訪問看護計画における目標設定のポイント

毎月発行する訪問看護計画書には、ケアの目標を記載する項目があります。

長期的な訪問看護利用になると、計画書の内容も画一的なものになりがちかもしれません。

しかし利用者さんにお渡しする書類になりますので、なるべく最新の情報を記載するように心がけたいところです。

今回は訪問看護計画における目標設定のポイントについて、生活を評価する専門家である作業療法士の視点から解説します。

 

訪問看護計画における目標設定のポイント

 

目標を決める際には「期間の定められた、具体的で達成可能な目標を定める」などのポイントがあります。

ポイントに完全に則った目標を決めることはなかなか大変ですが、ポイントを参考にした目標を心掛けるだけで、訪問看護目標や訪問看護計画の質が少しずつ変化します。

目標設定のポイントについて、SMARTと呼ばれる頭文字に沿って解説していきます。

 

Specific 具体的に

目標設定には具体性が必要です。

 

△ 一般的な目標

「着替えが一部自分でできるようになる」

 

◎ 具体的な目標

「上着を脱ぐことが、介助なく一人で出来るようになる」

 

このように、具体性を出した方が目標が達成できたどうかの判断もつけやすいです。

 

Measurable 測定可能な

目標は測定ができる内容が望ましいです。

 

△ 一般的な目標

「屋外歩行を早く歩けるようになる」

 

◎ 測定可能な目標

「自宅の前の横断歩道を〇秒で渡り切れるようになる」

 

数値で表される方が、目標の達成に向けた変化を捉えやすくなります。

 

Achievable 達成可能な

目標は達成可能である必要があります。

利用者さんの希望を鵜呑みにすることは避け、医療者の知識をもって予後予測を立てましょう。

 

△ 一般的な目標

「電車にのって一人で出かけられるようになりたい」

 

◎ 達成可能な目標

「自宅から最寄りのバス停まで一人で歩いていけるようになる」

 

利用者さんの身体機能、今後の生命等の予後、家族のマンパワーなどを総合的に判断した上で、現実的に達成可能な目標を考える必要があります。

 

Related 関連のある

「筋力を向上する」など生活に関連性のない目標を立てることは避けなければなりません。

 

△ 一般的な目標

「足の筋力を向上する」

 

◎ 関連性のある目標

「買い物に行けるようになるために、屋外歩行を自立する」

 

目標の中に5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)を入れることを意識すると、生活との関連性がでてきます。

 

Time bound 期間の決められた

目標には期間を定めましょう。

 

△ 一般的な目標

「(いつか)一人で近所のスーパーまで買い物に行けるようになる」

 

◎ 期間の決められた目標

「3か月後に、一人で近所のスーパーまで買い物に行けるようになる」

 

いつまでに何を達成するのかを具体的に定めることが必要です。

特に期間の設定は目標を決めることにおいて重要なポイントになります。

 

訪問看護における目標設定の注意点

 

目標設定を行う上での注意点を2つ紹介します。

 

完璧な目標にこだわらない

1つ目は「完璧な目標にこだわらない」ことです。

先ほどのポイントを押さえた目標設定ができれば素晴らしいですが、現実的には難しい場面もあります。

訪問看護に対する希望を利用者さんに聞いても「分からない」「お任せします」などの回答で終わることもあり、このような状況ではケアスタッフが考えたありきたりな目標設定になることも少なくありません。

しかし、このような状況でも焦らずに、まずは抽象的な目標でもいいのでケアを進めていきましょう。

時間と共に利用者さんとの関係性が築けてくれば「実は散歩がしたいんだよ」など、訪問看護目標に繋がる言葉がでてくるかもしれません。

ポイントはあくまで参考程度にして、完璧な訪問看護目標をはじめから目指す必要はありません。

 

目標が達成できないときもある

2つ目の注意点は「目標が達成できなかったときのことを考える」です。

具体的な目標設定のリスクとして、目標を達成できなかったときのショックがあります。

例えば『3か月後に歩行器を使用して一人で買い物に出かける』という目標を設定したとします。

しかし訪問看護を1-2か月利用しても、歩行の不安定性が強く、一人で買い物に出かける目途が立ちにくいこともあります。

もちろん丁寧なアセスメントを通して、必ず達成可能な目標を立てられることが理想ではあります。

しかし実際に訪問看護を利用していく中で、どうしても当初設定した目標を達成できない事態も避けることはできません。

このような状況で重要なのは、常に目標達成に向けた進捗を利用者さんと確認し、利用者さんの意向を小まめに確認することです。

訪問看護をはじめて3か月後に急に「目標を達成できませんでした」と通達するのと、1か月おきに「目標に対して今はどのように感じていますか?来月は目標に向けてどのようにケアをすすめましょうか?」と細かに確認していくのでは、目標を達成できなかった結果は同じでも受け止め方が異なります。

また目標に対して細かに振り返ることで、利用者さん自身が自分の体や生活を振り返る機会を作ることは、自己理解を促す意味でも有効だと考えられます。

 

まとめ

 

訪問看護計画における目標設定のポイントについて、解説させていただきました。

目標は利用者さんのやる気を持ち上げることもあれば、目標達成できず落ち込むこともあるなど諸刃の剣です。

しかし利用者さんと共に考えた目標を達成できたときの喜びはかけがえのない経験となります。

訪問看護への依存性を減らすことにも役立ちます。

先に述べた目標設定のポイントを参考にしつつ、利用者さんとの関係性を踏まえた、適切な訪問看護計画を立てていく上での参考になりますと幸いです。

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