これまでに精神科訪問看護に携わったことのない看護師さんや作業療法士さんから、上記のようなご相談をいただくことがあります。
実際、精神科訪問看護はコミュニケーションが中心であることが多く、やりがいを感じにくいという声も聞いたことがあります。
今回は、精神科訪問看護でやりがいを感じる4つのことを紹介いたします。
これから精神科訪問看護にチャレンジしてみようと考えている看護師さんや作業療法士さんは、是非参考にしてください。
目次
精神科訪問看護のやりがい4つ紹介します
精神科訪問看護では、精神疾患を抱える利用者さんに対し専門的な知識や経験を持つ訪問看護師が看護を提供します。
一般的な訪問看護と同様に、基本的には精神科訪問看護師が一人で利用者さんの居宅に伺い訪問看護を行います。
精神疾患を抱える利用者さんが、在宅で精神症状を安定させ自立した生活ができるよう支援するのが精神科訪問看護です。
では、精神科訪問看護のやりがいとはどのようなものが挙げられるのでしょうか。
私の考える精神科訪問看護のやりがいは、以下の4つです。
- 一人一人の利用者さんとじっくり関わることができる
- 看護師の言葉かけやコミュニケーションで症状が改善できる
- 正解がない分「自分の色」 を出すことができる
- 家族への支援も利用者さんの安定につなげることができる
事項より詳しく解説していきます。
一人一人の利用者さんとじっくり関わることができる
精神科訪問看護の利用者さんは、長年精神疾患を抱えて生活している人が多くいます。
利用者さんの中には、何度も入退院を繰り返す人もいます。
利用者さんの心身の状態は状況によって異なるため、利用者さんと私たちが目指すべき目標は利用者さんによって個別性が高いものになります。
例えば、作業所を遅刻や欠席なく参加することや、飲酒をせず過ごせることなど様々あります。
訪問看護師が自分本位で目標を決めてしまうと利用者さんとズレが生じ、目標に向かって進めなくなってしまうことがあります。
最悪の場合、信頼関係が構築できず「訪問はもう来ないでください」と言われてしまう可能性もあります。
精神科訪問看護師は、利用者さんと向き合いコミュニケーションをとることが大切です。
そして、本人が地域で生活できるために、どのような支援が必要かを一緒に考え目標を設定する必要があるのです。
このような関わりは、入院中に行われる治療をメインとした関わりでは中々難しい場合があります。
1人の利用者さんに割ける時間が少なく、在宅での生活をイメージしにくいためです。
精神科訪問看護では、自宅の環境や利用者さんを取り巻く人間関係に合わせ自立した自己コントロールの促進を支援することができます。
時には一進一退で利用者さんが理想とする生活や症状コントロールができないこともあります。
しかし、あらためて振り返りをしながら安全安楽に自立した生活をするにはどうしたらいいか、共に考えることができます。
一人一人の利用者さんとじっくり関わることができることが、精神科訪問看護におけるやりがいの1つだと考えます。
看護師の言葉かけやコミュニケーションで症状が改善できる
精神科訪問看護は、利用者さんへの言葉かけを工夫する必要があります。
なぜなら、訪問看護師の言葉かけ1つで精神症状が悪化する可能性があるからです。
例えば、幻聴が強く自分が精神疾患だと自覚がない利用者さんがいるとします。
会話の中で「治療のためにも薬は忘れずに飲みましょうね!」 と訪問看護師は利用者さんに伝えます。
本人は病気と自覚がないので、「治療なんか必要ない!薬なんか飲むか!」 となってしまうのです。
看護師の言葉かけ1つで怠薬してしまうことや、結果的に精神症状が悪化してしまい日常生活を送ることさえ困難になってしまう事例がありました。
この場合、どのような声かけが正解なのでしょうか。
私は明確で正しい答えはなく、利用者さんの性格に合わせた対応が必要になると考えます。
怠薬の危険性が高い利用者さんと関係性を築けている場合、「私の信頼している先生から処方された少し気持ちが楽になるお薬です。」と伝えてみます。
