訪問看護ステーションの営業を始めようとしたとき、「そもそもどこに営業をかければよいのか」がわからず、手が止まってしまう方は多いのではないでしょうか。
訪問看護の依頼は、闇雲に営業をかけて増えるものではなく、紹介の仕組みを理解したうえで、適切な営業先に的確にアプローチすることで着実に増えていきます。この記事では、訪問看護の主な営業先4つの特徴と、それぞれに合ったアプローチ方法を具体的に解説します。
- 訪問看護の営業先となる主な4つの機関の特徴
- 営業先ごとに重視されるポイントとアプローチ方法
- 4つの営業先を比較した際の違い
- 開設フェーズに応じた営業先の優先順位
目次
訪問看護ステーションの営業先は主に4つ
訪問看護への依頼は、基本的に医師の指示書とケアマネジャーなどからの紹介によって発生します。飛び込みで一般の利用希望者から直接依頼が入ることは稀で、間に必ず紹介元となる専門職・機関が存在するのが訪問看護というサービスの特徴です。そのため、営業活動もこの紹介の流れに沿った先を対象に行うのが基本です。主な営業先は、次の4つに整理できます。
- 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)
- 地域包括支援センター
- 地域医療連携室(病院の退院支援担当・MSW)
- クリニック・訪問診療所などの医療機関
それぞれ紹介につながる利用者さんの層や、担当者が重視するポイントが異なります。同じトークや同じ資料をすべての営業先に使い回すのではなく、相手の立場に立って必要な情報を組み立て直すことが、営業効率を高める第一歩になります。次の章から、それぞれの営業先について順番に見ていきましょう。
①居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)の特徴とアプローチ
居宅介護支援事業所は、要介護認定を受けた在宅の利用者さんのケアプランを作成するケアマネジャーが所属する事業所です。訪問看護の紹介元として最も件数が多い営業先といわれています。
特徴・重視されるポイント
ケアマネジャーは、利用者さんやご家族の希望に沿って複数の事業所の中から紹介先を選びます。そのため、対応エリア・空き状況・対応可能な疾患の幅など、具体的で最新の情報を持っているかどうかが重視されます。
効果的なアプローチ
単発の挨拶で終わらせず、定期的な訪問で関係を継続することが基本です。パンフレットや紹介シートを用意し、口頭説明だけに頼らず視覚的に強みを伝えられるようにしておくと、印象に残りやすくなります。

ケアマネジャーさんは日々多くの事業所と関わっています。「顔が見える関係」を作れているかどうかで、紹介の優先度がかなり変わってくると感じています。

②地域包括支援センターの特徴とアプローチ
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談や介護予防支援などを担う、地域に根ざした公的な相談窓口です。要支援・要介護認定を受ける前の相談段階から関わっていることも多く、早い段階での紹介につながる可能性がある営業先です。
特徴・重視されるポイント
地域包括支援センターの職員は、地域全体の医療・介護資源を把握しておく必要があるため、事業所の存在そのものを知ってもらうことがまず重要です。特定の利用者さんの紹介というより、地域とのつながりを重視する傾向があります。
効果的なアプローチ
地域ケア会議や研修会、地域の多職種連携の集まりに積極的に参加し、顔の見える関係を築いていくアプローチが有効です。単発の営業訪問よりも、地域活動への継続的な参加が信頼構築につながります。
③地域医療連携室(病院の退院支援担当・MSW)の特徴とアプローチ
地域医療連携室は、病院に入院している患者さんの退院支援を担う部門で、医療ソーシャルワーカー(MSW)が中心となって在宅移行の調整を行います。医療依存度の高い利用者さんの紹介につながりやすい営業先です。
特徴・重視されるポイント
退院後すぐに医療的なケアが必要になるケースが多いため、対応可能な医療処置の範囲や、緊急時・夜間の対応力が特に重視されます。退院前カンファレンスへの参加経験も、信頼獲得のポイントになります。
効果的なアプローチ
退院前カンファレンスへの参加を積極的に申し出るほか、対応可能な医療処置(褥瘡ケア、経管栄養、在宅酸素療法など)を明確にまとめた資料を用意しておくと、スムーズな連携につながります。
地域医療連携室からの紹介は医療依存度が高いケースが多いため、受け入れ可否を曖昧にせず、対応できる範囲を正直に伝えることが信頼関係の維持につながります。無理な受け入れは事故やスタッフの疲弊につながる恐れがあります。

