「訪問診療」「往診」「居宅療養管理指導」——どれも在宅療養を支える医師の関わり方を指す言葉ですが、それぞれの違いを正確に説明できるでしょうか。訪問看護ステーションのスタッフやケアマネジャーにとっても、この3つの違いを理解しておくことは、利用者への説明や多職種連携の場面で欠かせません。
この記事では、それぞれの定義・算定要件・診療報酬点数を、厚生労働省の資料をもとに整理し、訪問看護との関わり方まであわせて解説します。
- 訪問診療・往診・居宅療養管理指導、それぞれの定義の違い
- 計画性の有無という一番の見分け方
- それぞれの診療報酬上の評価(点数・単位数)の考え方
- 訪問看護ステーションとして押さえておきたい連携のポイント
目次
訪問診療・往診・居宅療養管理指導の違いをひと言でいうと
3つの違いを最も端的に表すと、「計画性」と「目的」で区別できます。訪問診療は計画的・定期的な診療、往診は患者・家族からの要請に応じた突発的な診療、居宅療養管理指導は療養上の管理指導そのものを目的としたサービスです。
| 項目 | 訪問診療 | 往診 | 居宅療養管理指導 |
|---|---|---|---|
| 性質 | 計画的・定期的 | 要請に応じた突発的対応 | 計画的な管理指導 |
| 保険制度 | 医療保険(診療報酬) | 医療保険(診療報酬) | 介護保険(介護報酬) |
| 対象 | 通院困難な在宅療養患者 | 急な体調変化があった患者 | 要介護認定を受けた居宅の利用者 |
| 目的 | 定期的な診療・医学管理 | 症状変化への対応 | 療養上の管理・指導・ケアマネへの情報提供 |

訪問診療と往診は同じ「医療保険」の枠組みですが、居宅療養管理指導は「介護保険」の枠組みという違いも大事なポイントです。利用者さんに説明するときは、まずこの保険制度の違いから伝えると理解してもらいやすいですよ。

訪問診療とは?計画性のある定期訪問
訪問診療は、在宅での療養を行っている患者であって、疾病・傷病のために通院による療養が困難な方に対し、医師があらかじめ計画を立てて定期的に自宅等を訪問し、診療を行うものです。診療報酬上は「在宅患者訪問診療料」として評価されます。
訪問診療の点数
令和6年度診療報酬改定の資料によると、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の点数は次のとおりです。
| 区分 | 同一建物居住者以外 | 同一建物居住者 |
|---|---|---|
| 在宅患者訪問診療料1 | 888点 | 213点 |
| 在宅患者訪問診療料2 | 884点 | 187点 |
訪問診療料1は、1人の患者に対して1つの保険医療機関の医師の指導管理のもとで継続的に行われる訪問診療について、1日につき1回に限り算定されます。訪問診療料2は、他の医療機関からの求めを受けて診療を行った場合に、原則6か月を限度として算定される点数です。
訪問診療は「定期的ないし計画的に患家又は他の保険医療機関に赴いて診療を行った場合」に該当するため、緊急時の対応である往診とは明確に区別されています。
往診とは?要請に応じた突発的な訪問診療
往診は、患者または家族等患者の看護等に当たる者が、保険医療機関に対し電話等で直接往診を求め、医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに患家を訪問して診療を行うものです。定期的・計画的な訪問診療とは異なり、突発的な体調変化への対応として位置づけられています。
往診の点数
往診料は720点です。夜間・深夜・緊急時の往診には、それぞれ加算が設けられています。令和6年度改定では、在宅療養支援診療所等が連携先の患者に対して往診を行った場合の「往診時医療情報連携加算」(200点)や、介護保険施設等の入所者に対する「介護保険施設等連携往診加算」(200点)が新設されました。
往診料は「定期的ないし計画的に患家又は他の保険医療機関に赴いて診療を行った場合には算定できない」とされています。訪問看護ステーションが医師の訪問予定を把握する際は、それが計画的な訪問診療なのか、要請に応じた往診なのかを区別して記録・連携することが重要です。

居宅療養管理指導とは?介護保険の管理指導サービス
居宅療養管理指導は、通院が困難な要介護者に対して、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士等が居宅を訪問し、療養上の管理・指導を行うとともに、その内容をケアマネジャーへ情報提供する介護保険のサービスです。訪問診療・往診が医療保険(診療報酬)で評価されるのに対し、居宅療養管理指導は介護保険(介護報酬)で評価される点が大きな違いです。
居宅療養管理指導費の単位数
令和6年度介護報酬改定では、居宅療養管理指導費の基本報酬が全区分で引き上げられました。医師が行う居宅療養管理指導費(Ⅰ)は、単一建物居住者の人数(1人・2〜9人・10人以上)に応じて単位数が変わる仕組みになっており、対象人数が多いほど1人あたりの単位数は低く設定されています。薬局の薬剤師が対面で実施する場合は、単一建物居住者1人で518単位、2〜9人で379単位、10人以上で342単位とされ、情報通信機器を用いた場合は一律46単位です。
職種ごとの正確な単位数は、算定する職種(医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士等)や単一建物居住者の人数によって細かく分かれています。実際の請求にあたっては、最新の介護報酬告示・通知で該当する単位数を必ず確認してください。
訪問看護ステーションとして押さえておきたい連携のポイント
訪問看護ステーションのスタッフやケアマネジャーは、利用者に関わる医師の訪問が「訪問診療」「往診」「居宅療養管理指導」のどれにあたるのかを理解しておくことで、次のような場面で適切に対応できます。
- 訪問看護指示書を交付する医師が、定期的に訪問診療を行っているのか、往診対応のみなのかを把握する
- 急変時に往診を依頼する際、緊急連絡先・対応可能時間帯をあらかじめ確認しておく
- 居宅療養管理指導を行う医師・薬剤師からの情報提供を、ケアプランや訪問看護計画に反映する
- 特別訪問看護指示書の交付が必要な場面で、往診と訪問診療のどちらの医師に連絡すべきかを整理しておく

