第230回社会保障審議会介護給付費分科会では、令和6年度介護報酬改定に向けての各サービスに関する話し合いが行われ、訪問看護の方向性についても議論されました。
当記事では、第230回社会保障審議会介護給付費分科会で議論された訪問看護に関する内容を解説します。
訪問看護を運営・実施していくにあたり必ず知っておきたい内容です。
ぜひ最後まで読んでみてください。
ではさっそく解説します。
目次
令和6年度介護報酬改定|訪問看護についての論点及び対応案について
第230回社会保障審議会介護給付費分科会において話し合われた、令和6年度介護報酬改定に向けての訪問看護にまつわる論点は以下の6つです。
- 専門的なケアのニーズが高い利用者への対応
- 看取り体制の強化
- 訪問看護における持続可能な24時間対応体制の確保
- 理学療法士等による訪問看護の評価
- 円滑な在宅移行に向けた医療と介護の連携
- 訪問看護と他介護保険サービスとの更なる連携強化
これらの論点の対応案も検討されていますので、合わせて順番に解説します。
論点1.専門的なケアのニーズが高い利用者への対応
まず1つ目の論点は、専門的なケアのニーズが高い利用者への対応についてです。
訪問看護事業所において、専門性の高い看護師※1が、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行うことを評価※2してはどうか。
(※1)緩和ケア、褥瘡ケア若しくは人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師又は特定行為研修を修了した看護師
(※2)看護小規模多機能型居宅介護についても評価してはどうか。
介護保険における訪問看護の利用者が有する傷病は「新生物」「神経系の疾患」「循環器系の疾患」 「筋骨格系及び結合組織の疾患」が増えている現状があります。
また、介護保険の訪問看護においても、褥瘡の処置や人工肛門等の管理及び終末期の緩和ケア等が実施されている現状があります。
令和4年度診療報酬改定においては、「専門管理加算」が創設され、専門性の高い看護師による訪問看護が評価されています。
医療ニーズを持つ利用者が増える中で、適切かつより質の高い訪問看護が提供されるためにはどうしたら良いか、令和6年度介護報酬改定に向け論点として挙げられ、対応案が議論されています。
論点2.看取り体制の強化
2つ目の論点は、看取り体制の強化についてです。
- ターミナルケア加算について、診療報酬における評価を踏まえ、単位数を見直してはどうか。
- 離島等に居住する利用者に対して医師が行う死亡診断等を、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が補助した場合を評価※してはどうか。
(※)看護小規模多機能型居宅介護についても評価してはどうか。
訪問看護における看取りのニーズや機会が増えており、死亡前14日間で実施したケア内容の実態によると、介護保険・医療保険の訪問看護いずれにおいても同様のケアを提供している現状があります。
また、離島等で医師が死亡診断を行うまでに時間を要する場合、家族が長時間待機することがあり、場合によっては遠方の医療機関に救急搬送して死亡診断を受けるケースも存在します。
このような状況を踏まえ、訪問看護利用者への看取り体制を強化できるよう、令和6年度介護報酬改定に向けての論点として挙げられ、対応案が議論されています。
論点3.訪問看護における持続可能な24時間対応体制の確保
3つ目の論点は、訪問看護における持続可能な24時間対応体制の確保についてです。
- 同一訪問看護事業所において、緊急訪問の必要性の判断を看護師等が速やかに行えるよう、看護師等に連絡できる体制が整備されている等、適切なサービス提供体制が確保されている場合には、看護師等以外の職員も利用者又は家族等からの電話連絡を受けられるようにしてはどうか。
- 24時間対応を確実に機能させる観点から、持続可能な体制に資する取組が行われている場合につき評価してはどうか。
緊急時訪問看護加算の算定要件である「利用者又は家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制」は、原則として当該事業所の看護師等が直接電話を受ける体制がある場合に認められています。
在宅における医療ニーズの高まりに伴い、24時間の対応は求められていることであり、緊急時訪問看護加算の届出をしている事業所は8割を超える一方、看護師等の負担が大きいことが指摘されています。
