訪問看護師さんで、このような疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。
訪問看護において、マニュアルは重要な役割を果たします。
当記事では、2024年報酬改定に基づいた訪問看護ステーションで作成すべきマニュアルについてご紹介します。
訪問看護について自信を持って提供したい看護師さん、報酬改定について改めて確認したい管理者さんは、ぜひ参考にしてみてください!
目次
1. 業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan)
訪問看護ステーションは、感染症の流行や自然災害などの非常事態においても、サービスを継続的に提供する責任があります。そのため、BCPの策定は不可欠です。
• リスク評価と分析: 地域特有の自然災害(地震、台風、洪水など)や感染症の流行状況を評価し、ステーションの運営に与える影響を分析します。
• 優先業務の特定: 非常時においても継続が必要な業務(重症患者への訪問、緊急対応など)を明確にし、優先順位を設定します。
• 代替手段の策定: 通常の業務遂行が困難な場合の代替手段を検討します。例えば、テレワークの導入、他の医療機関との連携、非常時用の物資の備蓄などです。
• 職員教育と訓練: BCPの内容を全職員に周知し、定期的な訓練を実施することで、非常時の対応力を高めます。
☝︎ 2025年度の年間研修に計画しておきましょう
2. 管理者の責務と人員・運営基準の明確化
2024年度の診療報酬改定により、訪問看護ステーションの管理者の役割や人員配置基準が明確化されました。
• 管理者の資格要件: 管理者は保健師または看護師であることが求められます。
• 管理者の業務範囲: 管理者は、訪問看護ステーションの運営に支障がない場合、他の事業所や施設の職務にも従事することが可能となりました。
• 人員配置基準: サービス提供にあたる保健師、看護師、准看護師を常勤換算で2.5名以上配置し、そのうち1名は常勤とする必要があります。
3.虐待防止および身体拘束等の適正化
利用者さんの虐待防止と身体拘束の適正化を推進するため、訪問看護の提供において、やむを得ない場合を除き、身体的拘束や行動制限を行ってはならないことが明記されました。
• 虐待防止策の策定: 職員による虐待を防ぐためのガイドラインを作成し、全職員に周知徹底します。
• 身体拘束の禁止: 緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束や行動制限を行わないことを明記し、やむを得ず行った場合は詳細を記録します。
☝︎ 勉強会などを年間研修に計画しておきましょう
4. 明細書の無料発行の義務化
利用者さんへの明細書の無料発行が義務化されました。
これにより、費用の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付する体制を整える必要があります。
システム改修や職員への周知を含むマニュアルの作成が求められます。
• 明細書の内容: 提供したサービスの種類、回数、費用内訳などを明確に記載します。
• 発行手続き: 利用者さんへの明細書発行のタイミングや方法を定め、確実に実施します。
☝︎ こちらはレセプトを行う職員とも共有しておきましょう。
5. 書面掲示事項のウェブサイトへの掲載
運営規程の概要や看護師等の勤務体制など、「重要事項」を、訪問看護ステーション内の見やすい場所に掲示するとともに、ウェブサイトにも掲載することが義務付けられました。
これに対応するためのマニュアル整備が必要です。
•掲示内容: 運営規程の概要、看護師等の勤務体制、サービス提供時間、料金表などをステーション内の見やすい場所に掲示します。
•ウェブサイトへの掲載: 上記の掲示内容を公式ウェブサイトにも掲載し、最新情報を常に更新します。
☝︎ 運営規定と重要事項説明書はセットで変更が必要ですね。
6. 訪問看護医療DX情報活用加算への対応
オンライン資格確認により利用者さんの診療情報を取得し、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行うことで、訪問看護医療DX情報活用加算(月50円)の算定が可能となりました。
