巻き爪や肥厚爪などの爪トラブルがある場合、爪の切り方のコツってあるのでしょうか?
訪問看護でこういった疑問をもたれたことはないでしょうか?
超高齢化社会にともない、疾患や認知機能・下肢運動機能の低下により、爪のトラブルはとても多くなっており、巻き爪や肥厚爪といった爪のトラブルは、下肢の機能を低下させ、転倒のリスクを高めます。
高齢者の足には高い確率で爪に異常があるという報告もあり、爪のトラブルの改善は健康年齢の延長のために重要であることがわかっています。
訪問看護で、利用者さんから爪切りの依頼されたことがある看護師さんは多いと思います。
正常な爪であればヘルパーさんでも切れますが、爪にトラブルがある場合はヘルパーさんでは切ることができませんので訪問看護の介入が必要です。
今回は、訪問看護で爪切りのケアを適切に行うために、訪問看護師が行う爪切りの介入方法・爪切りの目的・爪の観察点・正しい爪の切り方・爪切りの道具の選択・爪切りの手順などについて説明していきたいと思います。
訪問看護での爪切りのコツを知り、ぜひ皆さんの訪問看護で役立ててくださると嬉しいです!
目次
訪問看護で行う爪切りとは?
高齢になると視力が低下し、体の姿勢の関係や手先の動きも不自由となり、爪を自分でうまく切れなくなる方はとても多いです。
また、疾病の影響や靴や歩き方の問題から爪が変形したり、巻き爪になるために痛みを伴い、歩行困難となるという話もよく聞きます。
訪問看護で行う爪切りは、利用者さんの爪にトラブルがあり、医師の指示により「巻き爪予防」「陥入爪予防」などで爪切りの介入をすることになると思います。
訪問看護では巻き爪・陥入爪・肥厚爪・爪白癬などの爪のトラブルに遭遇することは多いため、医師やケアマネジャーに爪のトラブルがあることを報告・相談し、医師の指示書やケアプランに「巻き爪予防」や「陥入爪予防」などで入れてもらうと訪問看護で爪切りにも介入できます。
訪問看護で出会う爪トラブルとは?
訪問看護の中で遭遇する主な爪のトラブルには、以下のようなものがあります。
巻き爪
巻き爪は、爪の端が内側に巻いてくる爪の変形であり、痛みを伴わない状態のことです。
爪の両端がアルファベットの「C」のような形で巻き込んでいくものや、一方の爪の端が巻き込んでいくものなど様々なタイプがあります。
爪には自ら皮膚の方に向かって巻く力があり、歩くことで逆に爪の巻きを広げる力がかかり、バランスよく拮抗することで爪の状態は保持されていますが、深爪や幅の狭い靴や締め付ける靴下による足趾への圧迫、運動不足、外反母趾などの足の変形により、巻き爪を引き起こしてしまいます。
陥入爪
陥入爪は、爪が周囲の皮膚に食い込み、疼痛、炎症、肉芽形成、二次感染を引き起こした状態のことをいいます。
多くの場合、陥入爪になる原因は、爪を短く切りすぎてしまうことにあるようです。
爪を短く切りすぎてしまうと、皮膚と爪の間に段差が生じ、この状態で爪が伸びると爪が皮膚に食い込んでいき陥入爪を発症してしまいます。
さらに、痛みを緩和するためにさらに短く切ることで悪循環となります。
肥厚爪
肥厚爪には、硬厚爪甲(こうこうそうこう)・爪甲鉤彎症(そうこうこうわんしょう)・爪甲下角質増殖(そうこうかかくしつぞうしょく)があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
硬厚爪甲は、爪が前に伸びることができず、爪が根元から伸び続け盛り上がるように厚く硬くなる状態
爪甲鉤彎症は、爪が厚くなり色が混濁し、表面がデコボコし、前方にかぎ状に湾曲している状態
爪甲下角質増殖とは、爪床と爪甲の間に角質が蓄積し硬くなり、爪全体が持ち上がり爪が分厚くなる状態
