訪問看護では、利用者さんの性格や生活背景はさまざまで、特に「とにかくおしゃべりが止まらない利用者さん」に悩む看護師は少なくありません。
話が長くてケアが進まない、時間が押して次の訪問に影響する、話題が止まらず帰れない……など、在宅ならではの困りごともあります。
しかし、適切な対応方法を知っておけば、無理なくコミュニケーションをとりながらケアを円滑に進めることができます。
本記事では、訪問看護における“おしゃべりな利用者さん”への正しい向き合い方や、トラブルを防ぐためのコツを詳しく解説します。
目次
訪問看護で「おしゃべりな利用者さん」が多い理由
訪問看護の利用者さんは高齢者が中心で、孤独感や話し相手の不足から、訪問の時間を楽しみにしている方が多くいます。
特に一人暮らしの方は、訪問看護の時間が「唯一のコミュニケーションの場」になることも珍しくありません。
また、訪問看護では病院と違い、“生活の場”にお邪魔するため、利用者さんは気持ちがリラックスしやすく、自然とおしゃべりになる傾向があります。
おしゃべりは良いコミュニケーションの証でもありますが、ケア時間を圧迫することもあるため、適切な線引きが必要です。
おしゃべりな利用者さんの特徴とよくある悩み
会話が止まらず、話題が次々と広がる
「この間こんなことがあってね…」と話し始め、そこから話題が派生して延々と続くケースがあります。ケアが始められず、処置や記録の時間が押してしまうことが多い悩みの一つです。
時間を気にせずに話し続ける
訪問看護師のスケジュールを知らないため、「今日はまだ帰らないよね?」と当然のように話し相手を求められるケースがあります。他の利用者さんの訪問時間に影響してしまうことがあります。
会話を遮ると機嫌が悪くなる
話の腰を折ると「話を聞いてくれない」と感じる方もいます。機嫌を損ねるとサービスへの不満やクレームにつながる場合もあるため、対応に慎重さが求められます。
訪問看護で使える!おしゃべりな利用者さんへの対応方法
1.最初に「今日の流れ」を伝えて時間の枠を作る
訪問時に「今日は◯◯のケアをして、最後に記録を書いて◯時ごろに終わる予定です」と最初に伝えることで、自然と時間の枠が生まれます。利用者さんも「時間が決まっているんだ」と意識でき、話が長引くのを防ぎやすくなります。
2.適度に相槌を打ちながら、話が膨らみそうな時は“軽く方向修正”
利用者さんの話を無視するわけにはいきませんが、話題が広がりそうな時は
「お話し伺いながら◯◯のケアを進めますね」
「それは大変でしたね。ではこちらの処置もしながら伺いますね」
など、会話を続けつつケアに誘導するのがコツです。
3.話が長い方には“短めにまとめて返す”テクニックを使う
「そうだったんですね。それは嬉しかったですね」
「そうなんですね、なるほどです!」
と短く共感しながら返すと、会話が長時間続くのを防げます。逆に、こちらが長く返答すると、さらに話が広がってしまうため注意が必要です。
4.「ケアが終わったら少しだけお話ししましょう」と提案する
話を途中で切りにくい利用者さんには、
「まずケアをしっかり済ませてから、少しお話聞かせてくださいね」
と伝えるとスムーズです。主導権を取りつつ、相手の気持ちも尊重できます。
5.帰り際は“明るく・短く・きっぱり”と区切る
帰れないパターンが最も多いもの。そこで、帰り際には
「今日はここまでにしますね。また次回ゆっくりお話ししましょう!」
と明るい笑顔で区切ることが大切です。
言いにくい時でも、曖昧にしてしまうと余計に帰れなくなるため、短いフレーズを決めておくと便利です。
6.必要に応じて家族に協力を依頼する
独居・高齢の方の場合、家族が話し相手になれないケースも多いですが、必要に応じて家族へ状況を共有し「会話時間が長くなりやすいので、訪問時間の確保にご理解をいただきたい」と伝えておくとスムーズです。
7.ケアマネに情報共有し、チームで対応する
会話時間があまりにも長く、ケアに支障がある場合には、ケアマネへ共有することでチーム全体で対応方針を考えることができます。「訪問看護だけで抱え込まない」ことが大切です。
おしゃべりな利用者さんとの会話で意識したいポイント
相槌や共感は“短く・温かく”
長く相槌をすると話が広がります。短く温かい相槌が安全です。
否定しない・遮らない
話を遮らず、肯定か共感を基本に会話を進めると関係が崩れません。
視線をケアに向けつつ自然に作業を進める
手を動かしながら会話することで、“話し続けても良いけれどケアは進む”という空気を作れます。
利用者さんに「聞いてもらえた満足感」を残す
短い返しでも、
・笑顔
・うなずき
・相手の言葉を少し繰り返す
などをすると、満足感が高まります。
対応が難しい場合に考えたいこと
記録時間が圧迫されるならポータブル端末も活用
訪問記録を紙で書いていると、会話中に手が止まってしまうことがあります。タブレットやスマホ入力が認められている事業所なら、会話を聞きながら記録を進めることで時間調整が可能です。
訪問スケジュールを見直す
その利用者さんの前後に余裕のないスケジュールを組むとトラブルの元になります。必要に応じて訪問枠の調整を検討しましょう。
安全に支障がある場合はチームで方針を再検討
会話が多すぎてケアが不十分になる、生活背景が複雑で対応が難しいなどの場合、単独対応は危険です。ケアマネ・主治医・家族と連携して困りごとを共有しましょう。
まとめ|“おしゃべり=悪いこと”ではない。適切な対応でケアも円滑に!
おしゃべりな利用者さんは、決して悪いわけではありません。
むしろ、信頼しているからこそたくさん話してくれる場合もあります。
しかし、訪問看護は限られた時間の中で安全にケアを行う必要があるため、「話を聞きつつケアを進める技術」が求められます。
今回紹介した対応方法を実践すれば、利用者さんの満足度を下げずにスムーズに時間管理ができるようになります。


















