訪問看護の現場では、褥瘡予防や関節拘縮予防などの目的でポジショニングが行われますよね。
利用者さんによって、ポジショニングの目的は異なり、その方法も変わってきます。
さらに病院や施設と異なり、使用できる資源が限られている訪問看護の現場では、応用する能力が必要です。
今回は、訪問看護の現場で使えるポジショニングのポイントを解説します!
目次
ポジショニングとは
ポジショニングの定義は、看護学分野、理学療法学分野によって定義が異なります。
定義:対象の状態に合わせた体位や姿勢の工夫や管理をすること
目的:安楽、合併症の予防、QOLの向上、現在もしくは将来的により良い日常生活行動をとる、動くという動作を維持する等
定義:対象者との関係性のなかで、理学療法を行うため、対象者と適切な位置関係をとること
目的:合併症の予防、リラクゼーションの提供、運動、感覚機能回復の促進、介助者、対象者ともに安全かつ負担の少ない姿勢を保つため等
引用:看護における「ポジショニング」の定義についてー文献検討の結果からー
訪問看護の現場では、利用者さんに合わせた体位をとることはもちろん、利用者さんを介護する家族やスタッフの負担軽減も重要ですね。
そしてポジショニングの目的は、利用者さんの状態や取り巻く環境によって変わります。
具体的には、以下のような目的が挙げられます。
- ポジショニングの目的
- 褥瘡の予防
- 呼吸状態の安定
- 嚥下の改善、誤嚥防止
- 浮腫の予防や軽減
- 疼痛の予防
- 関節拘縮の予防
- 動作の改善
- 嚥下の改善
- 介助者の負担軽減 等
何を目的としてポジショニングを行うか、利用者さんと関わる家族やスタッフと情報共有しておくことも重要となります。
訪問看護の現場におけるポジショニングのポイント3選
では、ここからは訪問看護の現場で使えるポジショニングのポイントをお伝えします!
訪問看護の現場におけるポジショニングのポイントは、以下の3つに絞りました。
- 現状をアセスメント
- ポジショニングの実践
- ポジショニング後の変化をアセスメント
では、細かく解説していきます!
現状をアセスメント
まずは、現状をアセスメントすることです。
これがとても重要ですね。
まずは、今の状態で何が問題か、どうしてポジショニングが必要かをアセスメントします。
アセスメントのポイントは、身体全体の位置の把握です。
拘縮や褥瘡発生部位だけでなく、身体全体を見ることが重要です。
身体全体を見るには、2パターン、そして3方向から見ましょう。
- 訪問時
- 仰臥位(できるだけ枕などを外す)
訪問時の状態は、普段からこのポジショニングで良いかを判断するために見ます。
仰臥位は基本的な位置関係を把握するために見ます。
- 足元から見る
- 頭側から見る
- 真横から見る
ベッドの位置関係もあるので、可能な範囲で全体が見ることができれば良いです。
引用:快適な姿勢をサポートするポジショニング実践コンパクトガイドVol3,株式会社ケープ
このように頭側からがより身体全体を把握しやすいです。
そしてそれぞれのポイントを線で結ぶようにイメージするとよりわかりやすくなります。
目で見るだけではわかりにくい場合、写真撮影をするとより身体全体を捉えやすくなりますよ。
個人情報ですので、利用者さんやその家族に写真撮影の許可を得ておきましょう。
身体全体を見たとき、アセスメントのポイントは以下になります。
- 捻れがないか
- 傾きがないか
- 痛みがないか
- 普段の様子と仰臥位で変化があるか
- マットレスの部分的な沈み込みがないか など
さらに、可能であれば実際利用者さんの身体に触って、褥瘡が発生しやすい部分や骨突出があるところを中心に重さを確認します。
重さの確認は、身体とマットレスの間に手を入れて行います。
このように、身体の左右の重さの違いや重さのかかり方を把握します。
このアセスメントができたら、現状の問題点と今後起こりうる問題点を考えます。
現状の問題点:拘縮がある
今後起こりうる問題点:拘縮がより進む
現場の問題点:踵に圧がかかっている
今後起こりうる問題点:踵に褥瘡ができる可能性がある
そして問題点をもとに、ポジショニングの目的を明確にします。
