病院から訪問看護に転職したばかりの看護師から「おむつ交換のやり方に自信が持てない」という相談を受けることがあります。在宅では、利用者さんへの排泄ケアだけでなく、日々介助を行うご家族への指導も求められるため、病院とは違った視点でのおむつ交換技術が必要になります。
この記事では、訪問看護師に求められるおむつ交換技術を、種類の選び方、漏れと皮膚トラブルの予防、そしてQOLを尊重した代替案の考え方まであわせて解説します。病院での経験しかない方も、この記事を読めば在宅ならではの視点をひとつずつ押さえていくことができます。
- おむつの種類と選び方の基礎知識
- 漏れを防ぐためのポイント
- おむつによる皮膚トラブル(IAD)の予防方法
- QOLを尊重した排泄ケアの考え方
目次
おむつの基礎知識
おむつには大きく分けて3つの種類があります。
| 種類 | 特徴 | 向いている方 |
|---|---|---|
| パンツタイプ | 下着のように履くタイプ。サイズ調整はできない | 歩行や座位保持が可能で、尿失禁のある方 |
| テープタイプ | 腹部のテープで体型に合わせて固定できる | 寝て過ごすことが多い方 |
| パッドタイプ | おむつと併用する尿取りパッド。パッドのみの交換で済み経済的 | おむつと組み合わせて吸収量を調整したい方 |
各メーカーから多様な製品が販売されており、性能も日々進化しています。パンツタイプは薄型(約2回分・〜300ml程度)から厚型(約5回分・〜750ml程度)まで、テープタイプは約2〜4回分(〜600ml程度)まで、吸収量に幅があります。パッドタイプを併用することで、さらに吸収量を増やすことも可能です。
訪問看護師には、こうした製品の違いを把握したうえで、利用者さんの活動量・排泄パターン・介護者の負担のバランスを考えながら組み合わせを提案する役割が求められます。「とりあえず厚手のものにしておけば安心」という発想ではなく、必要以上に吸収量の多い製品を選ぶとムレやすくなり、皮膚トラブルの原因になることもあるため、過不足のない選択を意識しましょう。

いかに漏れを少なくするか
おむつを導入する際の困りごとで多いのが「合うサイズがわからない」「何を基準に選べばいいかわからない」という声です。実際に使用している方からのアドバイスとして最も多く挙げられるのが「漏れないものを選ぶこと」であり、「漏れを少なくすること」「合うサイズを見つけること」は、訪問看護師にとって重要な役割の一つです。漏れを減らすことは、利用者さんの不快感やご家族の介護負担の軽減に直結します。
見落とされがちですが、おむつのギャザーをしっかり立てるだけでも、漏れが劇的に減ることがあります。サイズや吸収量を見直す前に、まず正しい当て方ができているかを確認しましょう。
サイズ選びも重要なポイントです。ウエストや太もも周りのサイズが合っていないと、どれだけ吸収量の多い製品を使っても隙間から漏れてしまいます。体格の変化(体重の増減、浮腫の有無など)に応じて、定期的にサイズが適切かどうかを見直す視点も必要です。
皮膚トラブルの予防
おむつが密着するお尻や陰部の皮膚に、発赤や湿疹などの症状が出ることがあります。これは「おむつかぶれ」「失禁関連皮膚障害(IAD)」などと呼ばれ、汗や排泄物による蒸れ、カンジダなどの真菌の異常増殖が原因となることがあります。症状の程度はさまざまで、軽い炎症にとどまるものから、表皮がただれて排泄のたびに強い痛みを伴うものまであります。褥瘡と混同されやすいですが、発生のメカニズムが異なるため、観察の視点も分けて考える必要があります。
発生しやすい原因
- 加齢による皮膚機能の低下
- おむつの長時間の着用
- 交換時の摩擦
予防のポイント
- 可能であればおむつ交換の頻度を増やす
- 蒸れやすい長時間用のおむつを見直す、サイズを再検討する
- 交換時は引っ張らず、こすらず、優しく扱う
- 洗浄は泡で優しく行い、ワセリンなどで皮膚を保護する
カンジダなど真菌感染が疑われる場合、ワセリンなどの保湿剤の使用がかえって症状を悪化させることがあります。皮膚の状態に不安がある場合は、自己判断でケアを続けず、医師の診察を受けてもらうことが重要です。
QOL(生活の質)を尊重した排泄ケア

排泄機能が低下したからといって、すぐにおむつの使用に結びつけるべきとは限りません。自分でトイレに行けないことによる羞恥心や自尊心の低下は、想像以上に大きなものです。おむつを導入する前に、利用者さんの気持ちや生活の質、他の選択肢がないかを意識することが大切です。長年トイレで排泄することを当たり前としてきた方にとって、おむつへの切り替えは大きな心理的ハードルになり得ることを、支援する側は忘れずにいたいものです。
例えば、次のような工夫でおむつ以外の方法を検討できる場合もあります。
- トイレまでの距離が遠く間に合わない場合は、ポータブルトイレの活用を検討する
- 夜間の排尿回数が多い場合は、日中と夜間で水分摂取のタイミングを調整する
- 排泄動作に時間がかかる場合は、リハビリテーションで動作の改善を図る
- 住宅改修や福祉用具の活用で、トイレ動作をスムーズにする
- 頻尿の背景に前立腺肥大などが疑われる場合は、泌尿器科の受診につなげる
- 認知機能の低下でトイレの場所がわからない場合は、案内の張り紙などで対応する