これに伴い、オンライン請求の実施やオンライン資格確認の体制整備、関連情報の掲示・掲載を行う必要があります。
• オンライン請求の実施: オンライン請求システムを導入し、適切に運用するための手順をマニュアル化する必要があります。
• オンライン資格確認体制の整備: 利用者さんの診療情報を取得するためのオンライン資格確認システムを導入し、手順やトラブルシューティング方法を明記します。
• 掲示およびウェブサイト掲載: オンライン資格確認の体制や、質の高い訪問看護を実施するための情報活用方針を、ステーション内の見やすい場所に掲示し、さらにウェブサイトにも掲載することが求められます。
7. 訪問看護ベースアップ評価料の取得
職員の賃金改善を目的とした訪問看護ベースアップ評価料が新設されました。
2024年度・2025年度の職員の賃金改善に関する計画を策定し、評価料Ⅰ(1ヵ月780円)や評価料Ⅱ(10円~500円)の算定が可能となります。
賃金改善計画の策定や職員への周知を含むマニュアルの整備が求められます。
• 賃金改善計画の策定: 2024年度および2025年度の職員の賃金改善に関する具体的な計画を策定し、その内容をマニュアルに記載します。
• 評価料の算定方法: 評価料Ⅰおよび評価料Ⅱの算定要件や具体的な算定方法を詳細に説明し、適切な算定が行えるようにします。
• 職員への周知: 賃金改善計画や評価料の内容を職員に周知するための手順や方法を明記し、職員の理解と協力を促します。
8. ターミナルケア加算の見直し
ターミナルケア加算が見直され、介護保険の訪問看護等におけるターミナルケアの内容が医療保険と同様であることを踏まえ、評価が引き上げられました。
これにより、ターミナルケアの提供に関するマニュアルを見直し、適切なサービス提供を行う必要があります。
• ターミナルケアの提供基準: ターミナルケアの提供に関する基準や手順を明確化し、質の高いケアを提供するための指針をマニュアルに記載します。
• 加算算定の手続き: ターミナルケア加算の算定要件や手続きを詳細に説明し、適切な請求が行えるようにします。
• 職員研修の実施: ターミナルケアに関する最新の知識や技術を習得するための研修計画を策定し、職員のスキル向上を図ります。
☝︎ それぞれの加算には必要な書類があります。日頃から準備していつでも使用できるように整理しておくことは必要ですね。
9. 口腔連携強化加算への対応
利用者さんの口腔の状態を確認し、歯科専門職と連携して適切な口腔管理を実施するため、口腔連携強化加算(50単位/回、月1回限り)が新設されました。
これに対応するため、口腔衛生状態や口腔機能の評価方法、歯科医療機関や介護支援専門員への情報提供手順を含むマニュアルの整備が必要です。
• 口腔状態の評価方法: 口腔衛生状態や口腔機能の評価方法を具体的に記載し、適切な評価が行えるようにします。
• 歯科専門職との連携手順: 利用者さんの同意を得た上で、歯科医療機関や介護支援専門員に情報提供を行う手順を明確化し、スムーズな連携を図ります。
• 加算算定の条件と手続き: 口腔連携強化加算の算定条件や手続きを詳細に説明し、適切な請求が行えるようにします。
10. 多職種連携の強化
訪問看護ステーションにおける多職種連携の強化が求められています。
ICTを活用した情報共有プラットフォームの導入や、記録様式の統一により、リアルタイムでの情報共有や効率的な連携が可能となります。
これらのマニュアルを整備し、職員への周知が必要です。
•情報共有のためのプラットフォーム導入:訪問看護ステーション内外の多職種がリアルタイムで情報を共有できるように、情報共有プラットフォームを導入します。
•連携体制の構築:訪問看護ステーションと提携している医師、薬剤師、ケアマネージャーとの連携体制を強化します。
☝︎ 定期的なミーティングや情報交換の場を設けるようにしましょう
•記録様式の統一:多職種が同一のフォーマットで記録を行い、情報を円滑に共有できるようにします。
11. 専門性の高い看護師による対応の強化
制度改正では、訪問看護における専門性の強化が求められています。
