精神科訪問看護におけるリハビリの内容はどんなものがあるか分かりやすく解説

 

精神科訪問看護のリハビリってどんな内容のものがあるの?

 

精神科訪問看護のリハビリでは、通常の訪問看護と違い、観察するポイントや提供するリハビリ内容に工夫が必要です。

では、どのようなリハビリが提供されるのでしょうか。

今回は、精神科訪問看護におけるリハビリの内容をご紹介します。

精神科訪問看護のリハビリに取り組もうとされている方は、ぜひ参考にしてください。

精神科訪問看護でできるリハビリとは?

 

 

精神科訪問看護でできるリハビリについて見ていく前に、そもそも精神科訪問看護とはどういったサービスなのでしょうか?

 

精神科訪問看護とは…

精神科訪問看護では、「在宅で生活を送る、精神疾患を抱える方」に対するサポートを行います。

通常の訪問看護と同様に、体調面に注意を払うことはもちろんですが、うつ病や統合失調症など、さまざまな精神疾患における知識や内服薬、関わり方に関する知識が必要です。

また、技術面では関わり方や傾聴技術に加え、在宅ならではの自宅環境や家族・周囲の人間関係における変化を察知する力が大切になります。

 

精神科訪問看護のリハビリは作業療法だけ!しかも制限あり…

精神科訪問看護の制度では、算定要件的にリハビリサービスが提供できるのは「作業療法士」だけです。

「理学療法士」「言語聴覚士」はサービスを提供できません

また、作業療法士の中でも精神科勤務1年以上、もしくは精神科訪問看護研修を履修していることが条件になります。算定要件はこちらを参照ください。

 

⑴ 精神科訪問看護基本療養費の算定可能な指定訪問看護ができる者 次のいずれかに該当する精神疾患を有する者に対する看護について相当の経験を有する保健師、看護師、准看護師又は作業療法士が指定訪問看護を行う必要が ある。

・ 精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟又は精神科外来に勤務した経験を1年以上有する者 

・ 精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有する者 

・ 精神保健福祉センター又は保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有する者 

・ 国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修を修了している者

引用:訪問看護療養費の取扱いの理解のために .P31

 

精神科訪問看護におけるリハビリ(作業療法)の役割とは?

 

では精神科訪問看護ではどんなことを目的としてリハビリ(作業療法)を提供するのでしょうか?

以下の4点を目的にリハビリを提供することが多いです。

 

  • 体調や精神症状の安定
  • 在宅生活の自立度向上
  • 対人関係の構築、円滑化
  • 社会復帰

 

ではひとつずつ、リハビリの役割についてみていきましょう。

 

体調や精神症状の安定

まずは在宅生活を安定して送るための土台づくりとして、体調や精神症状を安定させることが大切です。

からだの土台が崩れてしまうと、在宅生活が継続できず、本人らしい生活が送れません。

精神科訪問看護のリハビリでは、利用者さんの体調や精神症状を評価し、必要な助言やリハビリテーションを提供して体調・精神状態の安定化を図ります。

不安定な場合はお話を傾聴し、必要に応じて体調面や服薬状況などについて看護師と相談します。

 

在宅生活の自立度向上

リハビリが提供されるということは、精神疾患によって生活を送る上での障害を認める場合が多いです。

更衣・排泄・入浴といった日常生活動作(ADL)、調理・洗濯などの家事や服薬管理、外出などの手段的生活動作(IADL)の場面で、自立した生活が送れず介助が必要なことが多いです。

利用者さんが在宅生活を送る上で、介助を必要とする生活課題に対し、必要なスキルや能力を向上させ、自立もしくは安全・安心して生活できる様にリハビリを提供します。

 

対人関係の構築、円滑化

精神疾患を抱える方は、精神症状から周囲との関わりが希薄になる方が多いです。

在宅生活では社会とのつながりが大切になり、家族や周りの人とのつながりを持つために、対人関係を構築していく必要があります。

まずは看護、リハビリスタッフとの関わりをきっかけに周囲の人達との関わりを築いていきます。

 

社会復帰

精神科訪問看護の利用者さんが、セルフケアができる様になってきたら、社会復帰を目標に支援を行います。

買い物に出かける、病院を自分で受診するなどの社会活動、学業や仕事をするなどの役割活動などです。

社会活動における課題を分析してできる能力をサポートし、個人が満足できる様、社会復帰を目指します。

 

精神科訪問看護のリハビリ(作業療法)の内容とは?

