訪問看護における理学療法士との連携!看護職員が押さえておきたい実践ポイントとは?

訪問看護ステーションでリハビリ職を採用したいと思います。リハビリを中心としたサービスには看護師のモニタリングが必要とされていますが、モニタリングの内容やリハビリ職との連携をどうすればいいのか教えてもらえませんか?

訪問看護ステーションには、看護師だけでなく理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)など多職種が在籍し、利用者の在宅療養を支えています。

在宅での生活機能維持・向上を支えるうえで欠かせない存在であり、経営を安定させるためにも必要です。

一方で現場では、「看護とリハビリの役割分担が曖昧」「理学療法士と十分に情報共有できていない」「リハビリがマンネリ化している」といった声も少なくありません。

とくに訪問看護におけるリハビリテーションは、単独のサービスではなく看護業務の一環として提供されるものであり、両者の連携の質がそのままサービスの質に直結します。

本記事では、制度上の位置づけを整理したうえで、看護職員と理学療法士等がどのように連携していけばいいのか、看護職員による評価(モニタリング)についての考え方を解説していきます。

 

訪問看護におけるリハビリテーションの基本的な考え方

訪問看護では、単に身体機能の改善を目指すだけでなく、利用者がどのような生活を送りたいかという視点が重要です。

そのためには、「心身の機能」「活動」「参加」の各要素にバランスよく働きかけることが求められます。

看護職員は、健康状態や病状、生活環境、家族状況などを包括的にアセスメントし、療養生活の継続を支援します。

一方、理学療法士等は身体機能やADL、住環境・福祉用具などを専門的に評価し、生活動作の改善や環境調整を行います。

両者が連携することで、利用者の生活機能の維持・向上をより効果的に実現することができます。

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理学療法士等による訪問看護の位置づけ

 

訪問看護ステーションにおいて、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問は、看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心とした訪問として位置づけられています。
つまり、看護職員の訪問を代替する形で行われるものです。

主なポイントは以下のとおりです。

  • 理学療法士等による訪問は、1回20分以上実施する
  • 一人の利用者につき、週6回を限度として算定する
  • 医療機関に従事する理学療法士等による訪問は、指定居宅サービスの訪問看護には含まれない
  • 言語聴覚士の訪問で提供できる内容は、該当する診療の補助行為(言語聴覚士法第四十二条第一項)に限られる

このように、理学療法士等の訪問は独立したサービスではなく、訪問看護の一環であることを、看護職員・リハビリ職双方が共通認識として持つことが重要です。

理学療法士等の訪問については、利用者に訪問看護の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合、看護職員の代わりに行う訪問であることを説明して同意を得ることが必要です。

同意の確認方法としては、訪問看護記録への記載、訪問看護計画書や重要事項説明書への明記をおこない、同意を得た場合は署名をもらっておきます。

 

看護職員の視点と理学療法士等の視点

看護職員の視点

看護職員は、利用者の病状や予後予測を踏まえ、合併症の予防や状態悪化の早期発見を意識したアセスメントを行います。

苦痛症状の有無だけでなく、生活上の支障、医療的ケアの必要性、家族関係や介護力なども含めて評価し、利用者が持つ力を最大限に発揮できるよう支援します。

また、リハビリテーションが必要かどうか、どのような内容が適切かを、予防的な視点から判断することも看護職員の重要な役割です。

理学療法士等の視点

理学療法士等は、身体・精神機能、ADL、住環境や福祉用具などを専門的に評価します。

理学療法士は基本動作、作業療法士は応用的動作や社会適応能力、言語聴覚士は音声・言語・嚥下・聴覚機能を中心に支援を行います。

利用者の状態に応じた訓練だけでなく、環境調整や動作指導を通じて、日常生活全体の質を高める役割が期待されています。

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看護職員と理学療法士等が連携することによる効果

 

利用者への効果
  • ADLの維持・改善
  • QOLの維持・向上
  • 生活習慣や生活リズムの維持
サービスの質への効果
  • 利用者・家族のニーズに沿った目標設定が可能
  • 心身機能に応じた段階的なリハビリテーションの提供
  • ターミナル期のリハビリや心臓リハビリテーションの継続など、専門性を活かした支援

