まだまだ、訪問看護(リハビリ)に携わる言語聴覚士は少なく、どんな方とどのようなことをしているのか、知る機会があまりないかと思います。
今回は、訪問看護(リハビリ)に従事していた私が、訪問する際に必ずバッグの中に入れていたものを一挙にご紹介します。
「これは病院でもよく使っているな」
「訪問看護(リハビリ)では、こんなものも持っていくのか!」
と、持ち物から見えてくる病院勤務との共通点や異なる点を感じていただけると幸いです。
これから、訪問看護(リハビリ)に従事したいと思っている言語聴覚士や従事し始めたばかりで何を持っていこうか悩んでいる言語聴覚士はぜひ、参考にしてみてください。
目次
持ち物から見る病院と訪問看護(リハビリ)の違い
訪問看護(リハビリ)と病院の最大の違いは、たった1人で利用者さんのご自宅に伺うことだと思います。
ですので、必要になる物が全く違うのでは?と考えている方が多いのではないでしょうか?
実は、そんなに変わりはありません。
意外に思われるかと思いますが、言語聴覚士に求められることは病院でも在宅でも大きく変わりません。
ですので、訓練などに使う基本的な道具は共通しています。
とは言ったものの、訪問看護(リハビリ)特有の持ち物も勿論ありますので、その使い方を含めてご紹介していきます。
言語聴覚士が持っていくバッグの中身は?
私がバッグの中に入れているものは病院勤務時代に常に持ち歩いていた物もあります。
ですので、病院勤務時と同じもの・訪問看護(リハビリ)に従事するようになって携帯するようになったものの2つに分けてご紹介します。
それぞれの持ち物が、どんな時に役立つのか、病院の時と違う部分があればそれも説明していきます。
病院勤務時と同じもの
病院勤務時と同じものは以下の4つです。
①聴診器
嚥下機能のスクリーニングをするときに必ず使う、心強い道具です。
病院と同じように、嚥下機能や呼吸機能・肺野の評価などを主に評価する際に力を発揮します。
しかし、在宅ではそれ以外の使い方もあるのです。
私は、嚥下障害の理解を促進するために、ご家族や利用者さんに実際の嚥下音を聞き比べていただいていました。
そもそも、利用者さんもご家族もどんな状態になっていても食べられるだろうという先入観を持っている方が多い印象があります。
ですので、主治医の説明を重大に受け止めきれない方もおられるようです。
しかも、嚥下機能は目に見えてわかる障害ではありません。
イラストなどを用いて説明してもなかなかしっかり理解される方は少数派です。
そんなときに、利用者さんやご家族に自分の音と聞き比べていただき、音を解説することで正常とは違うことを理解していただいていました。
意外とみなさん、興味津々なので、次に訪問したときに購入されている方もいらっしゃいました。
ちなみに、私はリットマンの聴診器を使っています。
②初期評価セット
私の場合は、改定長谷川式簡易知能評価(HDS-R)で使用する物品に加えて、高頻度語の写真カードを何枚か入れています。
生活の中で利用者さんもご家族も気になる部分はでてくるもの。
ご相談を受けたときや私がお話ししていて気になることがあったときに、いつでもスクリーニングができることが大切です。
ただ、気をつけて欲しいのが初回訪問でいきなり評価をすることです。
利用者さんと関係性ができていないときは言語聴覚士の初回評価は失礼だと思われ、訪問打ち切りになるケースもあるそうです。
事前情報とお話しして分かる情報で当たりをつけ、丁寧に必要性を説明し実施することが病院以上に大切です。
ちなみに、写真カードは自作ですが、下記のようなものが売っています。
ぜひ、参考にしてください。
③口腔ケアセット
こちらはご家庭で準備されていることが多いので、大量に持っていくことはありません。
利用者さんに使用するよりもご家族が実施する口腔ケアのやり方について、説明するときに使うことが多いです。
口腔ケアグッズは下記が個人的におすすめです。
へたらず、よく汚れが取れます。
④それぞれの利用者さんで必要になる教材
訪問看護(リハビリ)で伺う利用者さんは嚥下障害や失語症、音声障害など様々な症状で悩みを抱えています。
その方その方に合わせて必要な訓練が異なるため、カスタマイズして1人1人ファイリングしてバッグに入れていました。
この部分は病院と変わりはないかと思います。