「おむつ交換は排泄という尊厳に深く関わるケアです。『効率よく交換する技術』だけでなく、『本当におむつが必要なのか』を考える視点も、あわせて持っておきたいですね。」
ご家族への視点も忘れずに
在宅では、キーパーソンとなるご家族が日常的に介護を担うことが多く、介護未経験の方も少なくありません。訪問看護師には、ご家族への介護指導も重要な役割として求められます。利用者さんとご家族の生活リズムをあわせてアセスメントし、夜間しっかり休めるよう長時間用のパッドを提案したり、場合によっては訪問看護の頻度を増やす、ヘルパーの介入を提案するといった対応が必要になることもあります。
介護未経験のご家族は、「交換のタイミングがわからない」「どのくらい強く拭いていいのかわからない」といった、細かな不安を抱えていることが多くあります。訪問看護師が一つひとつの動作を実際にやって見せながら説明することで、ご家族の自信につながり、結果的に利用者さんへのケアの質も安定していきます。夜間の交換をご家族一人で担っている場合は、負担が積み重なって共倒れにならないよう、定期的に体調や睡眠状況を確認することも忘れないようにしましょう。
おむつ交換技術を学べる場
おむつ交換の知識や技術は、次のような場で学ぶことができます。看護学校のカリキュラムでは、排泄ケアに割かれる時間が限られていることも多く、実際に在宅の現場に出てから初めて本格的に学ぶという看護師も少なくありません。
- 排泄ケアに関する民間資格(オムツフィッター等)の研修
- 介護職員初任者研修・実務者研修などの介護系資格の学習内容
- おむつメーカーが実施する研修や情報提供
- 関わりのある介護職員に教えてもらう(視点の違いから学びが広がる)
訪問看護師自身も基礎的な知識は持っていますが、他職種や専門的な研修から学び直すことで、視野が広がり、より利用者さんに合ったケアを提供しやすくなります。特に介護職員は日常的におむつ交換の実践経験を積んでいることが多く、看護師とは違った視点でのコツを教えてもらえることもあります。多職種から謙虚に学ぶ姿勢が、技術の向上につながります。
まとめ|おむつ交換技術は尊厳に関わる大切なケア
おむつ交換は、単なる作業ではなく、利用者さんの尊厳に深く関わる排泄ケアの一部です。種類や選び方の知識、漏れと皮膚トラブルを防ぐ技術に加えて、「本当におむつが必要なのか」というQOLの視点、そしてご家族への配慮まで含めて考えることが、訪問看護師には求められます。日々の忙しさの中で作業として流してしまいがちなケアだからこそ、立ち止まって見直す価値があります。
- おむつはパンツタイプ・テープタイプ・パッドタイプの特徴を理解し、利用者さんに合ったものを選ぶ
- ギャザーを立てるなど基本の当て方を見直すだけでも漏れは減らせる
- IAD(失禁関連皮膚障害)は摩擦を避け、清潔と保湿を保つことで予防する
- おむつ以外の代替案を検討し、利用者さんのQOLとご家族への指導も忘れずに行う
身近な技術だからこそ、「自分ごと」として向き合うことが、よりよいケアにつながります。

よくある質問
おむつの種類はどう選べばいいですか?
歩行や座位保持が可能で尿失禁がある方にはパンツタイプ、寝て過ごすことが多い方にはテープタイプが向いています。吸収量を増やしたい場合は、パッドタイプを併用する方法もあります。
おむつの漏れを防ぐコツはありますか?
サイズや吸収量を見直す前に、まずギャザーがしっかり立っているか確認しましょう。正しい当て方ができているかどうかで、漏れの発生は大きく変わります。
おむつかぶれ(IAD)を予防するにはどうすればいいですか?
交換頻度を見直す、交換時に引っ張ったりこすったりしない、泡で優しく洗浄しワセリンなどで保護するといった対応が有効です。カンジダなど真菌感染が疑われる場合は、自己判断せず医師の診察を受けてもらいましょう。
おむつを使う前に検討すべきことはありますか?
ポータブルトイレの活用、水分摂取タイミングの調整、リハビリによる排泄動作の改善、住宅改修や福祉用具の活用など、おむつ以外の選択肢がないか検討することが大切です。
おむつ交換の技術はどこで学べますか?
排泄ケアに関する民間資格の研修、介護職員向けの研修内容、おむつメーカーの研修などで学ぶことができます。関わりのある介護職員から教えてもらうことも視野を広げるうえで有用です。























