訪問看護とは?現役看護師がわかりやすく解説

「訪問看護って、結局どんなことをしてくれるの?」——ご家族から聞かれて、うまく答えられなかった経験はありませんか。病院のイメージが強い看護師ですが、実は訪問看護ステーションで働く看護師は全体のごく一部です。

この記事では、現役訪問看護師の視点から、訪問看護の定義・従事者・利用者・役割を整理し、実際にどんな支援ができるのかを、がん末期の在宅療養支援の例を交えて解説します。

この記事でわかること
  • 訪問看護の定義と、病院看護との違い
  • 訪問看護で働く人・利用する人の特徴
  • 訪問看護が担う役割の全体像
  • がん末期の在宅療養を支える訪問看護の具体例

訪問看護とは?わかりやすくお答えします

訪問看護とは、看護師や理学療法士などの専門職が利用者さんの自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養上の世話や必要な診療の補助を行うサービスです。病院に入院・通院するのではなく、住み慣れた自宅で医療的なケアを受けられるのが最大の特徴です。

対象となるのは、医療保険または介護保険の利用者で、主治医が訪問看護の必要性を認め、訪問看護指示書を交付した方です。年齢や病状によって、医療保険・介護保険のどちらが適用されるかが分かれます。

看護師 上妻
看護師 上妻

病院の看護師をしていた頃は、訪問看護の存在自体をあまり意識していませんでした。実際に働いてみると、病院では見えなかった「生活の中での看護」の奥深さに驚かされます。

訪問看護で働く人はどんな人?

厚生労働省の衛生行政報告例(令和6年末)によると、就業看護師のうち訪問看護ステーションに従事しているのは実人員で91,022人、全体の6.7%(常勤換算では6.4%)です。看護師の多くは病院(65.7%)に勤務しており、訪問看護は看護師のキャリアの中でもまだ限られた領域といえます。

訪問看護ステーションには、看護師・保健師・助産師のほか、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリ職が配置されていることも多く、多職種でチームを組んで利用者さんを支えています。

訪問看護を利用する人はどんな人?

訪問看護を利用するのは、必ずしも「寝たきりの高齢者」だけではありません。実際には次のような幅広い方が利用しています。

  • 退院直後で、自宅療養に不安がある方
  • 慢性疾患(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患等)で継続的な観察が必要な方
  • がん末期など、終末期を自宅で過ごしたいと希望する方
  • 精神疾患があり、生活リズムや服薬の支援が必要な方
  • 医療的ケアが必要な小児・障害児

年齢層も新生児から高齢者まで幅広く、「病気や障害があっても自宅で暮らし続けたい」というニーズに応えるのが訪問看護の役割です。

訪問看護の役割

訪問看護の役割は、単なる医療処置の実施にとどまりません。主に次の4つの役割を担っています。

役割具体的な内容
療養上の世話清潔ケア、排泄ケア、栄養管理、体位変換など、生活を支える看護
診療の補助点滴・注射・褥瘡処置・カテーテル管理など、医師の指示に基づく医療処置
病状観察・重症化予防バイタルサインや症状の変化を早期に発見し、必要に応じて主治医に報告・連携
家族支援・相談対応介護方法の指導、精神的なサポート、他の福祉サービスとの調整

訪問看護は医療保険?介護保険?費用負担の考え方

訪問看護は、利用者さんの状態によって医療保険または介護保険のいずれかが適用されます。基本的な考え方は次の通りです。

区分主な対象
介護保険要介護・要支援認定を受けている65歳以上の方(特定疾病に該当する40〜64歳の方も含む)が原則優先
医療保険40歳未満の方、要介護認定を受けていない方、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七・第八)に該当する方、特別訪問看護指示書が交付された期間中の方など

自己負担割合は、医療保険・介護保険ともに所得等に応じて1〜3割です。難病医療費助成など他の公的制度と組み合わさることで、自己負担がさらに軽減されるケースもあります。どちらの保険が適用されるかは主治医・ケアマネジャーが判断するため、利用を検討する際はまず相談することが最初のステップです。

訪問看護の1回の訪問はどのくらいの時間?

