訪問看護における緊急対応とは、どのような内容で出動するのか気になりますよね。
特に訪問看護師になったばかりの方、訪問看護への転職を考えている方は不安が多いことと思います。
そこで今回は訪問看護における緊急対応に関して解説いたします。
是非参考にしてみてください。
目次
訪問看護の緊急対応ってどんなものがあるの?
みなさんは訪問看護師がどのような内容で緊急対応していると思いますか?
意識レベル低下?呼吸停止?
もちろん上記の内容でオンコールが鳴り、出動することもありますが、非常に稀です。
なぜなら、意識レベルの低下や呼吸停止など明らかに緊急度が高い場合は、判断するまでもなく救急搬送を選択することになるからです。
では一体どんな内容で緊急対応しているのか、実際に筆者が対応した事例を元に解説いたします。
オンコールに関してはこちらも参考にしてください。
1.転倒
オンコールの内容において一番相談の多い内容かと思います。
本人に意識があり、頭等を強く打っていない、疼痛がない場合において、もし家族と同居していれば、家族にベッドまで運んでもらい経過を見てもらうよう話します。
しかしここ数年はそのような条件がそろっている場合が少なく、独居や老々介護の場合が多いので、状態確認のために緊急対応することが多いです。
実際筆者もよく転倒を繰り返してしまう老々介護のお宅に夜間帯訪問したことがあります。
また、朝方家族から電話があり、腰を強く打ったようで動けないとの電話をもらったこともあり、この場合は骨折の可能性が高いので、訪問せずにそのまま電話越しで救急搬送の依頼をしました。
事業所によっては電話越しで無事であることを確認し、そのまま動かさず、翌日対応にする所もありますが、基本的に上記のような条件が揃っていない場合は、看護師が訪問して状態確認すべきであると考えています。
2.点滴・カテーテル類のトラブル
医療依存度の高い事業所は比較的多い内容です。
またこのような内容に関しては、電話越しでの解決がほぼ不可能である場合が多いので、看護師の緊急対応は必須になります。
具体的に点滴関係(静脈・皮下、CVポート、ポンプ等)・カテーテル類(膀胱留置カテーテル、経管栄養等)の閉塞や漏れ、事故(自己)抜去が主な内容になります。
中にはイレウスチューブを挿入したまま在宅に戻られ、管理していた事例もありました。
こういった何かの管がついている利用者さんは、家族も含め不安が強いです。
日頃のケアを大切にすることはもちろんのこと、自らが慌てないためにも、トラブルが起きた際の対応方法、医療機関との連携は密に行っておきましょう。
3.疼痛
痛みについても非常に多い内容です。
疼痛と言っても、頭痛、腹痛、腰痛、四肢の痛み、癌性疼痛等さまざまな訴えがあり、緊急であるのか、ないのか判断することが求められます。
慢性的な痛みや、明らかに疼痛の原因がわかっている場合以外は、基本的に緊急性は高いと考えておきましょう。
上記の場合は大抵鎮痛剤を処方してもらっていることが多いので、内服し、経過観察してもらいます。
それ以外の疼痛はまず、痛みの程度・部位、どのような痛みか、いつからなのか等電話で確認します。
筆者も以前腹痛を訴える方の電話対応で、胃のあたりが痛いと訴えがあり、家に胃薬があったため、内服して経過を見てもらっていました。
しかし、全く収まらず、収まるどころか痛みが強くなっているとのことで、緊急訪問しました。
バイタルサイン異常なし、腹痛を訴えるような既往歴はなく、臥床しているよりも、座位の方が楽。
この方は脳出血の影響で構音障害があり、具体的に痛みの度合いを説明できない方でした。
触診にてただの胃痛ではないこと、独居ということもあり、救急搬送としました。
結果は胆石からの膵炎という診断でした。
痛みというのは人によって感じ方が異なり、表現もさまざまです。
特に高齢者、認知機能が低下している方の訴えは一貫性がないこともしばしばあります。
疼痛の原因となる疾患等、自分の知識の引き出しからいつでも探し出せるようにしておきましょう。
4.脳梗塞・脳出血
上記の内容に比べると数は少ないですが、脳卒中も緊急対応としては多い内容です。
