パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いについてわかりやすく解説

「パーキンソン病」はご存じですよね?

 

学校で必ず習い、国家試験でも必ず勉強してきているはずです。

また病院や施設どこに行っても多くのセラピストの方が関わる疾患だと思います。

 

「パーキンソン症候群」という言葉も聞いたことがありませんか?

 

これもきっと学生の頃に勉強してきていると思います。

ただ、皆さんは違いをちゃんと説明できるでしょうか?

そこで今回パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いについて整理し、分かりやすく解説してみたいと思います。

 

 

パーキンソン病とは?

 

パーキンソン病は、脳の大脳基底核、黒質緻密部にあるドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性の神経変性疾患です。

ドパミンが減り、大脳基底核での運動の制御が障害されて、動作が緩慢になる疾患です。

パーキンソン病の疾患数や症状は以下のようになります。

 

疾患数
  • 有病率:10万人あたり、約150人
  • 日本の患者数:15万人~18万人

(参照:神経難病リハビリテーション 100の叡智)

 

症状

振戦、筋固縮、無動・動作緩慢、姿勢反射障害の4大兆候がある

非運動症状として自律神経障害(便秘、起立性低血圧など)と精神障害(意欲低下、抑うつ)などがみられる

 

パーキンソン症候群とは?

パーキンソン症候群とはパーキンソン病以外のパーキンソニズムをきたす疾患を総称したものをいいます。

 

パーキンソニズムの定義は、次のいずれかに該当する場合となります。

  1. 典型的な左右差のある安静時振戦(4~6Hz)がある
  2. 歯車様強剛、動作緩慢、姿勢反射障害のうち2つ以上が存在する

 

パーキンソン症候群を引き起こす疾患は以下のようなものがあります。

 

変性疾患
  • 進行性核上性麻痺
  • 大脳皮質基底核変性症
  • 多系統萎縮症、特にMSAーP(線条体黒質変性症)
  • レビー小体型認知症

 

非変性疾患
  • 薬剤性パーキンソニズム:抗精神病薬、抗潰瘍薬などによる
  • 脳血管性パーキンソニズム:基底核の多発性小梗塞などによる
  • 中毒性パーキンソニズム:一酸化炭素中毒やマンガン中毒によるものが多い
  • 脳炎後パーキンソニズム:フォン・エオノモ脳炎や日本脳炎で起きたものを指す

 

(参照:神経難病リハビリテーション 100の叡智)

 

パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いについての解説します

 

パーキンソン病の診断基準をもとに、パーキンソン症候群と鑑別し、整理していきたいと思います。

下記の順番で1つずつ確認していきたいと思います。

参照:病気がみえる vol.7 脳・神経 第1版)

 

①パーキンソンニズムの存在があるか

パーキンソニズム
  • 典型的な左右差のある安静時振戦(4~6Hz)
  • 歯車様個縮、動作緩慢、姿勢歩行障害のうち2つ以上

 

パーキンソン病、パーキンソン症候群のどちらもパーキンソニズムがありますよね。

まずは上記2つの項目のパーキンソニズムが1つでもあるのかを確認します。

パーキンソニズムがなければ、どちらとも対象外になりますね。

 

②パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露があるか

抗精神病薬、制吐薬、抗潰瘍薬、降圧薬などの曝露があるかみていきます。

ある場合は下記の状態の可能性があります。

 

  • 薬剤性パーキンソニズム
  • 中毒性パーキンソニズム

 

これらはパーキンソン症候群に含まれます。

曝露がない場合は次の確認事項にすすみます。

 

③脳CTまたはMRIの特異的異常がないか

脳CT又はMRIにおける特異的異常とは次のようなことを指します。

 

多発脳梗塞、被殻萎縮、脳幹萎縮、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮など他の原因によるパーキンソニズムであることを明らかに示す所見の存在をいう

 

そして、画像所見にて下記のような状態があるかをみていきます。

 

  • 多発脳梗塞
  • 被殻・脳幹萎縮
  • 著明な脳室拡大・大脳萎縮

 

ある場合は次のようなパーキンソン症候群になります。

 

  • 脳血管性パーキンソニズム
  • 進行性核上性麻痺
  • 線条体黒質変性症(MSA-P)
  • 正常圧水頭症など

 

画像での異常所見がなければ、さらに次のことを確認します。

 

④抗パーキンソン病薬によりパーキンソニズムが改善するか

パーキンソニズムの改善はドパミン受容体刺激薬またはL-dopa製剤により判定します。

改善しない場合は、画像上明らかとなっていない変性疾患などのその他のパーキンソニズムとなります。

改善した場合、パーキンソン病となります。

 

尚、診断基準①、➁、③を満たし、④の薬物反応を未検討の症例は、パーキンソン病疑い症例となります。

 

まとめ

いくつか似たような言葉があるため混乱しやすいですが、まずは違いについて理解することが重要だと思います。

パーキンソン病、パーキンソン症候群以外にパーキンソニズムの言葉を区別し理解していきます。

そして、パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いは、パーキンソン病の診断基準に沿って判断します。

診断基準に当てはまらなければ除外し、パーキンソン症候群と鑑別することができます。

こうやって整理すれば、難しくありませんよね。

表にするとこんな感じです。

 

パーキンソン病 パーキンソン症候群
パーキンソニズムがある ある
パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露 ない ある
脳CTまたはMRIの特異的異常 ない ある
抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムの改善 する ない

 

ちなみにパーキンソン病のリハビリについて、知りたい方はこちらをご参照ください。

 

 

さらにパーキンソン病は薬によるコントロールも重要になってきますので、看護師さんなど他職種と協力してアセスメントしていくことが重要です。

似ているようで違いがあるので、今回の記事で少しでも理解していただければ幸いです。

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ABOUT US
稲葉 長彦理学療法士
石川県在住/PT/介護士として8年経験し、PTを目指し夜間学校に通い資格取得。千葉県の総合病院病棟で2年、診療所にて7年(整形外科外来)を経験。現在は訪問看護ステーションに勤務し、田舎での地域医療に貢献出来るよう 訪問でのリハビリを勉強中。