 

病院とは大きくは違いはありませんが、在宅生活のためより利用者さんのプライベート空間でリハビリを行うことになります。

以下6項目に沿ってリハビリを提供することが多いです。

 

  • 本人と環境の評価
  • バイタルサイン、服薬状況の確認
  • 訴えの傾聴、面接
  • ADL、IADLの課題解決
  • 健康・体力維持のための軽い運動
  • 作業活動の提供

 

では具体的なリハビリ内容についてみていきましょう。

 

本人と環境の評価

定期的な週間スケジュールで訪問することが多く、その度に前回の支援と変化点がないか観察して評価します。

利用者さんの表情や声色の変化、身なり、体重の増減などから精神状態を評価します。

また無駄な買い物をしていないか、散らかっていないかなどの「自宅環境」、家族とのコミュニケーションが図れているかなど「家族」からの情報も重要です。

プライベートな空間なので、本人との関係性を評価した上で行います。

心に土足で踏み込む行為は厳禁です。

 

バイタルサイン、服薬状況の確認

訪問して最初に確認することが多いのが体調とバイタルサインです。

体温、脈拍、血圧、サチレーションなどを測定し、平常との違いにより処置が必要と判断した場合は、看護師に報告し受診に繋ぐなどの対応を取ります。

また服薬状況においても同様に、飲み忘れはないか、逆に飲み過ぎていないか、自己管理が適切に行えているかなどを確認します。

問題がある場合は看護師と相談をして服薬方法について一緒に検討をします。

 

訴えの傾聴、面接

本人とのコミュニケーションの中で出てくる不安や精神症状由来の発言に耳を傾けます。

利用者さんの訴えに対して共感をするだけでも、利用者さんの安心につながることがあります。

話しやすい環境を整えるために、その方が必要とする話の聞き方を心がけたいところです。

また、生活課題を分析したり、新たに目標を設定するときには、定期的に作業療法面接を行い、リハビリで取り組む目標について話し合うこともあります。

 

ADL、IADLの課題解決

リハビリ(作業療法)の依頼をいただくということは、日常生活を送る上での障害があると思われます。

意欲の低下や気分の変動により、規則的なセルフケアができないことが多く、また、精神科訪問看護でも身体的に障害を抱える方もいるため、食事、着替え、トイレの動作で介助が必要な部分に自立してセルフケアができる様にリハビリでサポートをします。

より複雑で難易度の高い家事活動や社会的活動においても課題を抱えることが多く、食事の準備や掃除方法の確認、金銭管理の方法について実際に作業を行いながら、課題を解決していきます。

 

健康・体力維持のための軽い運動

身体運動が少ないことも多く、より閉鎖的になりやすい方が多いです。

健康・体力維持のための散歩や体操を提案し、支援時間内に一緒に軽い運動に取り組みます。

外に一緒に出て空気を吸うだけでも、気分が晴れやかになることがあります。

徐々に利用者さん1人でも、軽い運動が継続できる様に働きかけていきます。

 

作業活動の提供

精神疾患を抱える方は、物事を順序立てて考える力が弱かったり、課題に取り組む集中力が低く、注意が分散しやすいことがあります。

手芸などの作品作りに加え、自宅だから取り組みやすい料理活動などを通して、作業工程のペースを一緒に考えたり、落ち着いた時間の過ごし方を評価していきます。

 

精神科訪問看護でリハビリの力を発揮しよう!

精神科訪問看護のリハビリ(作業療法)では利用者さんの精神症状を評価し、症状に合ったリハビリを提供しています。

利用者さんの症状はひとそれぞれ違い、微妙な違いに気づき、細やかなサービスが必要です。

1対1で関われる訪問看護という場で、リハビリの力を発揮しやすい環境といえるでしょう。

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