訪問看護でよくあるハラスメント(利用者さんと家族による)について解説

 

悩む看護師

訪問看護中に遭遇するハラスメントって実際にどんなことがあるのかな?

対応策ってあるのかな…。

 

看護師さんで、このような疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。

訪問看護ステーションでのハラスメントは法定研修にも入っているように重要な内容です。

以下に、訪問看護における利用者さんや家族からのハラスメントとして実際に直面しやすい事例を含め、理解しやすい形で整理しました。

今後の研修内容を検討している管理者さんや看護師さんは、ぜひ参考にしてみてください!

 

言葉によるハラスメントの事例

 

事例1 前の看護師さんを呼んで

  • 場面:新人看護師が初めて訪問した日
  • 発言(利用者さんの家族):
    「この人、新人? 前の看護師さんを呼んで。下手に点滴されたら困るのよ」
  • 看護師の反応:
    丁寧に自己紹介し、「本日担当いたします○○です。精一杯、ケアさせて頂きます」と説明するも、会話の途中で遮られた。
  • 影響:
    強いプレッシャーと自信喪失。以降の訪問で過度に緊張し、処置に支障が出た。

 

身体的・性的ハラスメントの事例

 

事例2 性的な冗談を繰り返す
  • 場面:マッサージ中の接触
  • 発言(男性利用者):女性看護師に「一人暮らしだから、マッサージついでに風呂にも入ってくれよ」など性的な冗談を繰り返す。腰や太ももなどを触ろうとする動作もあり。
  • 看護師の反応:「医療行為に集中させてください」と伝えるも、笑いながら再度同様の発言が続いた。
  • 影響:心理的苦痛。同じ利用者の訪問に不安を抱えるようになった。

 

精神的ハラスメントの事例

 

事例3 無視と冷淡な態度

  • 場面:新人看護師が訪問する日
  • 発言(利用者の家族):

    訪問時にあいさつしても無視される。話しかけても返事がなく、必要なケア説明にも応じない。

  • 看護師の反応:
    「本日担当いたします○○です、不安なことがあれば仰ってくださいね」と丁寧に説明したが、無視され続けた。
  • 影響:
    強いプレッシャーと自信喪失。以降の訪問で過度に緊張し、処置に支障が出た。

 

業務外要求・支配行動の事例

 

事例4「ついでに買い物してきてよ」

  • 場面:訪問終了時、玄関先で
  • 発言(利用者の家族):
    「お昼にコンビニに行くんでしょ? 牛乳も買ってきてくれたら助かるんだけど。帰りに持ってきて。ついでだからいいでしょ?」
  • 看護師の反応:
    「医療保険の訪問看護の範囲外になりますので…」と丁寧に断るが、不機嫌になられる。
  • 影響:
    対応に悩み、次回の訪問でまた同様のお願いをされる。断ることで関係性悪化を恐れるようになる。

 

対応の基本姿勢について

以下に、訪問看護師が現場でハラスメントに直面した際の「対応の基本姿勢」の具体例を、5つの視点に分けて詳しくご紹介します。

各項目には実際の対応方法や声かけ例も記載しています。

 

● 1 記録の書き方
  • 日時、訪問時間、訪問者の名前を明記
  • ハラスメントの内容は主観を避けて客観的に記載

記載例

「7月17日 10:00〜10:30 清拭介助中、「そんなやり方でいいのか?」と強い口調で複数回指摘あり。11:15、終了時に「次はもっと気の利いた看護師を寄越せ」と発言」

  • 可能なら証言者(同行者や家族)の有無も記載する

 

● 2 申し送りや報告の方法
  • カンファレンスやLINEグループなどで以下を共有:
    「〇〇様宅で、前回の訪問中に暴言あり。今後は2人訪問を検討」
  • 管理者や主治医、ケアマネジャーに報告し、対応の方向性を協議
  • 担当変更の提案や、医師・ケアマネとの三者面談設定を検討

ハラスメントは「個人の我慢」ではなく「チームで対応」する姿勢を明確にします。

 

● 3 対応方針・マニュアル内容

以下のような対応基準をマニュアルに記載

  • 暴力・性的嫌がらせ:原則、管理者判断で訪問中止も可
  •  暴言や罵倒が継続:2回目以降はケアマネ・医師と連携して担当者交代
  • プライバシー侵害(撮影等):その場で中止を申し出て退出も可

