言語聴覚士の方と仕事をしたことはありますでしょうか?
病院などの医療の場でお会いすることの多い言語聴覚士さんですが、訪問看護でも精力的に働いて下さっています。
今回は訪問看護における言語聴覚士の役割について、同じコメディカルスタッフからの情報としてお伝えできればと思います。
目次
言語聴覚士とは
言語聴覚士とは、言語聴覚士法第二条にて以下のように定められています。
上の文言だけだと、言語訓練に対する関わりが中心というイメージが強いです。
しかし、この他にも高次脳機能障害や嚥下機能に対してなど、理学療法士・作業療法士がフォローしきれない多彩な分野の知識に精通しています。
言語聴覚士の役割
ここからは言語聴覚士の役割について解説します。
大きく4つにまとめさせていただきます。
言語機能
さきほどの文章でも述べられていましたが、言語聴覚士はその名の通り、言語に関わる障害の対応を専門としています。
言語障害の要因は多岐に渡ります。
口などの機能の問題かもしれませんし、言葉を考える脳の問題かもしれませんし、はたまた言語を聞き取る聴力の問題かもしれません。
この辺りの能力を詳細に評価し、言語に対して主な影響を与えている問題は何なのかを特定することができます。
高次脳機能障害
言語機能の問題に対して、高次脳機能障害の影響が強くでてくることがあります。
代表的なものですと失語と呼ばれる高次脳機能障害がこれに当てはまります。
失語に限らず多彩な高次脳機能障害を評価・訓練できることも言語聴覚士の役割の一つになります。
高次脳機能障害を捉えるだけであれば、作業療法士やその他のコメディカルスタッフでも対応が可能です。
しかし、高次脳機能障害の言語に対する影響や、各種評価バッテリーに広く精通しているのは言語聴覚士になります。
また、高次脳機能障害の影響によって言葉を話すことが難しい方に対して、コミュニケーションツールと呼ばれる道具が有効な場合があります。
このコミュニケーションツールに関しても、言語聴覚士が得意な分野になります。
嚥下機能
言語機能の他に食べ物を飲み込む能力である嚥下機能に関するリハビリも、言語聴覚士の役割の一つになります。
言葉を発するときに使われる口やのどですが、言葉の他に食べ物を飲み込むときにも使用される器官になります。
言語聴覚士はこれらの器官に対して評価を行い、食べ物を飲み込む際に誤嚥などのリスクが生じないかを確認することができます。
小児領域
先程まで述べた「言語機能」「嚥下機能」に関しては、高齢者だけではなく子どもに関しても障害を持つことがあります。
先天性の障害によって影響を受ける方もいれば、事故や発達の遅れなどにより後天的に障害を持つ方もいらっしゃいます。
特に「言語機能」「嚥下機能」の障害は子どものうちから生じると、その後の発育に大きな影響を及ぼします。
小児領域の上記障害に対しての訓練や、早期発見のための評価も言語聴覚士の役割の一つになります。
訪問看護で働く言語聴覚士は少ない?
訪問看護で働く言語聴覚士は多くはありません。
言語聴覚士の働く領域として、言語聴覚学会では主に医療、介護、福祉、学校教育、養成校、研究・教育機関、その他で分類しています。
その中でも訪問看護が含まれる介護保険領域で働く言語聴覚士の割合は全体の6.49%と報告されています。
また言語聴覚士自体が他のリハビリ業種(理学療法士・作業療法士)と比較すると有資格者の数が少ないです。
以上の理由から、訪問看護で働く言語聴覚士は、看護師や理学療法士・作業療法士と比較すると人数は少ないことが想定されます。
また人数が少ないことから、訪問看護事業者の中で言語聴覚士が一人職場や少数となっていることもあります。
このような状況ですと新規利用者の獲得に積極的に動くことが難しく、あまり訪問看護で働く言語聴覚士の情報を聞くことも少ないのかもしれません。
訪問看護で働く言語聴覚士の役割
最後に訪問看護における言語聴覚士の役割について、注意点をふまえて解説します。
言語聴覚士の役割について、おおまかに4つの役割を解説しました。
- 言語機能
- 高次脳機能障害
- 嚥下機能
- 小児領域
訪問看護における言語聴覚士の役割も大きな変わりはありませんが、言語聴覚士の力を借りる上で注意点があります。
「担当の言語聴覚士及び所属する事業所が、どこまでの支援を取り扱っているのか」を確認しておく必要があります。
特に嚥下機能の支援体制に関しては注意が必要です。
言語聴覚士の役割の一つとして嚥下機能への介入があげられますが、嚥下機能への介入はリスクの高い支援内容になります。
窒息や誤嚥のリスクがありますし、これを在宅環境で行う事でよりリスクが高まります。
病院とは異なり、在宅環境でアクシデントが起きた場合には、迅速な医療処置が難しいためです。
嚥下機能の支援として訪問看護での言語聴覚士の支援を希望する場合は、事業所としてどこまでの支援内容を可能としているのか、嚥下機能訓練中にアクシデントが生じた場合はどのような対応をとるのかを事前に確認しておくことをお勧めします。
その他に言語聴覚士の方の経験として嚥下機能の支援が可能なのかも一つのポイントになります。
この経験の有無という注意点は、小児領域の支援においても同様のことが言えます。
まとめ
訪問看護における言語聴覚士の役割について、解説させていただきました。
言語聴覚士の支援に巡り合うことはとても貴重です。
またどのコメディカルスタッフとも異なる視点から物事を分析してくださるので、お話をしていて勉強になることがとても多いです。
お近くの言語聴覚士とお会いできることがありましたら、是非とも多くの意見交換を行う事をお勧めします。
「音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図る為、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者」
引用:言語聴覚士法