1回の訪問時間は30分〜90分程度が一般的で、利用者さんの状態やケア内容に応じて事業所・主治医が設定します。頻度も週1回から、状態によっては毎日複数回まで幅があります。「毎日長時間いてもらえる」というイメージを持たれることもありますが、実際には限られた時間の中で必要なケアを的確に行うことが求められる仕事です。

看護師 上妻
看護師 上妻

「もっと長くいてほしい」と言われることもありますが、限られた時間で必要なケアを終え、次の利用者さんのところへ向かうのも訪問看護の大切な仕事です。時間配分も看護師の腕の見せどころですね。

がん末期の利用者さんへの訪問看護の活用例

訪問看護の役割がもっとも色濃く表れる場面のひとつが、がん末期の在宅療養支援です。

  1. 生活・意思の聴取「家で最期を迎えたい」といった利用者さんの希望や、残された時間の過ごし方についての意向を丁寧に聴取する。
  2. 疼痛・症状のコントロール医療用麻薬の使用状況や副作用、痛みの変化を観察し、主治医と連携して調整する。
  3. 緊急時対応急変時の連絡体制をあらかじめ整え、家族が慌てず対応できるよう事前に説明しておく。
  4. 家族へのケア介護をする家族の身体的・精神的な負担にも目を向け、レスパイトケアや相談支援につなげる。
  5. 看取りへの支援最期の瞬間まで、利用者さんと家族が安心して過ごせるよう、医療と生活の両面から支える。
POINT

がん末期の在宅療養では、医療処置だけでなく「その人らしい最期をどう迎えるか」という価値観に寄り添うことが、訪問看護師に求められる重要な役割です。

訪問看護を利用するまでの流れ

実際に訪問看護を利用したい場合、次のようなステップで手続きが進みます。

  1. 主治医・ケアマネジャーに相談する入院中であれば病院の退院支援担当者、在宅であればかかりつけ医やケアマネジャーに、訪問看護を利用したい旨を伝える。
  2. 訪問看護指示書の交付を受ける主治医が訪問看護の必要性を判断し、訪問看護ステーション宛ての指示書を作成する。
  3. 訪問看護ステーションと契約する利用するステーションを決め、重要事項説明を受けたうえで契約を結ぶ。
  4. 訪問看護計画を作成し、訪問開始初回訪問で状態を確認し、看護・リハビリテーションの目標を盛り込んだ計画書を作成、以降定期的に訪問を行う。
注意

訪問看護は「利用したい」と思ったその日から始められるものではなく、主治医の指示書が前提条件になります。利用を急ぐ場合は、早めに主治医・ケアマネジャーへ相談しておくことが大切です。

よくある質問

訪問看護は誰でも利用できますか?

主治医が訪問看護の必要性を認め、訪問看護指示書を交付することが前提になります。年齢や要介護度、疾患によって医療保険・介護保険のどちらが適用されるかが異なるため、まずはかかりつけ医やケアマネジャーに相談することをおすすめします。

訪問看護と訪問介護はどう違いますか?

訪問看護は看護師等の医療専門職が医療的なケアを提供するのに対し、訪問介護はホームヘルパーが生活援助や身体介護を中心に提供します。両者は目的や提供する内容が異なり、必要に応じて併用されることもあります。

訪問看護は24時間対応してもらえますか?

ステーションによっては24時間対応体制加算を届け出ており、夜間・緊急時の電話相談や訪問に対応できる場合があります。対応の可否や範囲はステーションごとに異なるため、契約時に確認しておくと安心です。

訪問看護師になるにはどうすればよいですか?

看護師・保健師・助産師の国家資格を持ち、訪問看護ステーションや病院からの訪問看護に従事することで訪問看護師として働けます。臨床経験を積んでから訪問看護に転身する人が多いのが実情です。

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まとめ|訪問看護は自宅で暮らし続けるための医療的な支え

訪問看護は、病気や障害があっても住み慣れた自宅で暮らし続けたいというニーズに応える、医療と生活をつなぐサービスです。療養上の世話から医療処置、家族支援、看取りまで、幅広い役割を担っています。

この記事のまとめ
  • 訪問看護は主治医の指示のもと、自宅で療養上の世話・診療の補助を行うサービス
  • 令和6年末時点で、看護師の6.7%(実人員)が訪問看護ステーションに従事
  • 利用者は高齢者に限らず、小児から終末期の方まで幅広い
  • がん末期の在宅療養では、医療処置に加えて意思の尊重・家族支援・看取りへの寄り添いが求められる

訪問看護について理解を深めることは、利用を検討するご家族にとっても、訪問看護師を目指す方にとっても、最初の一歩になります。

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ABOUT US
上妻 裕弥看護師/MBA取得
株式会社ビジケア代表取締役/看護師・MBA取得。これまで200社以上の訪問看護事業所へ経営コンサルティング・BPOサービスを実施。経営者・管理者のサロン等も含めると500社を超える。単月黒字化から複数拠点展開、事業承継まで支援し、看護師の視点で「続く経営」をつくる。別法人にて自身でも全国に訪問看護ステーション展開している。