肥厚爪は爪甲が厚く硬くなる状態であり、爪床と爪甲との間に角質が詰まり、この角質が硬くなり、爪甲と一体化して厚くなっていきます。
色は褐色や茶色、灰色、緑色、黒色と混濁しています。
肥厚爪になるおもな原因は、加齢・合わない靴による圧迫・深爪・爪のケア不足・外傷によるものだといわれています。
白癬爪
爪白癬とは、爪に白癬菌が侵入し、白癬菌が爪に感染した状態です。
爪の変色や変形が主な症状であり、爪はもろくてボロボロと崩れやすくなります。爪甲下の角質が厚くなり、爪が混濁して見えるようになり、爪も分厚くなってきます。
あまり痛みやかゆみもないことも多いです。
俗に「爪水虫(つめみずむし)」ともいわれますね。
訪問看護で行う爪切りの目的
訪問看護で爪切りをする目的は次の通りです。
- 爪や爪による皮膚の損傷を防ぐ
- 巻き爪や肥厚爪など爪のトラブルを防ぐ
- 清潔保持、感染の予防する
- 爽快感を与える
訪問看護で行う爪切りの観察点
訪問看護での爪切りは、次の点を考慮しながら観察していきます。
- 爪の長さや形状や色
- 爪甲周囲の角質の有無
- 巻き爪・陥入爪・肥厚爪・爪白癬の有無、程度
- 発赤、腫脹、疼痛、炎症など感染兆候の有無
- 清潔度
訪問看護で行う爪の正しい切り方
爪を切るときの理想の長さは、皮膚から爪が出ない程度の長さでスクエアカットという四角い形です。
深爪をしてしまうと下にある皮膚が盛り上がり、爪が正常に伸びず爪の端が巻き込まれるように伸びてきてしまい、巻き爪になります。
出典)マルホ株式会社 皮膚科学領域での卓越した貢献を (maruho.co.jp)
訪問看護で行う爪切りの道具の選択
上の写真の爪切りの道具は、私の事業所で実際に使用しているものです。
以下に爪切りに必要な道具の選択について説明をしていきます。
- ストローゾンデ:爪床と爪甲の境を作る
- ゾンデ:角質を除去したり、巻き爪予防のためのガーゼを挟むときに使う
- 爪切り:爪を切る
- 爪やすり:爪の形をそろえる
- ニッパー: 固い爪や厚い爪を切る
- アルコール綿:消毒する
- 新聞紙:爪が散乱しないように足の下に使用
- ビニール手袋:爪切り時に使用
ストローゾンデとは、ストローを斜めに切り作っています。先が細いので爪床と爪甲の間に入りやすく、爪床と爪甲が癒着している場合でも境を作りやすいです。
訪問看護で行う爪切りの手順
爪を切る手順は以下のとおりです。
- まずは実施者はビニール手袋を装着し、利用者さんの爪の状態をよく観察します。
- 足浴や温めたタオルで手や足をよく温め、しっかりと洗います。
- 足や手の下に新聞紙を広げ、爪が散乱しないようにします。
- 爪甲周囲にたまっている角質をゾンデを使用して取り除き、爪床と爪甲の境をしっかり作ります。
- 爪床と爪甲が癒着していて境がわからない場合は、ストローゾンデを使用し境を作ります。
- 上記の「爪の正しい切り方」のように爪を切っていきます。
- 肥厚爪の場合は、爪の厚く重なった部分を爪やすりで削っていきます。
- ゾンデを使用して、爪床と爪甲の間に詰まった残りの角質を取り除いていきます。
- 爪を爪やすりで整えます。爪やすりは一定方向にかけていくのがポイントです。
- 爪周囲をアルコール綿で消毒し、終了です。
まとめ
今回は、訪問看護における爪切りの重要性や爪の切り方のコツや手順などについて解説しました。
高齢者の場合は特に、爪の肥厚や巻き爪や陥入爪の痛みなどから歩行時に影響が生じ、歩行困難になったり、転倒によって骨折、寝たきりにつながる可能性もあります。
爪のトラブルを改善することで、歩行状態が良くなり、利用者さんのQOLの向上を図ることもできますので、訪問看護で利用者さんの爪にトラブルがある場合は、ぜひ爪切りにも介入することをおすすめします。