精神科訪問看護に興味があっても、「危険なの?」「暴力リスクは?」「一人で訪問して大丈夫?」と不安を感じる看護師は少なくありません。
確かに精神科領域の訪問では、病状や環境によって危険が伴う可能性はゼロではありません。
しかし、精神科訪問看護が“危険な仕事”という認識は誤解も多く、適切な支援と予防策を取ることで安心して働くことができます。
本記事では、精神科訪問看護で起こり得るリスク、注意すべきポイント、そして安全に働くための対策を現場目線でわかりやすく解説します。
目次
精神科訪問看護は本当に危険なのか?
精神科訪問看護は一般の訪問看護と比べて「危険なのでは?」と思われがちですが、実際には安全に働ける環境が整っているステーションが多いのが現実です。
精神科訪問看護が“危険”と言われがちな理由
・利用者の症状が変化しやすい
・感情的になりやすい場面がある
・幻覚・妄想による行動変化の可能性
・物理的な暴力のリスク(頻度は非常に低い)
・家庭内トラブルに遭遇することがある
これらは精神科ならではの特性であり、危険につながる可能性もあります。
しかし実際の現場では、
「暴力事件に遭遇する頻度は極めて低い」
という声が圧倒的に多く、訪問前の情報共有やリスクアセスメントを徹底することで、安全性は十分確保できます。
精神科訪問看護で起こりやすい“危険につながる可能性”がある場面
① 症状悪化による興奮・不穏
統合失調症、双極性障害、アルコール依存症などの急性悪化時は、不穏や興奮が強くなることがあります。
② 幻覚・妄想による誤解や不信感
「監視されている」「攻撃される」という妄想が強い方は、看護師を警戒してしまう場合があります。
③ 家族トラブル・DV・家庭内暴力
利用者本人だけでなく、同居家族との関係性が原因でトラブルが起きやすいケースもあります。
④ 危険物が置かれている家
刃物が手の届く場所にある、部屋が極端に散乱しているなど、環境によるリスクも考えられます。
⑤ 依存や境界性課題による精神的負担
身体的な危険性よりも、「精神的に消耗する」「対応が難しい」という声も多いです。
精神科訪問看護師が訪問時に注意すべきポイント
① 「一人で判断しない」ことを徹底する
精神科訪問看護では、
・訪問前に情報共有
・訪問後に振り返り
・トラブル時は即管理者へ連絡
など、チームで支える仕組みが非常に重要です。
② 訪問前にリスクアセスメントを行う
訪問前に必ず以下を確認します:
・暴力歴の有無
・薬物・アルコール使用の有無
・急性期か安定期か
・家族構成や生活環境
・過去のトラブル内容
先にリスクを把握するほど安全性が高まります。
③ 訪問時は距離感を意識する
・出入り口を塞がない
・利用者との距離を保つ
・感情が高ぶっている際は無理に近づかない
といった基本動作は非常に重要です。
④ 否定しない・急がせない・急に話題を変えない
精神科訪問看護では、利用者の思考や行動を否定せず、落ち着いた姿勢でコミュニケーションを取ることが安全確保につながります。
⑤ 家庭内環境も“観察対象”
訪問先の散らかり具合、空気感、家族の態度などもリスクアセスメントにつながります。
精神科訪問看護で安全に働くための対策
① 単独訪問を避ける or 同行回数を増やす
症状が不安定な利用者、初訪問の利用者、暴力リスクがある利用者は、
・2名訪問
・管理者の同行
・安心できるまで同行回数を増やす
などの対策が一般的です。
② 緊急時の連絡ルールを明確にする
・どの状況で連絡するのか
・医師・ケアマネ・家族の関係性
・危険時の退避方法
など、ステーションごとに“安全マニュアル”があります。必ず共有しておきましょう。
③ 医師・関係機関と密に連携する
精神科訪問では、
・訪問診療医
・精神科医
・地域包括支援センター
・ケアマネ
との連携が欠かせません。
多職種で共有することで、危険場面が大きく減ります。
④ 早めの受診・薬調整を依頼する
興奮・不穏・睡眠悪化の兆候があれば、早めに医師に相談し、薬物治療を調整してもらうことでトラブルを未然に防げます。
⑤ 看護師自身のメンタルケアも重要
精神科訪問では感情労働が多く、
・相談
・スーパービジョン
・カンファレンス
が看護師の支えになります。
精神科訪問看護は危険よりも“やりがい”が大きい領域
精神科訪問看護は危険な面が話題になりやすいですが、実際には次のような魅力も非常に大きいです。
精神科訪問看護のやりがい
・利用者が少しずつ安定していく過程を見守れる
・家族の不安を軽減できる
・長期関係を築ける
・生活の中での変化に寄り添える
・感謝される場面が多い
「危険=やめたほうがいい」というわけではなく、
正しい知識+適切な対応+ステーションのサポート体制
によって、安心して働ける職場は多くあります。
まとめ:精神科訪問看護は“危険”よりも“対策”が重要
精神科訪問看護は、確かにリスクがゼロではありません。
しかし、
・訪問前のアセスメント
・二人体制の活用
・距離感を意識した対応
・多職種連携
・ステーションのサポート
これらをしっかり行うことで、安全に働くことができます。
精神科訪問看護は「危険だからやめておく」というより、
“安全な働き方を実現する仕組みがあるステーションを選ぶ”
ことが大切です。
精神科領域にやりがいを感じる看護師にとって、訪問は大きく成長できる魅力ある分野です。
不安がある方も、ぜひ見学や相談を重ねながら、自分に合うステーションを探してみてください。



















