訪問看護における言語聴覚士の役割を紹介します

訪問看護では「看護師」のイメージが強いですが、実は言語聴覚士(ST)が活躍する場面は非常に多く、在宅生活を支えるうえで欠かせない存在です。

特に、嚥下機能の低下や構音障害、失語症などのコミュニケーションの困難は、日常生活の質を大きく左右します。

この記事では、訪問看護で言語聴覚士が具体的にどのような支援を提供しているのかを、わかりやすく詳しく解説します。

訪問看護ステーションでSTを配置しようか悩んでいる管理者の方はもちろん、訪問STへの転職を考えている方にも役立つ内容です。

 

訪問看護における言語聴覚士(ST)の役割

訪問看護におけるSTの業務は、病院での訓練とは異なり、**“自宅でその人の生活を守る”**ことに焦点が当てられています。

以下では具体的な役割を詳しく説明します。

 

嚥下評価と食事形態のアドバイス

訪問STの最も重要な役割のひとつが、嚥下(えんげ)機能の評価です。

自宅での食事は、誤嚥や誤嚥性肺炎のリスクが常に存在するため、STは身体機能や嚥下時の動作を詳細に観察し、安全な食事形態を提案します。

・とろみの量
・刻みの程度
・姿勢調整(椅子の高さ、クッション使用)
・食事環境の整備

これらを家族と一緒に調整し、「自宅で無理なく安全に食べられる」状態を作ることが大切です。

 

失語症や構音障害などのコミュニケーション支援

脳梗塞後の失語症、パーキンソン病に伴う小声、構音障害など、在宅ではコミュニケーションの問題が大きなストレスになります。

訪問STは、
・発語訓練
・ジェスチャーや写真カードなど代替手段の提案
・会話しやすい環境作り
・家族への声掛け方法のアドバイス
などを行い、「話せない・伝わらない」ストレスを軽減します。

在宅生活におけるコミュニケーション改善は、本人と家族のQOL向上に大きく貢献します。

 

誤嚥予防のための口腔機能トレーニング

訪問STは、口腔機能の低下予防・改善のためのトレーニングも行います。

例えば、
・唇や舌のストレッチ
・呼吸訓練
・咳嗽力(せきの強さ)を高める訓練
・喉頭挙上訓練
など、医師の指示書に基づいて安全に進めます。

特に高齢者は、少しの嚥下機能の低下が誤嚥性肺炎に直結しやすいため、定期的な訪問STによる評価と訓練は非常に重要です。

 

食事場面の観察(ミールラウンド)と家族支援

訪問看護では、実際に食事をしている場面を観察することも重要な役割です。

病院と違い、在宅では家族が介助をするケースが多いため、
・介助量が多すぎないか
・急がせていないか
・食べる速度はちょうど良いか
などを確認し、家族の負担や不安を軽減します。

家族教育は訪問STの腕の見せどころとも言われるほど、在宅生活では重要な支援です。

 

福祉用具(食事補助具)の提案

嚥下障害や上肢機能低下がある場合、食事補助具の導入で格段に食べやすくなることがあります。

訪問STは、リハビリ専門職として、
・スプーンの形
・皿の傾斜
・テーブルの高さ
などを調整し、その人に合った環境を整えます。

福祉用具専門相談員やケアマネと連携しながら提案できるのも訪問STの強みです。

 

医師・看護師・PT・OT・ケアマネとの密な連携

訪問STは単独で支援するわけではなく、多職種との情報共有が欠かせません。

例えば、
・看護師:誤嚥性肺炎の兆候、摂取量
・PT/OT:姿勢保持、食事姿勢
・医師:食事形態の変更の可否
・ケアマネ:サービス調整、生活面の課題
など、チームで利用者の生活を支えるために、STの専門的視点は極めて重要です。

 

訪問STが活躍しやすい利用者像

訪問看護におけるSTのニーズは年々高まっています。特に以下のような利用者に必要性が大きいです。


・脳梗塞後の高次脳機能障害・失語症
・パーキンソン病、ALS、筋萎縮性疾患
・認知症による食事場面でのトラブル
・摂食嚥下機能の低下が進んだ高齢者
・誤嚥性肺炎を繰り返す方
・胃ろうから経口移行を目指している方

在宅医療の拡大に伴い、訪問STの役割はさらに重要になると言われています。

 

訪問看護における言語聴覚士を配置するメリット

訪問看護ステーションにとってST配置のメリットは大きく、今後の差別化にもつながります。

メリット

・嚥下評価ができることで安全管理の質が高まる
・利用者・家族の満足度が向上し、在宅生活の継続につながる
・PT/OTと並んでリハビリの幅が広がる
・医師やケアマネからの評価が高くなり、新規依頼が増える
・ST人材はニーズが高く、競合との差別化になる

特に嚥下評価は訪問看護の安全確保に直結するため、ステーションにとって非常に価値の高い専門性です。

 

まとめ

訪問看護における言語聴覚士(ST)は、嚥下評価、コミュニケーション支援、食事姿勢の調整、家族指導、多職種連携など、多岐にわたる役割を担っています。

訪問STの専門性が加わることで、在宅療養者の「食べる」「話す」「伝える」が守られ、QOL向上に直結します。

今後、訪問看護ステーションがより質の高いサービスを提供するためには、STの存在は欠かせないものになるでしょう。

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