家族がいれば「いつもと反応が違う」「おかしい」「手が動かない」などの内容で緊急訪問することはありますが、緊急で呼ばれるというより、訪問したら倒れていた、麻痺が出ていたというケースも少なくありません。
筆者も以前、いつも訪問すると声が聞こえるのに、その日は反応がなく、床に倒れていたというケースがありました。
幸い意識はあり、すぐに救急搬送となりました。
また家族より上記のような内容で電話があり、訪問すると明らかに顔面の片側が垂れ下がっており、麻痺がある状態で、こちらも救急搬送しました。
脳卒中、特に脳梗塞は発症からの時間が早ければ早いほど、後遺症を残すリスクを下げることができます。
すぐに対応できるよう、常にアンテナは張っておきましょう。
5.ターミナルケア(エンゼルケア含む)
訪問看護においてターミナルケア、特にがん末期対応は必須と言っても過言ではありません。
死への恐怖や、癌性疼痛と心身ともにケアが必要になり、オンコールの回数も必然的に多くなります。
疼痛が強い方、肺癌で呼吸苦が強い方、最期が近い方等全ての事例で、電話があれば緊急対応しました。
ただ訪問する。
それだけでも本人や家族はとても安心してくれます。
内服だけでは解決できない苦痛がたくさんあり、その苦痛を少しでも取り除くために私たち看護師がいると思っています。
反応が薄くなり、しだいに呼吸の間隔も長くなった方の家族からは、その日の夜間帯1時間おきに電話がきました。
呼吸が停止した連絡をもらい、すぐに医師へ連絡。
私もその足で訪問し、エンゼルケアを行いました。
在宅でのエンゼルケアは病棟とは違い、家族にも参加してもらい、きちんと最後のお別れができる機会であると思っています。
なかなかそのタイミングで同行を組むというのも難しいのが現状ですが、全員がきちんと対応できるようにしておくことをおすすめします。
経験の浅い訪問看護師さんだとこういった対応に不安も多いかとは思いますが、本人家族はその何倍、何十倍と不安が強いです。
冷静さを保つ訓練もしておきましょう。
6.その他
上記以外にも以下の対応もあります。
発熱
緊急対応することもありますが、まずは解熱剤を内服、なければクーリング対応にて経過観察することが多いです。
その他著明な症状がない場合、フォローの電話を入れ、医師へ繋ぎます。
発熱の場合は看護師が訪問するよりも、早めに医師の臨時往診に繋げる方が望ましいです。
精神科訪問看護
精神科の訪問看護の場合、24時間契約を取っている事業所は少ないかと思います。
依存や頻回のオンコールにも繋がり、日中であってもすぐに対応するというのは慎重に行わなければいけません。
不安になった際の対処法を一緒に考え、まずは自身で考えて行動してみることに重点を置いてケアしていきましょう。
ただ、本当に身体面での緊急性が高い場合もありますので、見極めも必要になります。
医療機器
人工呼吸器や在宅酸素を使用している場合、アラーム等で電話があることがあるようです。
ただ、こういった医療機器トラブルは生命に直結するため、緊急対応は極力避けなくてはいけません。
実際に筆者はこういった医療機器でのトラブルで呼ばれたことは一度もありません。
チェックリストを作成、緊急時対応マニュアル作成、災害用電源の確保、家族指導が必須になります。
また医療機器メーカーとの連携も密に取り、何かあった際にすぐに対応してもらえるようにしておくことも大切です。
以前在宅でもネーザルハイフローを使用して、高濃度の酸素投与をしていた方がいます。
在宅での症例があまりなかったため、筆者も電話で何回か聞いたり、実際に事業所に機器の勉強会をしに来てもらったりして対応しました。
訪問看護|焦らず緊急対応できるようになろう!
今回は訪問看護における緊急対応に関してご紹介しました。
在宅での緊急対応時は、看護師自身がある程度判断して解決しなくてはいけないことが多いです。
そのためにも日頃から準備をして、連携機関との連絡を密に取り、来るべき時に備える必要があります。
また訪問看護を始めたばかりのスタッフの不安を少しでも取り除くために、事業所内の風通しをよくし、相談しやすい環境にしていくことも重要です。
最初は不安ですが、経験しなくてはわからないこともたくさんあります。
是非今まで培った知識や技術を発揮してください!