訪問看護は弔問すべき?すべき理由としない方が良い理由

訪問看護師として利用者やご家族と深い関係性を築いていると、利用者が亡くなった際に「弔問すべきかどうか」と悩むことがあります。

看護師としての立場、公私の線引き、職場の方針など、さまざまな視点から判断が必要になります。

本記事では、訪問看護師が弔問すべき理由と、あえてしない方が良い理由を客観的に整理し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

現場で迷った時に参考になるよう、実際の判断ポイントも紹介していきます。

 

訪問看護師は弔問すべき?すべき理由としない方が良い理由を解説

訪問看護師としての立場で、利用者が亡くなった際に「弔問に行くかどうか」は悩ましい問題です。

以下では、両面から検討します。

 

弔問すべき理由① 感謝の気持ちを伝えたい・最後のお別れをしたい

訪問看護では、病棟勤務以上に1対1の関わりが深くなり、長期間にわたる関係性のなかで情が芽生えることも多くあります。利用者や家族と信頼関係が築けていた場合、「これまでのお礼を伝えたい」「最後に顔を見てお別れしたい」という自然な感情が生まれます。

また、ご家族にとっても「生前お世話になった方が来てくれた」と感じることで、グリーフケア(遺族の悲嘆への寄り添い)にもつながるという意見もあります。形式ばらず、短時間でも顔を見せるだけで意味があることも少なくありません。

 

弔問すべき理由② 地域との信頼関係の維持・事業所の印象向上

特に地方や小規模地域では、「あの訪問看護師さん、ちゃんとお別れに来てくれた」と地域全体に良い印象を与えることができるケースもあります。信頼構築が重視される地域密着型のステーションでは、こうした細やかな対応が後の紹介や利用にも影響を与えることがあります。

一方で、ステーションとして方針を明確にし、「看護師は勤務時間外の弔問は控える」と決めている場合は、個人判断で動くことで逆にトラブルとなる可能性もあるため、注意が必要です。

 

弔問すべき理由③ ご家族に対する支援の一環として

訪問看護の役割には、利用者だけでなく家族支援(Family Support)も含まれています。看取りの場面では、家族が不安や後悔を抱えることも多く、死後もその気持ちが続くことがあります。

そのため、亡くなった直後や通夜・葬儀で「生前の姿を知っている看護師」が顔を出すことで、ご家族が安心するケースもあるのです。「最期までよく頑張られましたよ」「◯◯さんらしい最期でしたね」などの一言が、家族の癒しになることもあります。

 

弔問しない方が良い理由① 公私の線引きが難しくなる

訪問看護師は、あくまでも業務として訪問し、看護を提供する職業人です。感情的なつながりが強くなると、仕事とプライベートの境界があいまいになり、精神的負担が増す可能性があります

特に看取り件数が増えると、毎回のように弔問していると心身ともに疲弊してしまう看護師も少なくありません。こうしたリスクを避けるために、あえて弔問を控える選択をするのも、自己防衛として大切な視点です。

 

弔問しない方が良い理由② 勤務時間外や個人判断になるリスク

多くの訪問看護ステーションでは、業務としての訪問は「死亡確認」や「エンゼルケア」までで、その後の弔問については明確な規定がないことが多いです。そのため、「勤務時間外に個人の判断で弔問した結果、ステーションの方針と食い違っていた」というケースもあります。

また、他のスタッフとの公平性や、「誰が行くのか?」「誰が行かないのか?」という感情的なトラブルにもつながりかねません。一律の対応ルールを事業所として決めておくことが理想的です。

 

弔問しない方が良い理由③ ご家族の負担になる可能性もある

看護師側の「行きたい」という気持ちが強くても、ご家族が「あまり人を呼びたくない」「静かに見送りたい」と考えている場合もあります。特に自宅葬やコロナ禍以降は、親族以外の出入りを控える方も少なくありません。

そのため、弔問する際は必ず「家族の希望を確認する」ことが前提です。「お別れに伺ってもよろしいですか?」と事前に聞く配慮が大切です。

 

訪問看護師が弔問するか迷ったときの判断基準

弔問の可否は、「感情」だけでなく「職場の方針」「家族の意向」「自分の心身状況」を総合的に判断する必要があります。

以下のような判断ポイントを整理するとよいでしょう。

判断基準 確認のポイント
職場の方針 弔問についてガイドラインや方針があるか?
家族の意向 弔問を望んでいるか?招待があったか?
看護師自身の気持ち・状態 無理なく行けるか?感情的に整理ができているか?
関係性の深さ 関わった期間や頻度、エピソードが印象深かったか?

※可能であれば、ステーション内でのルール整備や、スタッフ間の共通認識の形成が望ましいです。

 

まとめ

訪問看護師が利用者の死後に弔問するかどうかは、非常にデリケートな問題です。

感謝やお別れの気持ちを伝えたいと思う一方で、公私の線引きや職場の方針、家族の意向も考慮しなければなりません。

「弔問は絶対にすべき」とも「行くべきでない」とも言い切れないからこそ、個別に丁寧な判断が求められます。

訪問看護は、人生の最期に寄り添う尊い仕事です。感情に流されず、冷静な視点で「今、何が最善か?」を考える姿勢を持ちましょう。

ステーションとしてのルールを整えることも、看護師を守る大切な一歩です。

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