
訪問看護の看護師さんで、このような疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。
訪問看護において、訪問看護現場を守る「組織の盾」:カスタマーハラスメント対策の完全ガイドとなる標準的なプロセスをまとめました。
~「個人の我慢」を「組織の資産」に変えるための事例と解決策~
ぜひ参考にしてみてください!
目次
1. (施設内)訪問看護における「カスハラ」の現状と定義
訪問看護は、利用者さんの生活の場でケアを提供するという性質上、病院とは比較にならないほど「孤立」しやすい環境です。
2024年度の報酬改定により、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策が義務化されましたが、現場ではいまだに「疾患があるから仕方ない」などという献身的な精神が、スタッフを無意識に追い詰めている現実があります。
厚生労働省はカスハラを「顧客等からの言動であって、社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するもの」と整理しています。
私たちはまず、以下の「線引き」を組織全体で共有する必要があります。
■ 苦情とカスハラの決定的な違い
• 正当な苦情: ケアの内容、遅刻、マナー等への指摘。
• 目的:サービスの改善。
• 対応:誠実な謝罪と再発防止策の提示。
• カスタマーハラスメント: 人格否定(バカ、無能)、長時間の拘束(長電話、帰さない)、過剰な要求(契約外の作業)、威圧(机を叩く、怒鳴る)。
• 目的:感情の発散、不当な支配。
• 対応:毅然とした拒絶、組織による介入。
2. 現場で起きる事例と具体的な解決策
訪問看護の現場で直面しやすい2つのケースをもとに、解決の糸口を探ります。
ケースA:高齢者施設での高齢者ケアにおける「家族」からの精神的拘束
【状況】
K様の次男。言葉遣いは丁寧だが、一度電話がかかってくると30分〜1時間は終わらない。内容は「本当に母のためを思っているのか」「前の担当者はもっと柔軟だった」といった、担当者を否定するニュアンスが混ざる。
【解決策:タイムマネジメントと窓口の一元化】
これは「時間による拘束」というハラスメントです。
• 初期対応: スタッフ間で「15分」という目安を共有します。「この後、別の訪問予約が入っておりますので」と話を切り上げる台詞を事前に練習しておきます。
• クレーム担当者の介入: 話がループし始めたら、スタッフ個人の判断ではなく、施設の施設長・管理者(または担当者)が電話を代わり、「管理上のルールとして、長時間の電話対応は他のお客様の緊急対応に支障が出るため、書面や面談での対応に切り替えさせていただきます」と告げます。
ケースB:障害福祉における「本人」からの支配的言動
【状況】
精神疾患のある利用者。特定のスタッフを気に入り、訪問時間外に何度も事務所に電話をかけたり、訪問中に「お前がいないと死ぬ」等と激しい感情をぶつけたりする。
【解決策:チーム対応とバウンダリー(境界線)】
これは「依存による支配」です。
• 初期対応: 特定のスタッフに固定せず、必ず複数名によるローテーション体制へ移行します。
• 改善策: 背景にある疾患特性は理解しつつも、暴力・暴言・セクハラについては「容認しない」ことを契約時や更新時に明文化して提示します。「支援を守るためのルール」であることを丁寧に説明します。
3. 実践!ハラスメント対策研修プログラム
ここからは、事業所内研修でそのまま活用できるレジュメ形式の構成案です。
【研修テーマ】「個人の忍耐」を卒業し、チームで守る訪問看護
① なぜ今、対策が必要なのか(背景の共有)
• ハラスメント対策は「義務」である。
• スタッフが辞める最大の理由は「人間関係」、特に対利用者・家族とのトラブル。
• 「配慮」と「放置」を履き違えない。スタッフを守ることが、結果として利用者さんの安全を守ることに繋がる。
② 報告・共有の黄金ルール(実務編)
• その場で結論を出さない: 威圧的な要求には「組織のルールですので、施設長・管理者(担当者)に相談し、改めて回答します」と持ち帰ることを正解とする。
• 記録の客観性を高める: 「ひどいことを言われた」ではなく、「〇時〇分から〇分間、〇〇という発言があった」と5W1Hで記録する。
③ ワークショップ:次男様からの長電話への対応
• 課題: 怒鳴ってはいないが、30分以上終わらない電話。どう切り上げるか?