24時間対応を持続可能とすることに資する負担軽減の取組をしている訪問看護事業所は67.9%であり、 「ICTの活用」や「夜間対応した翌日の勤務体制の調整」が行われている一方で「勤務間インターバルをとる」といった取組は2割程度と少ないです。
24時間対応へのニーズに適切かつ即時に対応できる持続可能な体制を構築できるよう、令和6年度介護報酬改定に向けて方策を考えていく必要があり、論点として挙げられ対応案が議論されています。
論点4.理学療法士等による訪問看護の評価
4つ目の論点は、理学療法士等による訪問看護の評価についてです。
訪問看護の役割を踏まえたサービスを適切に評価する観点から、サービスの提供体制や実績等を踏まえ、理学療法士等による訪問看護に係る評価の差別化を行ってはどうか。
令和3年度介護報酬改定では、基本サービス費の見直しを行うとともに、理学療法士等が行う訪問看護が12月を超える場合と、1日に2回を超えて実施する場合の評価について見直しが行われました。
訪問看護事業所については、必要とされるサービスを提供する観点からサービス提供体制や実績等に応じて様々な加算等による評価が行われています。
看護業務の一環としてのリハビリテーションの提供実態を踏まえ、訪問看護に求められる役割に基づくサービスが提供されるよう令和6年度介護報酬改定に向けて方策を考えていく必要があり、論点として挙げられ対応案が議論されています。
論点5.円滑な在宅移行に向けた医療と介護の連携
5つ目の論点は、円滑な在宅移行に向けた医療と介護の連携についてです。
- 医師の指示に基づき、看護師による退院当日の訪問の評価を充実することについて、どのように考えるか。
- 退院時共同指導を効率的に実施する観点から、入院中の患者に対する指導内容につき、文書以外の方法で提供することを可能としてはどうか。
入院中の患者が退院後円滑に在宅療養に移行するためには、医療と介護の切れ目のない連携が重要です。
医療機関等に入院している患者に対し、訪問看護事業所が主治医及び関係スタッフと連携して指導を行う退院時共同指導加算の算定件数が令和3年、4年で大幅に減少しましたが、前回改定でWEBによる指導を可能とした中で、令和5年では回復傾向にあります。
訪問看護利用者のニーズに対応し、在宅での療養環境を早期に整える観点から、令和3年度介護報酬改定において、主治の医師が必要と認める場合に退院当日の訪問看護(看護職員等)が算定可能となりました。
退院当日に訪問を要した利用者・家族の困りごととしては、「体調・病状」「緊急時の対応」等が多く、 退院当日から「服薬援助」「家族との調整(ケアの指導等)」「点滴の管理」等の医療的な対応が行われています。
急性増悪等により一時的に頻回な訪問が必要な場合は、特別訪問看護指示書により医療保険の訪問看護サービスを受けることも可能である一方、医療保険の訪問看護の対象とならない例も存在します。
こうした状況を踏まえ、要介護者等がより円滑に在宅移行できるよう、令和6年度介護報酬改定に向けての論点となり、対応案が議論されています。
論点6.訪問看護と他介護保険サービスとの更なる連携強化
最後の論点は、訪問看護と他介護保険サービスとの更なる連携強化についてです。
利用者により適切なサービスを提供する観点から、訪問看護事業所と他の介護保険サービス事業所との連携に係る取組を訪問看護の提供体制を評価するにあたっての要件とする等としてはどうか。
訪問看護事業所と他の介護保険サービス間の連携については、「利用者の病状に関する情報共有」 「利用者の生活状況・家族に関する情報共有」等が行われています。
例えば、ターミナル期にある利用者によりよいサービスを提供するためには、利用者の変化を的確にとらえる必要があり、訪問看護事業所と他の介護保険サービス間の連携が重要ですが、連携の状況については事業所によってばらつきがあります。
訪問看護事業所と他の介護保険サービス事業所との連携をさらに推進するために、令和6年度介護報酬改定に向け論点として挙げられ、対応案が議論されています。
参考:第230回社会保障審議会介護給付費分科会 訪問看護(改定の方向性)
令和6年度介護報酬改定の訪問看護の方向性について今後も注目!
今回は、令和6年度介護報酬改定に向けての訪問看護に関する論点と対応案について解説しました。
今回の解説内容は、令和5年11月6日時点のものです。
今後さらに議論が進み、どのような改定となるか注目していきましょう。
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