訪問看護師が知っておきたい便秘ケアと下剤調整の基本

受け持ちの利用者さんに便秘の方がいます。浣腸や摘便することもありますが、基本的な便秘ケアと下剤調整を教えてもらえますか?

在宅療養の利用者さんにとって、便秘は非常に多い悩みの一つです。

便秘は単なる排便回数の問題ではなく、吐き気や腹痛、食欲不振などを引き起こし、生活の質(QOL)を大きく低下させることがあります。

また、腸管内容物の停滞により薬の吸収に影響を及ぼす可能性もあります。

訪問看護の現場では、排便に関する相談を受ける機会も多く、便秘への対処は訪問看護師が重要な役割を担うケアの一つです。

本記事では、訪問看護師が知っておきたい便秘ケアと下剤調整の基本について解説します。

 

在宅で実践する排便アセスメントとケア

便秘とは何か

便秘とは、本来体外に排出されるべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態を指します。
一般的には以下のような状態が便秘とされています。

便秘とは
  • 3日以上排便がない
  • 排便があっても残便感がある
  • 腸管内容物の通過が遅延し排便困難がある

排便状況の感じ方は個人差が大きく、利用者本人が「便秘」と感じていなくても、実際には排便コントロールが必要な場合もあります。

 

訪問看護で重要な排便アセスメント

排便アセスメントでは、排便回数だけでなく、量や性状を客観的に評価することが重要です。

便の状態は便の硬さと形を7段階で分類する、1997年に英国で開発された世界的な指標ブリストルスケールを参考に評価するとよいでしょう。

理想目標はブリストルスケール4程度の柔らかさです。

主なアセスメント項目は、以下のとおりです。

 

問診
  • 排便回数
  • 最終排便日
  • 便の硬さ・量残便感
  • 食事量・水分量
  • 活動量など
利用者は排便について自ら話さないことも多く、聞かなければ答えないケースも少なくありません。

初回訪問時、訪問ごとに積極的に排便状況を確認することが大切です。

 

身体所見
    • 腹部触診
    • 打診
    • 聴診
    • 必要に応じて腹部X線・腹部CT・腹部エコーなどの検査

訪問看護ステーションによっては、ポケットエコーを利用しているところもあります。

次世代看護教育研究所においてはエコーを用いた排便コントロールの研修会も実施されています。

エコーを用いて排便コントロールができれば、他のステーションとの差別化につながる可能性もあります。

 

食べなくても便は出る?

利用者や家族からよく聞かれる言葉に「食べていないから便が出ない」というものがあります。

しかし実際には便は以下の成分で構成されています。

  • 食べ物の残りカス:約5%
  • 水分:約60%
  • 腸内細菌の死骸:約15%
  • 腸粘膜:約20%

つまり、食事量が少なくても便は作られるため、排便管理は必要です。

排便コントロールの重要性について利用者・家族と認識を共有することが重要です。

 

吐き気の原因としての便秘

特に進行がんの利用者では、悪心の原因の約40%が便秘といわれています。

吐き気がある場合は、薬剤の副作用だけでなく便秘の可能性も疑うことが大切です。

 

訪問看護でよくある排便トラブル

訪問看護の現場でよくある相談の一つが「便が出ないので下剤を飲んだら下痢になった」というケースです。

排便コントロールは、下剤の種類や量を調整しながら行うことが重要です。

薬剤の調整は医師の指示のもとで行われますが、訪問看護師は排便状況を観察し、適切に医師へ報告・相談する役割があります。

 

便秘に使用される主な下剤

 

下剤早見表

分類 代表薬 特徴
浸透圧性下剤 酸化マグネシウム、ラクツロース、モビコール® 腸内の水分を増やし便を柔らかくする
胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬 グーフィス® 水分分泌と腸管運動を促進する
大腸刺激性下剤 センノシド、ピコスルファート、大建中湯 大腸を刺激し排便を促す
腸液分泌促進薬 アミティーザ®、リンゼス® 腸管からの水分分泌を促進
末梢性μ受容体拮抗薬 スインプロイク® オピオイドによる便秘に使用
薬剤
酸化マグネシウム 便秘症利用者にはまず考慮すべき薬剤(安価) ・高齢者や腎不全の方では高マグネシウム血症に注意
モビコール® 副作用が少なく小児~高齢者まで使用可

高齢者、心・腎疾患の方でも使用しやすい

・経口摂取困難、食欲が低下している方にはお勧めしにくい
アミティーザ® 便が柔くなりすべりが良くなって出やすくなる ・糖尿病やパーキンソン病に合併した便秘にエビデンスあり
リンゼス® 腸管内へ水分分泌亢進+腸管運動促進 ・腹痛(腸蠕動痛)を伴う便秘へ良い適応

・食後の内服は下痢の副作用が多いため食前30分前に内服

グーフィス® 大腸内の水分が増加+蠕動運動促進 ・効果発現が早い、(早ければ2-3時間で効果)

・大腸の蠕動運動機能が低下した高齢者に良い適応

・長期連用でも効果が弱くなりにくい

・初回使用時は腹痛の副作用が多いことを事前に伝える

・腹痛は初回に多く徐々に慣れてくることが多い

 

 

下剤使用の基本ポイント

下剤を使用する際には次のポイントが重要です。

  • 基本となる薬剤を決める
  • 同じ作用機序の下剤を重複させない
  • 少しずつ増量する
  • 排便があっても急にすべて中止しない

また利用者さん・家族には「自己調整可能な薬」として説明することも重要です。

 