利用者・家族への説明

  • 「〇〇様との信頼関係を築くためにも、スタッフに安心して業務を行ってもらう必要があります。〇〇のような行為があった場合、訪問の継続が難しくなる可能性があります」
  • 「スタッフの安全確保のため、今後は2名体制での訪問とさせていただきます」

あらかじめルールを明示し、継続困難な場合の基準を設けておくことが予防にもつながります。

 

● 4 連携内容

•医師へ:認知症や精神疾患の可能性がある場合、診断・服薬の見直しを依頼

•ケアマネへ:サービス担当者会議を開催し、訪問の継続可否や対応方法を相談

•地域包括支援センターへ:家庭内の虐待や困難事例として支援を依頼する場合も

看護師だけで抱えず、医師・ケアマネなど他職種と共同で対応策を検討するのが基本です。

 

● 5 本人・家族への伝え方(ソフトで毅然とした言葉)
  • 「申し訳ありませんが、医療行為と直接関係のないご依頼にはお応えできかねます」
  • 「〇〇のようなお言葉をいただきますと、安全な医療の提供が難しくなってしまいます」
  • 「安心してサービスを継続するために、今後の訪問方法について事業所内で検討いたします」

毅然とした態度で、感情的にならずに線引きを行うことが大切です。

言いにくい場合は「所属事業所のルール」や「組織としての方針」を理由にすると、個人への反発を回避しやすいです。

 

訪問看護におけるハラスメントQ&A

 

Q

スタッフ向けパワハラ対応スキル研修はどんなものがありますか?

A
  • ハラスメント対応ロールプレイ研修
  • 境界線(バウンダリー)の引き方
  • アンガーマネジメント講座
  • 心理的セルフケア(ストレスコーピング法)

 

などを研修に入れるといざという時に役立ちますね。

 

Q

いざという時はどこに連絡をすると良いですか?

A
【所属法人・事業所内の相談窓口】

● 管理者・責任者

まずは直属の上司や管理者に報告・相談。

記録と合わせて報告し、対応策(訪問中止・交代・同行など)を早期に検討する。

● 法人内のコンプライアンス担当・人事部(ある場合)

ハラスメントを含む労務問題全般を扱う。

個人の判断で抱え込まず、組織として対応を依頼。

【 地域の公的相談窓口】

● 地域包括支援センター

高齢者虐待や困難事例の地域連携の窓口

家族による支配的態度や虐待が疑われるケースで活用。

連絡先は自治体HPや地域の福祉課に記載

● 市町村の介護保険課・高齢福祉課

利用者との契約や制度運用に関する相談が可能、

「サービスの限度を超える要求」「不当なクレーム」なども相談対象

【 医療・福祉従事者向けの専門相談窓口】

● 都道府県ナースセンター(公益社団法人日本看護協会)

看護職の悩み・ハラスメント相談に応じる窓口あり

匿名相談も可能で、必要に応じて労働局や弁護士につなぐ

例)愛知県ナースセンター相談窓口:
https://www.aichi-kango.or.jp/nursecenter/

【いざという時の緊急窓口】

● 警察(110番)

暴力・身体接触・ストーカー・器物破損など、刑事的対応が必要な場合は迷わず通報

「110番はためらう」というケースも多いですが、「業務中の安全確保のため」として正当です

● 地域警察署の生活安全課

直接の危険はないが、不安な訪問先についての相談が可能

看護師個人へのつきまとい、不審な接触なども相談対象

【医療安全・介護サービスの第三者窓口】

● 国民健康保険団体連合会(国保連)

利用者からのクレームやトラブルについての介護報酬請求上の相談も可

● 福祉サービス第三者評価機関(都道府県ごと)

サービス利用者からの不当な訴えや評価への対処を協議できる場合もあり

 

いざという時に相談できる窓口はたくさんあります。

 

まとめ

 

訪問看護におけるハラスメントは、看護師の心身に深刻な影響を与える問題です。

暴言・暴力・過剰な要求などには、記録・共有・組織的対応が不可欠です。

迷わず管理者や公的機関へ相談し、チームで安全を守る姿勢が大切です。

 

先輩訪問看護師

事業所内に一覧フォーマットを備えておき、直ぐに対応できる体制にしておくと安心ですね 

 

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