作業療法士が考える看護計画作成に役立つ情報収集方法

訪問看護計画を作るとき、その内容に悩むことはありませんか?

もしくは個々の利用者さんに合わせていない、同じような内容を計画に入れ続けてはいませんか?

これは悩ましい問題ですが、日々の訪問件数に追われる実情から考えると避けられない問題でもあります。

今回は作業療法士が考える看護計画作成に役立つ情報収集方法について、生活をみる専門家である作業療法士の視点から、おすすめの方法を具体例を用いて解説します。

 

訪問看護計画に必要な情報

訪問看護計画書を作成する際には、以下に効率よく情報を仕入れることが出来るかが重要になります。

限られた時間の訪問看護のケアでは、長い時間を使って情報収集をすることはできません。

効率よく、かつサービスを利用頂く方々の希望を掘り下げなくてはなりません。

まず訪問看護計画の作成に必要な情報を整理します。

抑えておくべきポイントとしては主に3つです。

 

  • 生活状況

初回訪問の際に、まず生活状況の確認を行います。

ここでいう生活状況とは、食事・睡眠・排泄に限った内容ではありません。

1日の中での起床時間と就寝時間。

その間に何をして過ごしているのかを時系列で把握してゆきます。

この情報を最初に抑えておくと、利用者さんの1日の生活のバランスを把握することができます。

利用者さんによっては、家事で忙しなく動いている方もいれば、訪問サービス以外の時間はテレビをみて過ごしている方もいます。

また訪問前後で外出の予定がある場合もございます。

この前情報があるかないかで、訪問看護計画における生活の立体像が変わると思います。

具体的な質問方法に関しては、後半で解説します。

 

  • 利用者さん、家族の希望

次に、利用者さんに訪問看護に対する希望をお聞きします。

この時に先ほどの生活状況を把握しておけると、利用者さんの希望と生活を紐づけ、より具体的な訪問看護計画に繋げることができます。

注意点としては「希望はありますか?」と質問すると、なかなか具体的な希望を引き出しにくい場面があります。

また利用者さんと家族で、訪問看護に対する希望が異なる場合もあります。

それぞれの注意点への対応は、後半で解説します。

 

  • 身体機能のアセスメント

言うまでもなく、訪問看護の中でアセスメントは重要な立ち位置になります。

利用者さんや家族の希望に対して、希望の実現が現実的に可能かの判断を行うには、アセスメントが不可欠です。

最初に身体機能のアセスメントから開始してもよいですが、前段階で生活状況や希望を把握しておけると、アセスメント内容を無駄なく効率的に選択することができます。

 

情報収集の具体的方法

先ほどのポイントの中から以下に関して具体例を用いて解説します。

  • 『生活状況』
  • 『利用者さん、家族の希望の情報収集』
  • 『希望を聞き取る際の注意点』

 

生活状況

1日の生活状況を、時系列に沿って質問してゆきます。

「朝何時に起きて、何時に寝ていますか?」「朝起きてから、まず最初に何をしますか?」

「食事は1日に何食食べますか?それぞれ何時ごろに食べますか?」「食事の用意はどなたがしていますか?」これを時系列に沿って確認します。

あまり細かく質問しすぎると、多大な時間要するため、最初にどの程度質問に時間をかけるかを決めておくとよいです。

また「今から○○分まで、Aさんの生活状況の質問に時間を使わせてください。今後のサービス提供のために必要な質問になります。」と利用者さんに予め伝えておくと、無理やり話を途切れさせることを予防することができます。

 

利用者さん、家族の希望の情報収集

「訪問看護に対して、何か希望はありますか?」と質問すると、口ごもる利用者さんがほとんどかと思います。

この現象は日本人の特性上無理もありません。

私たちは自分の希望を具体的に相手に伝える機会がなかなかないからです。

では、どのように希望を聞いていけばよいのでしょうか?

ここで重要なポイントはヒントを提示することです。

例えば「いま何かやりたいことはありますか?」と今すぐ聞かれたときに、スラスラと答えることが出来る人は少ないと思います。

しかし「次の休日に、やりたいことはありますか?」と質問すると、先ほどよりも答えがイメージしやすいと思います。

このように話題が広い質問(オープンクエスチョン)から、徐々に話題を絞った質問に切り替えてゆくと、回答の具体性が引き出しやすくなります。

具体的な質問方法としては、先ほどの生活状況の質問と組み合わせます。

生活状況の質問を一通りした後に「いまの生活についてお聞きしましたが、この中で困っていることはありますか?」などの質問で情報を掘り下げてゆきます。

この他に、利用者さんの希望を引き出すために、作業療法士はいくつかのツール(補助道具)を使用することがあります。

生活状況の中から希望を引き出すときはADOCと呼ばれる生活場面のリストが使用できます。

ネットに公開されている無料版ですと、49項目のリストが開示されています。

リストから気になる場面を選んで頂き、その情報を掘り下げてゆきます。

ほかに趣味活動について掘り下げたい場合は、興味関心チェックシートを使用します。

こちらは日本作業療法士協会から発行されている、46項目の興味を調べるアンケートになります。

先ほどのADOCよりも趣味活動の項目が多くなっています。

どちらも無料で公開されているため、お近くの作業療法士に相談しながらお試しすることをおすすめします。

 

希望を聞き取るときの注意点

家族から希望を聞き取る際にも注意が必要です。

それは利用者さんと家族の希望が必ずしも一致しないということです。

よくある構図としては『リスクなどを気にせず好きに過ごしたい利用者さん』と『転倒などの危険性から、あまり好きに動いて欲しくない家族』の対立構造です。

このような状況であれば、それぞれが同席している中で希望を聞くことは、心の中で思っている本当の希望を聞き取りない可能性があります。

まず利用者さん、家族同席の上で希望を聴取した後に、のちのタイミングでそれぞれに改めて希望を確認しておくことをおすすめします。

またケアマネジャーの意向も事前に確認しておくことをおすすめします。

いくら訪問看護スタッフだけが意欲を持ってケアに取り組んでも、ケアマネジャーのケアプランに沿った内容までしか提供できません。

事前にケアマネジャーの意向を確認しておき、訪問看護計画作成後に方針確認まで行えると親切かと思います。

 

まとめ

作業療法士が考える看護計画作成に役立つ情報収集方法について記載させていただきました。

忙しい業務の中で、細かな訪問看護計画まで考えることは労力が必要になります。

もしも同じ職場に作業療法士がおりましたら、訪問看護計画の一工夫を、「生活」の視点から一緒に考えることができるかもしれません。

ぜひ一度、声をかけてみてください。

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