精神科訪問看護は身体を看る時と異なり、状態が目に見えないことが多いため、精神科訪問看護ならではのポイントを抑える必要があります。
今回は精神科訪問看護を始めたばかりの看護師さんに、精神科訪問看護に関わる上で大切なことを5つご紹介します。
精神科訪問看護に興味のある看護師さんもぜひ参考にしてください。
目次
精神科訪問看護に関わる上で大切なこと5つとは?
訪問看護の中でも専門性が問われる精神科領域。
最近では精神科に特化した訪問看護ステーションも増えてきました。
ほとんどの看護師さんが、このような不安を抱くことが多いと思います。
そんな不安を少しでも解消すべく、以下のことを大切にする必要があります。
- 情報収集をする
- 話しやすい環境作りをする
- 傾聴する
- 距離を取る
- 一人で抱え込まない(拒否されても気にしない)
順番に解説します。
1.情報収集をする
日頃看護師として従事していれば、「情報収集なんて当然では?」と感じることと思います。
利用者さんの疾患はもちろんのこと、年齢、性別、社会的背景等の情報をとり看護計画に反映させていきます。
この情報収集が精神科領域には一番大切と言っても過言ではありません。
なぜなら精神疾患の方は、これらの情報が症状に大きく影響しやすいからです。
たとえ同じ疾患や年齢、性別であっても、住んでいる環境が違えばアプローチの仕方が変わってきます。
また状態変化にいち早く気づくこともできます。
目に見えにくい分、細かく、適切に情報収集していきましょう。
同居している家族がいれば、毎度情報を取ることも大切です。
2.話しやすい環境作りをする
上記のように、いざ情報収集をするとなった場合、話しやすい環境作りに配慮することも大切です。
精神疾患の方は心を閉ざす傾向にある人も少なくありません。
家庭環境が状態に大きく影響していることも多いので、必要によっては家の中ではなく、近所の公園やカフェ等で話すことも選択肢の一つです。
筆者も以前、家族に聞かれたくない、家を見られたくないとの理由で近所の公園のベンチで話していたこともあります。
母親との関係性に問題があったケースでは訪問時に退室してもらう対応をとっていました。
このように必要に応じて、話す環境を整えることも大切です。
3.傾聴する
話しやすい環境作りをしたら、今度は話してもらえるよう、信頼関係を構築することがとても大切です。
利用者さんにとって私たち看護師は敵ではなく味方であり、自身をさらけ出してもいいと思ってもらえるよう、まず話を聞く姿勢や、話しやすい問いかけをしてみましょう。
時には非言語的コミュニケーションとして、タッチング等も試してみるとよいかもしれません。
ただ相手の話を聞くことだけではなく、表情や仕草から相手の気持ちを読み取ることも『傾聴』のひとつではないかと思います。
4.距離を取る
信頼関係を構築し、話をしてもらえるようになったら、しっかりと距離を取ることも大切です。
ここで言う距離とは、心と身体の両方です。
精神疾患の方は、感情のコントロールが難しく、話し過ぎてしまうことで、より症状が重くなってしまうケースもあります。
例えば、双極性障害の方が躁状態に傾いてしまい、過活動や不眠などの症状が出てきてしまう場合です。
話す時間を決めて、続きは次回にするという関わりをしていくとよいでしょう。
また、看護師への『依存』にも気を付けなければいけません。
基本的に精神科訪問看護はその方の自立を支援する目的で訪問しています。
看護師がいないと生きていけない、同じ看護師でないと訪問してもらいたくない等の感情が出てしまうのは避けなくてはいけません。
必死に信頼関係を作ろうとして、気づかぬうちに『共依存』に陥ってしまうケースも少なくありません。上記の項目でタッチングの話をしました。
触れるという行為は、心と身体の距離を一気に縮めることができますが、同時にその距離を離すことが難しいというデメリットもあります。
常に客観的に相手と自分をみることがとても大切です。
5.一人で抱え込まない(拒否されても気にしない)
情報収集からコミュニケーションまで話してきましたが、上記のようにうまくいくことの方が少ないと思います。
特に精神疾患の方は感情をそのまま表に出すことが多いので、訪問している看護師にも精神的な負担が大きいのは事実です。
経験の浅い看護師さんだと、うまくいかないのは自分の能力の問題と感じ、抱え込んでしまう人が多い傾向にあります。
決して、そのようなことはありません。
精神科領域は相性やタイミングが大きく影響しており、どんな対策をとってもうまくいかないケースは多々あります。
そのような場合は無理せず、他の看護師さんに訪問してもらいましょう。
また、事業所単位ではカンファレンス等で利用者さんの情報を共有し、訪問している看護師さん自身のケア、悩みを吐き出せる場を作っていくことが重要です。
うまくいかない理由の一つとして、症状が悪化している可能性もありますので、連携先の医療機関、ケアマネージャー、保健師さん等にも常に情報を共有していくことも大切です。
まとめ
今回は精神科訪問看護に関わる上で大切なことを5つご紹介しました。
専門性が問われる精神科領域。最初は全てが不安であることと思います。
上記でも話したように、常に周りに相談して、一人で抱え込まないようにしましょう。
回を重ねるごとに必ず慣れてきます。
その中であなたにしかできない看護があり、その看護を必要としている方がいます。
自分自身を認め、あなたらしく看護していっていただければと思います。