身体の拘縮があるため、拘縮が進まないようにする
踵に圧がかかりやすいため、褥瘡予防を行う
いずれも利用者さん、利用者さんを介助する人がどうしたら快適な在宅生活を送ることができるかということを根本に考えていきましょう。
ポジショニングの実践
現状のアセスメントから、問題点とポジショニングの目的を明確にしたら、いよいよポジショニングの実践です。
下肢が屈曲拘縮の場合の仰臥位
下肢の屈曲拘縮が進むと、脚が左右いずれかに倒れやすくなりますよね。
また、踵がマットレスに接地しているので踵に目が行きがちですが、実は臀部や背骨にも影響が出ます。
引用:快適な姿勢をサポートするポジショニング実践コンパクトガイドVol3,株式会社ケープ
屈曲拘縮の場合、このように高さを調整して脚全体をサポートできるようクッションを設置することがポイントです。
下肢が伸展拘縮の場合の仰臥位
下肢の伸展拘縮の場合は、踵に圧がかかりやすく、尖足になりやすい状態です。
そこで、クッションを踵だけに入れてしまうと、踵に圧がより集中します。
引用:快適な姿勢をサポートするポジショニング実践コンパクトガイドVol3,株式会社ケープ
このように空洞なく足全体がクッションにのるように設置することがポイントです。
スネーククッションを使用した側臥位
在宅でも仰臥位だけでなく側臥位をとることもありますよね。
実は多い側臥位ですが、普通のクッションでも対応できますが、スネーククッションを使用すると、身体の形に合わせやすいのでとても便利です。
スネーククッションなど体位変換用クッションは、介護保険を使ってレンタルできるものがあります。
スネーククッションは、側臥位だけでなく仰臥位でも使用できるので、一度検討してみると良いかもしれませんね。
以下のように、頭から足先まで全体がスネーククッションに包まれるように高さ調整をして設置します。
引用:快適な姿勢をサポートするポジショニング実践コンパクトガイドVol3,株式会社ケープ
ポジショニングの実践において、以下の3点は重要なポイントになります。
- 部分的に圧が集中しないように、マットレスと身体の間に空洞を作らない
- あらかじめクッションを設置して身体を置く
- クッション等の使用後は圧抜きをする
どんな肢位であっても、この3点は頭の片隅においておきましょう!
ポジショニング後の変化をアセスメント
ポジショニングの実践後は、再度アセスメントをします。
- ポジショニングをして利用者さんの身体に変化があったか
- 介助者の変化はあったか
- ポジショニングの方法は統一されているか など
このようにポジショニングは、アセスメントと実践の繰り返しとなります。
そして、訪問看護の現場では、情報共有がとても重要になってきますよね。
ポジショニングについても、介助者1人が上手くできているだけでは意味をなしません。
意味をなさないだけでなく、二次障害につながる可能性もあります。
利用者さんを取り巻く全ての人ができるようなポジショニングの方法と指導が必要になってきます。
実際、老々介護の場合だとポジショニングの獲得が難しいこともあります。
このような場合、簡単なポジショニングだけ家族に指導し、難しいポジショニングは専門職の訪問で対応しました。
一言にポジショニングと言っても、臨機応変な対応も必要ですね。
訪問看護の現場でポジショニングを実践しよう!
訪問看護の現場で使えるポジショニングのポイント3つを紹介しました!
訪問看護の現場では資源が限られており、ポジショニングが難しいと感じることが多々あります。
ポジショニングの方法は、利用者さんによって異なり、状態によって変化していきます。
変化に伴い、アセスメントと実践の繰り返しがポジショニングには必要です。
このポジショニングのポイントを押さえて明日から役立てていただけると幸いです。
今回、快適な姿勢をサポートするポジショニング実践コンパクトガイドVol3,株式会社ケープを参考にしています。
ポジショニングで使用できるクッションも紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください!