在宅訪問看護と施設内訪問看護の違いとは?徹底解説します

悩む看護師

在宅の訪問看護と施設内訪問看護の違いってどんなことがあるのかな?

就職するときの選択肢として考えたら、どっちがいいのかな…。

 

看護師さんで、このような疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。

当記事では、訪問看護ステーションに就職する際などにも参考になるよう、在宅訪問看護と施設内訪問看護の違いについてわかりやすく解説します。

訪問看護ステーションに就職を検討している看護師さん、改めて訪問看護の違いを確認したい看護師さんは、ぜひ参考にしてみてください!

 

在宅の訪問看護と施設内訪問看護の違い

訪問看護には、大きく分けて「在宅訪問看護」と「施設内訪問看護」があります。

どちらも看護師が利用者さんのもとを訪れてケアを行う点では共通していますが、その働き方や業務内容、利用者さんとの関係性、そしてやりがいにはそれぞれ特徴があります。

これから訪問看護の現場で働こうと考えているあなたが、自分に合った職場を見つけるヒントになるよう、具体例を交えて両者の違いを詳しくお伝えします。

 

1.訪問先の環境と関わり方の違い

訪問看護師が実際にどこへ、どのように訪問し、どのような環境下でケアを行うのかは、在宅と施設内で大きく異なります。

それに伴って、一日の流れや時間の使い方、注意点も変わってきます。

 

在宅訪問看護
利用者の自宅を一軒一軒訪問します。

住宅の間取り、生活スタイル、家族構成、地域の文化など、まさに「その人らしい暮らし」の中で看護を提供します。

生活の延長線上に看護があるため、ケアを提供する際には医療だけでなく生活支援や家族支援の視点も求められます。

 

施設内訪問看護
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの施設に常駐または定期訪問する形となり、複数の利用者さんを一つの場所で看護します。

施設側のスタッフ(介護職員)と密に連携しながら、効率的に複数の利用者さんにケアを提供することが求められます。

移動が少なく、看護師としての時間の使い方が明確になりやすいのも特徴です。

 

2.看護内容の違いと求められるスキル

 

在宅訪問看護
1回の訪問時間が30分から90分程度と比較的長く、その時間の中でバイタルチェックや処置、服薬管理だけでなく、精神的なケアや生活の相談支援などを行います。

ひとりでの訪問が基本となるため、観察力、判断力、緊急時の対応能力が問われます。

訪問中に異変を感じたとき、他のスタッフにすぐ相談することが難しいため、経験や勘、そして冷静な対応力が求められます。

 

施設内訪問看護
看護処置の種類がある程度パターン化されていることが多く、複数名への対応を短時間でこなす能力が求められます。

施設全体での受け入れ体制にもよりますが、バルーン管理やインスリン注射、褥瘡の処置、経管栄養の管理などが中心で、急変時にも施設職員との連携がしやすく、チーム医療の中で動くことが可能です。

逆に、自分の判断だけで動きたい方や、一人の利用者さんにじっくり関わりたい方にはやや物足りなさを感じることもあるかもしれません。

 

3. 一日の流れと働き方の違い

 

在宅訪問看護
一軒一軒が「オーダーメイドの看護現場」

◎訪問先の特徴:

訪問先は利用者本人の「自宅」です。

マンションや一戸建て、団地などさまざまで、部屋の間取り、生活の動線、照明、清潔度、空調管理、同居家族の有無など、環境条件はひとつとして同じものがありません。

◎準備が必要なこと:

  • 各家庭の生活様式に合わせた対応
  • 自宅にある物品を活かした臨機応変な工夫
  • 訪問時間や交通状況の考慮(都市部は渋滞、地方は距離)
  • 感染対策物品や薬剤、必要物品を持参(忘れ物は致命的)

◎移動手段とリスク:

  • 訪問手段は、車・バイク・自転車・徒歩など
  • 雨天や積雪時の訪問リスクも考慮が必要
  • 訪問の合間に移動と記録時間を確保する必要あり

在宅訪問看護では、1日のスケジュールは訪問先の場所や状態に応じて変化します。

☝︎例えば、午前中に糖尿病のある利用者さんの血糖測定とインスリン注射を行い、次に褥瘡処置の必要な寝たきりの方のご自宅へ、午後はターミナル期の方への疼痛コントロールの確認訪問など、利用者さん一人ひとりに応じた看護を行います。

訪問の合間には、車内で記録を行ったり、次の訪問先のご家族に電話で連絡を入れたりします。

また、急な体調変化により訪問時間の変更や追加対応が必要になることもあります。

☝︎午前中に訪問した利用者さんのバイタルが不安定だったため、午後に再訪問するなど柔軟な対応が求められます。

☝︎特徴・注意点:

  • 「その人の生活そのもの」に入り込む看護。 テレビの音が流れる部屋、ペットのいる環境、時には片づいていない空間でもケアを行う。
  • 時間通りに訪問できるとは限らない。 予定外の交通渋滞や天候、急変対応でスケジュールが押すことも。
  • 家族支援が重要。 介護者の心身負担、在宅介護に対する不安をくみ取り、相談に乗る役割も大きい。

 

施設内訪問看護
安定した環境での「効率的な看護」

◎訪問先の特徴:

訪問先は、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や有料老人ホーム、小規模多機能施設など、高齢者が多数入居する施設の中です。

日中は介護職員や管理者が常駐しており、一定のルールと管理が整っている環境です。

◎環境の利点:

  • ベッド、トイレ、ナースコール、陰部洗浄セットなど介護用設備や備品が整っている
  • 温度・湿度管理もされており、衛生状態が一定に保たれている
  • 看護記録・指示書の保管も整備されていて、管理しやすい

施設内訪問看護では、よりルーティン化された一日の流れになります。

☝︎例えば、午前9時に出勤し、朝の申し送りの後は経管栄養の開始、インスリン注射、バイタル測定、褥瘡処置などを訪問ルートに沿って順番に行います。

午前中に主な処置を終え、午後は入浴後の処置や状態確認、記録業務に集中する時間となることが多いです。

急変時も施設職員と連携して、すぐに看護師が対応できる体制が整っているため、「一人で全て判断しなければならない」というプレッシャーは少ない傾向にあります。

☝︎認知症の入居者が転倒した場合、介護職員がすぐに看護師を呼び、必要に応じて主治医や家族に連絡を取るといったチーム対応が可能です。

 

4. チームとの関係性

 

在宅訪問看護
看護師は一人での訪問が基本です。

そのため、現場での判断力と同時に、「多職種連携」が非常に重要になります。

☝︎例えば、在宅酸素を使用している利用者のSpO₂が不安定だった場合、訪問後すぐに主治医に連絡を入れ、酸素流量の調整について指示を仰ぐことがあります。

また、ケアマネジャーに状態の変化を報告して、介護サービスの調整を依頼することもあります。

このように、物理的には「孤独」に見えても、訪問看護師は実は多くの専門職と「つながっている」存在であり、自ら積極的に連絡・相談・報告を行う姿勢が求められます。

 

施設内訪問看護
施設内に常駐している介護職員やリハビリ、生活相談員(事務員)などと日々コミュニケーションを取りながら働きます。

☝︎たとえば、朝の申し送りで「Aさんが昨夜から食欲が落ちている」という報告があれば、看護師がその日のうちに観察し、必要に応じて医師へ報告する、介護職員と食事内容の相談をする、といった対応が即座に可能です。

また、医師が定期的に施設を往診する場合は、看護師が事前に気になる入居者の状態を施設スタッフから聞き取りまとめておき、同行して報告するという役割もあります。

このように、日常的な情報共有が密に行える点が、施設内訪問看護の大きな強みといえます。

 

在宅訪問看護と施設内訪問看護|向いている人の特徴

 

在宅訪問看護
在宅訪問看護が向いている人:

  • 一人ひとりの生活背景を大切にしたい人
  • 自分の看護観を大切にしたい人
  • 判断力や自立性に自信がある人
  • 車の運転が苦にならない人

 

施設内訪問看護
施設内訪問看護が向いている人:

  • チームで働くのが好きな人
  • 時間や業務がある程度決まっている方が安心できる人
  • 一度に複数の利用者さんやスタッフからの相談などに対応するのが得意な人
  • 生活リズムを整えやすい職場を希望する人

 

まとめ

 

自分の価値観を見つめることが第一歩

 

違いのまとめ

項目 在宅訪問看護 施設内訪問看護
訪問先 利用者の自宅(多様) 同じ施設内(整備された環境)
移動 車・自転車で移動 基本的に不要(同一建物内)
ケアの空間 個人の生活空間 医療・介護に配慮された居室
準備物 個別対応で多様・臨機応変 配置も含めて効率的に検討できる
一日の流れ 予期せぬ変化あり 比較的安定して予定通りのことが多い
記録・報告 訪問の合間に車内や事務所で対応 施設内で集中して記録が可能

 

訪問看護の仕事は、病院とは違った「その人の毎日の生活に深く関わる看護」です。

どちらが良い・悪いではなく、自分がどんな看護師として働きたいのか、自分の性格や価値観、生活スタイルにどちらが合っているかを見極めることが、満足のいく職場選びにつながります。

もし可能であれば、在宅・施設それぞれの現場を見学したり、実際に働いている知人看護師の声を聞いてみるのもよいでしょう。

実際の業務を知ることで、「やっぱりこっちが自分に合っている」と感じられるはずです。

 

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