利用者さんのご家族から「今度先生が来るのは訪問診療ですか、往診ですか」と聞かれることもあります。制度の違いを知っておくと、こうした素朴な疑問にもすぐに答えられますね。
令和6年度改定でのポイント
令和6年度診療報酬改定では、在宅医療の質を高める観点から、ICTを活用した情報連携に関する加算が複数新設されました。訪問診療・往診に関連する主な見直しは次のとおりです。
- 在宅医療情報連携加算(100点)の新設:関係職種がICTで記録した診療情報等を医師が活用した場合の評価
- 往診時医療情報連携加算(200点)の新設:在支診・在支病が連携先医療機関の患者に往診を行った場合の評価
- 介護保険施設等連携往診加算(200点)の新設:介護保険施設等の入所者の急変時に、協力医療機関が往診を行った場合の評価
- 在宅ターミナルケア加算の見直し:退院時共同指導を実施した上での訪問診療・往診でも算定可能に
いずれも、医療機関同士・医療機関と介護保険施設等との情報連携を評価する方向性が示されています。訪問看護ステーションとしても、こうした連携の輪の中に入れるよう、日頃から医師・ケアマネジャーとの情報共有を意識しておくとよいでしょう。
特に在宅医療情報連携加算は、医療関係職種等がICTで記録した患者情報を医師が取得・活用した場合に評価される仕組みです。訪問看護ステーションが日々の訪問看護記録をICTツールで医師・ケアマネジャーと共有している場合、こうした加算の算定要件を満たす情報連携の一端を担っている可能性があります。自事業所の記録共有の方法が、連携先医療機関の算定にどう関わっているかを把握しておくと、より踏み込んだ連携提案ができるようになります。
利用者・家族への説明で使える整理の仕方
訪問看護スタッフが利用者・家族から質問を受けた際は、次のような言い方で説明すると理解してもらいやすくなります。
- 「訪問診療は、決まった日に先生が定期的に様子を診に来る仕組みです」
- 「往診は、急に具合が悪くなったときに連絡して来てもらう仕組みです」
- 「居宅療養管理指導は、先生や薬剤師さんが訪問して、ケアマネジャーへ療養上の注意点を伝えてくれる介護保険のサービスです」
制度の名前を正確に伝えるだけでなく、利用者の生活のどの場面で登場するサービスなのかをセットで説明することが、納得感につながります。
よくある質問
訪問診療と往診はどちらも同じ医師が行いますか?
多くの場合、在宅療養支援診療所などが両方を担いますが、必ずしも同じ医師・医療機関である必要はありません。訪問診療を行う医療機関とは別に、緊急時のみ他の医療機関が往診対応を行う連携体制が取られることもあります。
居宅療養管理指導は医師以外も行えますか?
はい。医師・歯科医師のほか、薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士等がそれぞれの専門性に応じた居宅療養管理指導を行うことができます。職種ごとに算定要件・単位数が異なります。
往診を頼んだら必ず往診料がかかりますか?
患者・家族からの要請を受けて医師が往診の必要性を認め、実際に訪問診療を行った場合に往診料が算定されます。夜間・深夜・緊急時にはそれぞれ加算が設けられているため、時間帯によって費用が変わる点も押さえておくとよいでしょう。
訪問看護指示書は訪問診療・往診どちらの医師からもらう必要がありますか?
訪問看護指示書は、患者の主治医であれば訪問診療・往診いずれの形で診療している医師からも交付を受けられます。重要なのは、その医師が患者の療養状況を継続的に把握していることです。

まとめ|計画性と保険制度の違いで整理しよう
訪問診療・往診・居宅療養管理指導は、いずれも在宅療養を支える大切なサービスですが、計画性の有無と適用される保険制度が異なります。この違いを理解しておくことで、利用者・家族への説明や多職種連携がスムーズになります。
- 訪問診療は計画的・定期的な診療で、在宅患者訪問診療料として評価される
- 往診は要請に応じた突発的な診療で、往診料(720点)として評価される
- 居宅療養管理指導は介護保険のサービスで、職種ごとに単位数が定められている
- 訪問看護ステーションは、これらの違いを理解したうえで医師・ケアマネジャーと連携することが重要
制度の違いを正しく理解し、利用者にとって切れ目のない在宅療養支援を実現しましょう。
居宅療養管理指導費の職種別・人数別の単位数など、詳細な最新単位数は介護報酬の告示・通知でご確認ください。












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