連携が取れていることで、リハビリの効果を最大限に引き出し、看護の視点から安全性や生活全体への影響を評価することができます。

リハビリテーションを中心とした訪問看護の進め方

リハビリを中心とした訪問看護の依頼があった場合、まず看護職員が看護の視点でリハビリテーションのニーズを把握します。

苦痛症状だけでなく、生活上の支障、状態悪化の予防、家族関係の調整などを含めてアセスメントします。

その後、看護職員と理学療法士等が連携し、廃用性症候群の予防や住宅改修・福祉用具の必要性について検討します。

訪問看護開始時には、原則として看護職員が訪問し、利用者の心身状態を評価することが重要です。

主治医の指示内容の変更や利用者・家族の状況変化に応じて、概ね月1回程度は看護職員が訪問し、状態評価(モニタリング)を行います。

※看護職員による状態評価(モニタリング)は、サービス提供として算定するかどうかは訪問看護ステーションで決めておきます。

目標共有と計画書作成のポイント

利用者が「どのような生活を送りたいか」を、利用者・家族・主治医・ケアマネジャーと共有し、その目標に沿って訪問看護サービスの内容や頻度を検討します。

訪問看護のリハビリテーションは漫然と継続するものではなく、明確な目標に向けた取り組みであることを説明し、利用者・家族の同意を得ることが大切です。

計画書は看護職員と理学療法士等が共同で作成し、ケアマネジャーへ情報提供します。

専門領域にとどまらず、利用者のニーズに合わせた支援内容を検討する姿勢が求められます。

情報共有と定期的な評価の重要性

日常的な情報共有に加え、定期的な合同カンファレンスを実施し、利用者の心身状態や生活状況の変化に対応します。

理学療法士等は訪問時の状態を担当看護職員に報告し、看護職員と連携して概ねひと月~3か月ごとの定期評価(モニタリング)を行います。

訪問看護報告書の作成時は、現状の課題や解決策を明確にし、目標の再確認・再構築につなげることが重要です。

利用者ごとのモニタリング書式を作成し、双方の評価を共有することも有効です。

看護の視点で理学療法士等に伝えておきたい観察ポイント

理学療法士等に、以下のような状態や変化があった場合は、速やかに報告してもらうよう共有しておきましょう。

  • 病状やバイタルサインの変化
  • 服薬状況の変化や服薬できなかった場合
  • 脱水や浮腫など全身状態の変化
  • 精神的変化や意欲低下
  • 転倒の発生
  • 介護力の低下や家族状況の変化

報告を受けた看護職員は必要に応じて訪問し、主治医やケアマネジャーと連携しながら対応します。

事業所間・管理者同士の連携

他の訪問看護事業所の理学療法士等が関わる場合もあります。

その場合は、観察すべき状態や連絡方法を事前に取り決め、密な連携を図ることが重要です。

担当者同士だけでなく、管理者同士も連携し、訪問看護として一体的なサービス提供ができているか確認しましょう。

理学療法士との連携チェックリスト(訪問看護師向け)

以下のチェックリストは、訪問看護における理学療法士との連携状況を振り返り、改善点を見つけるためのものです。

新規利用開始時、定期評価時、連携に迷いを感じたときに活用してください。

① 制度・位置づけの理解
□ 理学療法士等の訪問が「訪問看護の一環」であることを双方で共有できている
□ 訪問回数・時間・算定要件について看護職員が把握している
□ 利用者・家族に対し、看護とリハビリの関係性を説明できている
② 利用開始時・計画立案時の連携
□ 初回は看護職員が訪問し、全身状態・生活状況を評価している
□ 看護の視点からリハビリテーションのニーズを整理している
□ 利用者・家族・ケアマネジャーと目標を共有できている
□ 訪問看護計画書を看護職員と理学療法士が共同で作成している
□ 理学療法士等の訪問について、文書で同意を得ている
③ 日常的な情報共有
□ 理学療法士から、訪問時の利用者の状態が定期的に報告されている
□ 病状変化・バイタル変化・転倒などの報告タイミングが明確になっている
□ 情報共有の手段(記録・口頭・ICTなど)が事業所内で統一されている
④ 看護の視点で特に確認したいポイント
□ バイタルサインや全身状態の変化が共有されている
□ 服薬状況や脱水・浮腫などの兆候が報告されている
□ 精神面の変化や意欲低下に気づけている
□ 転倒が発生した場合は検討できている
□ 介護力や家族状況の変化がケアマネジャーにも共有されている
⑤ 定期評価・カンファレンス
□ 月1回または3か月ごとの定期評価を実施している
□ 身体機能・ADL・生活状況を多職種で振り返っている
□ 評価結果をもとに目標や計画を見直している
□ 訪問看護報告書でケアマネジャーに評価を伝えている
⑥ 事業所・管理者としての連携体制
□ 管理者同士が連携し、サービス内容を把握できている
□ 他事業所の理学療法士等とも連絡方法を事前に決めている
□ 「理学療法士中心でよいのか」「看護訪問が必要か」を定期的に検討している

連携がうまくいっている点・見直すべき点を可視化することで、訪問看護として一体的なサービス提供につなげていきましょう。

 

まとめ


訪問看護における理学療法士等との連携は、「リハビリをお願いする」「情報を共有する」といった表面的な協働にとどまるものではありません。

看護職員が持つ包括的な視点と、理学療法士等の専門的な評価・訓練を結びつけることで、利用者の生活そのものを支える訪問看護が実現します。

制度上、理学療法士等による訪問は訪問看護の一環として位置づけられているからこそ、計画・同意・評価・報告のすべての場面で、看護職員が主体的に関わることが重要です。

同時に、理学療法士等が安心して専門性を発揮できる環境づくりも、管理者や担当看護職員の大切な役割といえるでしょう。

日々の情報共有や定期的なカンファレンスを通じて、「今の目標は何か」「この支援は生活につながっているか」を確認し続けることが、訪問看護の質の向上につながります。

訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることが解決できるような記事の作成を心がけています。

本記事が、看護職員と理学療法士等のより良い連携を考える一助となれば幸いです。

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