特に、認定看護師や専門看護師といった高度な知識や技術を有する看護師が、在宅医療の現場に積極的に関与することが推奨されています。
これに伴い、以下のような項目を盛り込んだマニュアルを作成する必要があります。
• 役割分担の明確化:認定看護師・専門看護師が担う役割を明確にし、他スタッフとの連携体制を構築する。
• 訪問計画の立案:専門性の高いケアを必要とする利用者に対して、訪問スケジュールやケア内容を計画的に立案。
• 多職種連携の促進:医師、薬剤師、リハビリ専門職との情報共有体制を強化し、ケアの質向上を図る。
• 教育・研修の実施:専門看護師がリーダーシップを発揮し、他スタッフへの指導や勉強会を定期的に開催する仕組みを整える。
12. ICT(情報通信技術)の活用促進
ICTを積極的に活用することで業務効率化や情報共有の強化を図ることが求められています。
マニュアルには、以下の項目を含めると良いでしょう。
•電子カルテの導入と運用:利用者情報やケア記録を電子化し、チーム内でリアルタイムに共有できる体制を構築する。
•オンライン会議・カンファレンスの活用:多職種間での定期的なケースカンファレンスをオンラインで実施し、迅速な意思決定を可能にする。
•セキュリティ対策:個人情報保護の観点から、アクセス管理やデータ暗号化、ログ管理の手順を明記。
•職員教育の充実:ICTツールの使い方に関する研修を定期的に行い、すべてのスタッフが操作に慣れるよう支援する。
13. 利用者満足度の向上に向けた取り組み
訪問看護の質を向上させ、利用者さんおよび家族の満足度を高めるための方針をマニュアルに記載します。
•アセスメント強化:初回訪問時に利用者さんの状態や希望を丁寧に確認し、個別性を重視したケア計画を立案する。
•サービスの見える化:訪問スケジュールや提供するケア内容を家族にも共有し、透明性を確保。
•フィードバック制度の導入:定期的にアンケートを実施し、利用者さんや家族の意見を聞く機会を設ける。
•苦情対応のルール化:苦情が発生した場合の対応手順を明確にし、迅速かつ誠実に対応できる体制を構築。
14. 職員の働きやすさ向上とメンタルヘルスケア
訪問看護師は身体的・精神的な負担が大きいため、職員の働きやすい環境づくりやメンタルヘルスのサポートが必要です。
マニュアルに以下の内容を反映しましょう。
•勤務体制の見直し:オンコール対応の負担軽減策を検討し、シフト制の導入や夜間対応の分担を明確にする。
•定期的な面談の実施:管理者が定期的に職員と面談を行い、業務上の悩みやストレスを把握する。
•メンタルヘルス支援:外部のカウンセリングサービスや相談窓口を活用し、職員が気軽に相談できる環境を整備。
•研修の充実:ストレスマネジメントやコミュニケーションスキルに関する研修を定期的に実施する。
15. 地域との連携強化
地域包括ケアシステムの構築がさらに推進されるため、マニュアルには以下を含めます。
• 地域ケア会議への参加:行政や地域の医療・介護関係者が集まる会議に参加し、情報共有を行う。
• 地域資源の把握:地域における医療機関、介護サービス、ボランティア団体などのリソースをリスト化し、必要に応じて利用者に紹介する。
• 緊急時対応マニュアルの整備:夜間や休日における緊急連絡先を明記し、地域の医療機関との連携手順を明確にする。
まとめ
今回の制度改正 に対応するため、訪問看護ステーションでは、業務の効率化やサービスの質向上に向けたさまざまな取り組みが必要です。
オンライン資格確認や多職種連携の強化、ターミナルケア加算や口腔ケアの連携など、現場で実践可能な具体的な方法をマニュアル化し、職員全員が一丸となって取り組むことが重要です。
また、日頃の業務においても、記録の残し方、入職時、在庫管理、各委員会等様々なマニュアルが必要になってきます。
書類の管理の仕方や周知の方法が適切であるか等、常にチェックしておくことは大切です。
これらの対策を通じて、利用者さんに安心で質の高い訪問看護を提供できるようにしていきましょう。
訪問看護ステーションで作成すべきマニュアルはどんなものがあるのかな
制度改正の内容も含めると難しそうだけど、気をつけることとかあるのかな…。