下剤調整の考え方

一般的には次のような流れで調整が行われます(医師の指示のもとで実施)。

下剤調整の例(医師の指示のもとで実施)
  1. 基本薬→ 酸化マグネシウム
  2. 効果不十分→ アミティーザなど追加
  3. 腹痛・吐き気がある→ リンゼスへ変更
  4. 高齢者→ グーフィスが有効な場合がある
  5. それでも排便が得られない場合→ 刺激性下剤(センノシド・ピコスルファート)を頓用

 

最近は下剤の種類も多くなり、主治医と相談して利用者さんに合った下剤の使用ができるように薬剤の知識を習得することも大切です。

刺激性下剤は排便率が高い反面、長期連用で腸管の蠕動運動が低下する可能性があるため、基本的には頓用で使用します。

 

見逃してはいけない溢流性便秘

 

便秘から急に下痢になる場合は注意が必要です。

頻回の少量下痢や便秘で下剤を飲むことによって下痢をする場合、溢流性便秘の可能性があります。

溢流性便秘とは、便秘が進行し便塊がつまって、口側で生じた水様便が便塊の周りをつたって溢れるものです。

見かけ上は下痢のように思えても、根本には直腸に硬い便が溜まり栓のようになっている状態です。

そのため、水分の多い便だけが隙間から漏れ出し、泥状の便が続きます。

特に高齢者や寝たきりの方に多く見られるのが特徴があり、訪問看護の利用者さんには多いと考えます。

この場合は、誤って下痢止めを服用すると腸の動きがさらに弱まり、便秘が悪化する危険があります。

溢流性便秘を疑う目安として次のようなサインが挙げられます。

  • 水のような便が出ても固形物が混ざらない
  • 強い便意がないのに下着が汚れることがある
  • お腹が張って苦しいのに下痢便が出る
  • 便秘薬を飲んでも下痢便しか出ない

 

これらの症状があるときはまずは溢流性便秘を疑い、主治医に報告し直腸診にて、直腸内に硬い便の塊が触れないか確認してみましょう。

 

溢流性便秘の対処の例
  • 浣腸
  • 摘便
    などで直腸内の硬便を除去し、その後下剤調整を行います。

以下の記事もいっしょに読んでみることをおすすめします。

薬だけに頼らない生活ケア

便秘ケアでは薬物療法と生活ケアの両方が重要です。

食事の工夫

腸内環境を整えるためシンバイオティクスを意識し、水分摂取を促す工夫をしましょう。

シンバイオティクスとは、プロバイオティクス(善玉菌そのもの)とプレバイオティクス(善玉菌のエサになるもの)を組み合わせたもののことです。

 

良い菌(善玉菌そのもの)を入れる
  • ヨーグルト
  • チーズ
  • 納豆
  • 乳酸菌飲料など
良い菌を増やす(善玉菌のエサになるもの)
  • 食物繊維
  • オリゴ糖など

 

水分摂取(水分不足は便を硬くします。)
  • 汁物
  • 果物
  • 栄養補助食品などを活用します。

食事量が少ない場合

ごはんは便のかさになるため、一口でも食べられる工夫が大切です。

硬便のとき

オリーブオイルは、主成分の「オレイン酸」が小腸で吸収されず大腸まで届き、便の潤滑油となって排出をスムーズにし、排便時の潤滑油となり、硬い便を柔らかくすることがあります。

朝の空腹時に大さじ1〜2杯程度(15〜30ml)をそのまま飲むか、サラダ、ヨーグルトにかけるのが効果的です。

利用者さんと相談して、可能であれば試してみるのもいいと思います。

排便を助ける姿勢

排便は座位のほうが排出しやすいとされています。

仰臥位では、どうしてもいきむ方向、肛門管の軸がずれてしまうことになります。

座位困難な場合は、可能であれば左側臥位で膝を抱える姿勢がおすすめです。

努責が難しい場合は、腹部マッサージと合わせて、腹部に手を当て呼吸に合わせて、腹圧をサポートすることで、排ガスや排便が促されることもあります。

 

訪問看護師の役割

 

便秘の原因は一つではなく

  • 食事量
  • 水分
  • 活動量
  • 薬剤
  • 疾患など複数の要因が関係します。

 

そのため訪問看護師は、生活状況・食習慣・排便習慣・セルフケア能力などを総合的にアセスメントすることが可能な存在です。

医師に任せるだけでなく、訪問看護師こそ、排便状況を観察し、生活ケアと薬剤調整の両面から支援することができます。

 

まとめ

便秘は吐き気や食欲不振の原因となることもあり、訪問看護では早期から対応が可能です。

 

まとめ
    1. 排便アセスメントと溢流性便秘がないかを判断する
    2. 薬剤の基本理解をして適切な下剤を使用できるように主治医と連携する
    3. 訪問看護師の視点から生活習慣への介入を通して排便コントロールを支えること

 

定期排便処置として浣腸や摘便を行うだけでなく、利用者さんの生活背景やセルフケア能力に合わせて、薬物療法と生活ケアを組み合わせた支援を行うことが、訪問看護師として在宅での便秘ケアの役割といえるでしょう。

訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることが解決できるような記事の作成を心がけています。

この記事が皆さんの業務のお役に立てれば幸いです。

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