• 手順1(現場): 「K様への想いは承知しました。ただ、業務管理上、私の一存でお答えできる範囲を超えておりますので、一度、施設長・管理者(担当者)に報告させていただきます」と伝え、電話を切る。
• 手順2(担当者):施設長・管理者(担当者)が「担当の〇〇です。先ほどはスタッフの△△がお話を伺いましたが、改めて私から詳細を確認します」と介入する。
• 狙い: 「この事業所では、長時間の相談は管理者(担当者)が窓口になる」という姿勢を示す。
④施設長・管理者(担当者)の役割とは。
• 「現場で恐怖や違和感を感じたら、即座に報告していい」
• 「悪質な要求には、施設長(担当者)が直接対峙し、スタッフを一人にさせない」
• 「記録は、あなたを守るための最大の武器になる」
4.【ハラスメント・苦情に関する公的相談窓口】
【ハラスメント・苦情に関する公的相談窓口一覧】を以下にあげます。
1.自治体・介護保険・医療に関する窓口(利用者様・職員 双方用)
■ 各市区町村の「介護保険課」または「高齢者福祉課」
・連絡先:[※事業所が所在する自治体の電話番号を記入]
・対象:介護保険サービスに関する苦情、不適切なケア(虐待・ハラスメント)の通報・相談。
■ 地域包括支援センター
・連絡先:[※最寄りのセンター名と電話番号を記入]
・対象:高齢者虐待防止法に基づく通報、在宅介護におけるトラブル全般の相談。
■ 都道府県 国民健康保険団体連合会(国保連) 介護苦情処理窓口
・連絡先:[※都道府県の国保連の電話番号を記入]
・対象:介護サービスの苦情(事業者への指導・勧告権限を持つ公的機関です)。
2.労働環境・職場内ハラスメントに関する窓口(主に職員用)
■ 労働局 総合労働相談コーナー(厚生労働省)
・連絡先:[※管轄の労働局、または労働基準監督署の番号を記入]
・対象:職場内でのパワハラ、セクハラ、マタハラ、その他労働条件に関する相談。
■ 総合労働相談ダイヤル(全国共通・平日のみ)
・電話番号:0120-783-297(通話料無料)
3.犯罪・著しい人権侵害に関する窓口(緊急・深刻なケース)
■ 警察(緊急時は110番)
・連絡先:[※管轄の警察署の電話番号を記入]
・対象:利用者様や家族からの暴力・暴言・脅迫・セクハラ行為(ペイシェントハラスメント)等により、身の危険を感じる場合。
■ みんなの人権110番(法務省・平日のみ)
・電話番号:0570-003-110
・対象:差別やハラスメントなど、人権侵害に関する相談全般。
まとめ
☝︎管理者(担当者)の覚悟が現場の質を決める
管理者(担当者)が果たすべき最大の責任は、スタッフが「安心して玄関をノックできる環境」を作ることです。
カスハラが放置される職場には共通点があります。
それは、管理者(担当者)が報告を受けた際に「あなたの対応にも問題があったんじゃないの?」とスタッフを疑ってしまうことです。
これではスタッフは二度と相談せず、一人で抱え込み、やがて心が折れて現場を去ってしまいます。
管理者(担当者)が「何があってもスタッフを信じ、守る」という姿勢を明確にすること。
そして、「記録・報告・管理者介入」という手順を仕組み化すること。
「家族だから」「病気だから」という言葉を免罪符にせず、まずは自分たちの安全を確保しましょう。
スタッフの安全という土台があってこそ、初めて利用者様やその家族に寄り添う、温かい看護が生まれるのです。

訪問看護師の安全を最優先にし、事業所全体で「必ず守る」という姿勢を示すことは、孤立や離職を防ぐために極めて重要ですね。
また、ハラスメントを利用者さんの病気や家族の事情のせいにせず、報告・介入の仕組み化で現場を守る「盾」を作ることこそが、結果として安心して質の高いケアを提供できる土台にもなるんですね。
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カスタマーハラスメントは義務化されたけれど、実際にはどのように対応したら良いのかな。
現場としては、どんな事に注意する必要があるのかな?