もしそのように伝えた場合、 「この看護師さんが言うのであれば、明日も飲んでみようかな 」と考えてくれる場合もあります。
精神科訪問看護師が発する言葉は時として利用者さんの症状を悪化させてしまうこともあります。
しかし、相手の状況や立場に立って関わり方を考え、丁寧に真摯に向き合うことで精神科訪問看護師と利用者さんの信頼関係は築くことができます。
精神科訪問看護師の関わりで、精神疾患を抱える利用者さんの生活を支えることも可能なのです。
このように、看護師の言葉かけやコミュニケーションで症状が改善できる点も、精神科訪問看護のやりがいのある点であると言えます。
正解がない分「自分の色」 を出すことができる
「自分の色」といっても少しわかりずらいですね。
看護師でもよく喋る人や、寡黙で真面目な人、冗談が好きな人もいます。
親しみやすく身近な存在である看護師や、疾患や病気の知識が豊富で適切なアドバイスができる看護師など様々なタイプの看護師がいます。
精神科訪問看護は、自分が歩んできた今までの人生で形成された性格や、看護師人生で培った考え方を発揮しやすい場所だと思います。
その性格、考え方は精神科訪問看護での仕事において、長所となりやすいと考えます。
なぜなら、精神科訪問看護では長い利用者さんだと何年にもわたって訪問するため、利用者と看護師はお互いの性格が理解しやすいからです。
そのため、自分なりの「色」を活かして関わることができます。
もちろん利用者さんの個別性に応じた対応も重要なので、症状や状況に合わせた関わり方には注意が必要です。
このように、精神科訪問看護では看護師自身の個別性も活かして働くことができます。
自身の経験や考え方を活かした関わりで利用者さんの症状が安定したり、改善する様子が見られた時にはとてもやりがいを感じることができるでしょう。
家族への支援も利用者さんの安定につなげることができる
精神科訪問看護では、利用者さんだけでなく家族へのサポート、コミュニケーションも重要な役割です。
家族は、精神疾患を抱える利用者さんを在宅で見守り24時間サポートを行うので、精神的及び肉体的に大変疲弊していることが多いです。
訪問をしていて感じることは、家族が疲弊していると利用者さんの精神症状も悪化するケースが多いということです。
利用者さんだけではなく、家族が心身共に健康でいることは大変重要なことです。
利用者さんの家族の心身の健康を維持するために、時には利用者さんの目や耳が触れない場所で話を聞くこともあります。
家族は、利用者さんのサポートにおける愚痴や療養支援において苦労されている思いを話されます。
利用者さんの生活を支える上で生じる「愚痴」のはけ口がないこともあるので、思いを受け止め話を聴くようにしています。
利用者さんを一番近くで支える家族は、精神的な不安感、支えていくための身体的負担、精神疾患への偏見からの孤独感など様々な苦悩を抱えています。
精神科訪問看護では利用者さんだけでなくその家族ともコミュニケーションをとり、支援を行うことが重要です。
精神科訪問看護師の関わりにより家族の負担を軽減し、利用者さん自身の精神症状が安定させることができることもやりがいの1つと言えます。
まとめ
今回は、精神科訪問看護のやりがいを4つ紹介させてもらいました。
私の考える精神科訪問看護のやりがいは、以下の4つです。
- 一人一人の利用者さんとじっくり関わることができる
- 看護師の言葉かけやコミュニケーションで症状が改善できる
- 正解がない分「自分の色」 を出すことができる
- 家族への支援も利用者さんの安定につなげることができる
精神科訪問看護師の関わり方次第で、利用者さんの症状が安定したり改善することもあります。
精神科訪問看護は利用者さんとの関わり方が難しいこともありますが、その分大変やりがいのある仕事だと考えています。
この記事を読んでいただいた看護師さんや作業療法士さんに、精神科訪問看護への興味をもっていただければ幸いです。
精神科訪問看護ってどのような所にやりがいを感じるの?