。
この記事が皆さんの業務に役に立つことができれば幸いです。