教材は病院のようにいわゆる、紙のプリントだけでなく、貸与されているiPadにキーボードアプリや写真、絵カードなどを入れるようにしていました。
曜日によって利用者さんが違い、バッグに入れるものも違います。
教材がどうしても多くなる日は、準備を間違えてしまう・違うものを入れてしまうなどのこともありました。
なので、なるべく自分が分かりやすく、軽量化できるように頭を悩ませていました。
訪問看護(リハビリ)特有のもの
訪問看護(リハビリ)特有のものは以下の4つです。
・太めのペンと真っ白な紙が複数枚セットされているバインダー
・バイタル測定セットとリハビリの記録用紙
・小銭入れ
⑤利用者さんの簡単な情報
訪問看護(リハビリ)では不測の事態が病院に比べて起こりやすいです。
渋滞に巻き込まれて時間に遅れる・訪問したら利用者さんが不在など様々なケースがあり、連絡を取り合うことが大切です。
私ではありませんが、訪問したが応答がなく、ケアマネージャーに連絡して何とか室内を確認したところ、利用者さんが倒れているのを発見したケースがあったそうです。
何かあれば、少なくとも担当のケアマネージャーに連絡が取れるようにしておくことが大切です。
また、住宅地はナビゲーションにはでない、細い道があり、迷子になることもあります。
ですので、利用者さんのご自宅周辺の地図は慣れるまで入れておいた方が無難です。
⑥太めのペンと真っ白な紙が複数枚セットされているバインダー
太めのペンというのがポイントです。
利用者さんとご家族はご高齢の方が多く、普通に説明するだけでは理解しにくい方が多いです。
そのため、イラストや文字を書いて説明しますが、線が細すぎると見えにくい。
色々あって、使用する太めのペンは、ぺんてるのサインペンに落ち着きました。
さっと書けて、裏写りしないので、おすすめです。
また、説明以外にも自主練習のメニューを変えるとき、ささっと紙に書いてお渡しできるのが便利でした。
イラストが下手なので、少し恥ずかしいですが、次回の訪問までの時間を有効に使えるので恥を忍んでお渡ししていました。
他にも、看護師の訪問がこの後あるなど他のサービスが入っている場合、置き手紙のように使っていました。
連絡ノートがありますが、すぐ確認して欲しいことだけ書いて机に置いたところ、その情報を念頭において始められるのでよかったと言われたことがあります。
⑦バイタル測定セットとリハビリの記録用紙
大体は血圧計・SpO2・体温計ではないかと思います。
訪問時間内にバイタル測定しつつ、記録も書くのは大変そうと思われるかもしれませんが、先輩達にコツを教えてもらえるので、意外と何とかなります。
毎回測定をしていると、自然とその方の平均が分かるので、変化があれば、今日の訓練内容の負荷を軽くするなど調整することもできます。
フィジカルアセスメントが身につくので、訪問看護(リハビリ)を続けるにしろ、しないにしろ、とても役に立ちます。
私が職場から貸与されていたものは下記です。参考にしてください。
⑧小銭入れ
私は地方で訪問看護(リハビリ)に従事していたので、車移動が基本でした。
ご自宅に駐車場がある場合もありますが、多くの場合は時間制の駐車場を利用していました。
ですので、出庫する際に小銭が必要になってきます。
ない場合は、近くの自販機で崩すこともありましたが、次の訪問時間が迫っているときは気が気でなく。
訪問に出かける前に、必ず、1000円分の小銭があるか確認しています。
財布に入っていると知らないうちに使ってしまうので、小銭入れを別で持っています。
下記のように、普段絶対使わない、目立つ色のものを買ってすぐ見つけられるようにしていました。
基本的にやることは変わらない
今回は私の訪問看護(リハビリ)で持っていくバッグの中身をご紹介しました。
少しはどんな仕事をしているのか、想像できたでしょうか?
病院から離れて、自宅でリハビリを行うことはとても難しいことに感じますが、持ち物だけ見てみると意外と変わりません。
急変リスクなど病院にはないトラブルが起こることもありますが、ご自宅に帰ることで聞けた本音に沿って、本人様とご家族様に説明し、ともに生活を楽しんでいく。
そんなリハビリ職のあり方に興味がある方はぜひ、訪問看護(リハビリ)に挑戦してみてください。
・初回評価セット
・口腔ケアセット
・それぞれの利用者さんで必要になる教材