④クリニック・訪問診療所などの医療機関の特徴とアプローチ
クリニックや訪問診療所は、訪問看護指示書を発行する主治医が所属する医療機関です。訪問看護は医師の指示のもとで提供されるサービスであるため、継続的な信頼関係の構築が特に重要な営業先といえます。
特徴・重視されるポイント
医師は、指示書の内容が的確に実行され、状態変化がタイムリーに報告されることを重視します。日々の報告・連絡・相談の質が、次の紹介につながるかどうかを大きく左右します。
効果的なアプローチ
初回の挨拶では、報告書のフォーマットや緊急時の連絡方法など、実務的な連携の流れをすり合わせておくとスムーズです。訪問後の状態報告を丁寧に行い続けることが、最大の営業活動になります。
4つの営業先を比較すると
ここまで紹介した4つの営業先の違いを、一覧で整理します。
| 営業先 | 紹介につながりやすい利用者層 | 重視されるポイント |
|---|---|---|
| 居宅介護支援事業所 | 要介護認定済みの在宅利用者 | 対応エリア・空き状況・疾患対応の幅 |
| 地域包括支援センター | 要支援・認定前の相談段階の高齢者 | 地域とのつながり・相談対応の柔軟さ |
| 地域医療連携室 | 退院直後の医療依存度が高い利用者 | 医療処置対応力・緊急時対応・退院前連携 |
| クリニック・訪問診療所 | 在宅医療を受けている利用者全般 | 報告連絡の質・指示書対応のスピード |
開設フェーズ別に見る営業先の優先順位
4つの営業先すべてに同時に力を注ぐのは、人員が限られる開設直後には現実的ではありません。フェーズに応じて優先順位をつけることをおすすめします。
- 開設直後(実績ゼロ〜半年程度)まずは近隣の居宅介護支援事業所への挨拶回りを最優先に行い、最初の紹介実績を作ることに集中します。
- 実績が少しずつ積み上がってきた時期地域包括支援センターや地域の多職種連携の場に参加し、地域全体への認知を広げていきます。
- 安定期(一定の紹介ルートが確立した後)地域医療連携室や複数のクリニックとの関係を強化し、医療依存度の高い利用者さんの受け入れ体制を整えていきます。
営業先開拓でよくある失敗と対策
営業先の特徴を理解していても、実際の活動でつまずきやすいポイントがいくつかあります。代表的な失敗パターンとその対策を整理しました。
- 挨拶回りが一度きりで終わってしまう→定期訪問のスケジュールをあらかじめ決め、継続的な接点を仕組み化する
- すべての営業先に同じ資料・トークで対応してしまう→営業先ごとに重視されるポイントを踏まえ、伝える内容の重点を変える
- 受け入れ体制の情報が古いまま伝わってしまう→空き状況や対応可能な疾患を定期的に更新し、常に最新の情報を届ける
- 紹介後のフォローが手薄になる→依頼を受けたあとの経過報告を丁寧に行い、次の紹介につながる信頼を積み重ねる
営業先の開拓は一度きりの活動ではなく、関係を維持し続けることが本質です。新規開拓と既存の関係維持の両方に、バランスよく時間を配分する意識を持ちましょう。
まとめ|営業先ごとの特徴を理解し、的確にアプローチする
訪問看護の営業先は、居宅介護支援事業所・地域包括支援センター・地域医療連携室・クリニックや訪問診療所の4つに整理できます。それぞれ紹介につながる利用者層や重視されるポイントが異なるため、画一的な営業ではなく、相手に合わせたアプローチを意識することが依頼数の安定につながります。
- 訪問看護の主な営業先は4つ(居宅介護支援事業所・地域包括支援センター・地域医療連携室・クリニック)
- 営業先ごとに重視されるポイントが異なるため、それぞれに合ったアプローチが必要
- 開設フェーズに応じて優先順位をつけて取り組むのが現実的
- いずれの営業先でも「顔の見える関係」と「丁寧な報告連絡」が信頼構築の基本になる
4つの営業先の特徴を理解したうえで、自事業所の状況に合わせた営業計画を立てていきましょう。焦って手を広げすぎず、まずは一つひとつの関係を丁寧に積み重ねていくことが、結果的に安定した紹介数につながる近道です。

よくある質問
開設直後は、どの営業先から回るべきですか?
まずは近隣の居宅介護支援事業所への挨拶回りを最優先することをおすすめします。紹介件数が多く、最初の実績を作りやすい営業先だからです。実績が積み上がってきたら、地域包括支援センターや医療機関へと徐々に対象を広げていきましょう。
地域包括支援センターへの営業で、すぐに紹介にはつながりにくいのはなぜですか?
地域包括支援センターは特定の利用者さんの紹介というより、地域全体の医療・介護資源の把握を担う窓口という性質が強いためです。すぐに紹介につながらなくても、地域活動への継続的な参加を通じて、中長期的な認知拡大につなげる位置づけで考えるとよいでしょう。
地域医療連携室からの紹介は難しいケースが多いと聞きますが本当ですか?
退院直後の利用者さんは医療依存度が高いケースが多く、対応できる医療処置の範囲や緊急時対応力が問われるのは事実です。ただし、対応可能な範囲を正直に伝え、退院前カンファレンスへの参加など丁寧な連携を重ねることで、信頼関係を築くことは十分に可能です。
4つの営業先すべてに同時に営業をかけたほうがよいですか?
人員が限られる開設直後は、すべてに同時に力を注ぐより、優先順位をつけて取り組むほうが現実的です。まずは居宅介護支援事業所を中心に実績を作り、段階的に対象を広げていくアプローチをおすすめします。
営業担当者を専任で置いたほうがよいのでしょうか?
事業所の規模や体制によって最適な形は異なります。専任の営業担当者を置く事業所もあれば、管理者やスタッフが訪問業務と兼務しながら営業活動を行う事業所もあります。重要なのは担当を明確にし、誰が・いつ・どの営業先に接点を持つのかを継続的に管理できる状態にしておくことです。訪問記録やケアマネジャーとのやり取りを一覧化しておくと、担当者が変わった場合の引き継ぎもスムーズになります。























