「時間がかかる」「何を書けばいいかわからない」「書く量が膨大」…そのような悩みを抱えている方は多いはず。
訪問看護記録は、ただの業務報告ではありません。
記録の目的や意味を理解することで、無駄なく・必要なことを的確に記録できるようになり、業務の効率化につながります。
今回は、日々の訪問時の記録「訪問看護記録Ⅱ」に焦点を当て、効率的な記録のコツをお伝えします。
目次
訪問看護記録Ⅱの「5つの目的」を押さえる
訪問ごとに記録する「訪問看護記録Ⅱ」には、次の5つの大切な意味があります。
- 訪問した事実としての記録(事実の証明)
- 社内情報共有のための記録
- 看護の質評価と向上のための記録
- サービス請求の根拠としての記録
- トラブル時の法的証拠としての記録
この「5つの目的」に沿っていない記録は不要といえます。
闇雲に長く書く必要もありません。
中には、あれもこれも書いておくと安心いった理由で日記のように書かなければと思ってしまうのではないでしょうか。
私も訪問看護師になった頃は、ひたすら書けばいいと書いていました。
記録の質を上げるには、事業所全体で「何を書くべきか」の基準を決めることが、業務の効率化となります。
記録は「SOAP」で整理し、必要なことだけを書く
訪問看護記録Ⅱは、情報を整理しやすい「SOAP形式」で書くのが効果的です。
「SOAP形式」で経過記録を書く場合には、何について書く記録なのかで記録の書き方がちがってきます。
特に、以下の3つの視点で記録内容を分けると、次に見る人にもわかりやすくなります。
① 看護計画に基づく介入記録
目的は、目標の達成度合いの記録です。
アセスメントの視点は、看護計画立案に対しての成功・失敗の要因について評価を行います。
計画の継続・修正・終了の判断材料としての介入記録となります。
② 計画外のケアの記録・病状観察記録
目的は、訪問時の家族からの情報、ご本人からの情報、バイタルサイン測定、フィジカルアセスメント(身体審査)から、計画外のケアが必要な時の記録です。
アセスメントの視点は、ケア内容・方法・タイミングの適切性または、病状が維持・改善・悪化の変化と要因分析評価を行います。
新たな問題として看護計画へ反映するか、今後の観察や主治医への報告を検討するのかの記録となります。
O:仰臥位、腰部に圧痛あり
A:急性腰痛の可能性、無理な動作は禁忌
P:クッションで除圧、内服後も改善なければ主治医へ報告予定
S: 本人「今日は熱っぽい」
O: 37.8℃、呼吸数22回、痰量増加
A:軽度発熱・呼吸器感染兆候あり
P: クーリングと水分摂取促し、呼吸状態・解熱しなければ、連絡するように家族に説明 主治医報告
③ 指示の処置・投薬記録
目的は、実施内容と前後の観察の記録です。
アセスメントの視点は、適切性の評価(タイミングや方法)を行います。
今後の対応方針(継続・報告判断)の記録となります。
O:指示通り胃ろうから栄養剤400ml注入実施。嘔気・嘔吐なし。
A: 栄養管理良好
P:次回も同様に実施、経過観察継続
「SOAP形式」での記録のポイントは、今の問題、今の苦痛や苦しみ、そして今これが必要だ!と考えたことをアセスメントに書くことを意識しましょう。
訪問看護記録Ⅱの書き方のコツ
「今」起きている問題を中心に書く
日々の訪問看護の記録は「今、何が起きているのか」「どんな看護でどう関わったか」を軸に書きましょう。
情報共有のために、全てを詳細に書きすぎると記録が膨大になり、無駄なカンファレンスや残業の原因になります。
大切なのは、現在の課題とケアの状況が次に読むスタッフに伝わることです。
見出しをつけると伝わりやすい
スタッフ間で共有したい、しなければいけない重要事項は、「見出し付き」で書くと、情報がすぐ伝わりやすくなります。
- 【家族の状況】〇〇
- 【受診状況】〇〇
- 【服薬情報】〇〇
- 【医師の指示】〇〇 等
また、訪問看護記録には、利用者さんについての記録は詳細に記録していますが、ハラスメントやトラブルに関しての記録をしていないことがあります。
ハラスメント・トラブル対応についても記録をしておくことは、こういった情報がなにかあったときの立証になります。
加算に関わる記録も忘れずに
運営指導では、加算に関する記録が細かくチェックされます。
- 特別管理加算…管理内容(酸素・バルーンなど)は毎回記載
- ターミナルケア加算…経過の記録が必要(看取りの記録だけでは加算対象外)
- 難病等複数回訪問加算…頻回の訪問看護・指導が必要であると認めた理由など
特に、昨今訪問看護の不正請求問題がありましたので、これらに関してはきちんと根拠がわかるように記録しておきましょう。
記録の基本は必ず押さえる
訪問看護記録Ⅱには、必ず記載するべきことが決まっています。
訪問看護師は毎回の訪問時利用者の体温、脈拍等に心身の状態、利用者の病状、家庭での看護の状況、実施した指定訪問看護の内容、指定訪問看護に要した時間等を訪問看護記録書に記入しておくことなっています。
- 訪問した日時
- 訪問した看護師(療法士)氏名
- 利用者さんのバイタル、身体状況
- 実施したケア内容
- 所要時間等
この基本項目は、記録の抜け漏れがないようにします。
記録の目的を押さえた「効率化」が看護の質を高める
記録はあくまで「次につなげる」「情報を共有する」ための手段です。
必要な情報を的確に、簡潔にまとめることで、スタッフの負担を減らし、本来の看護実践に集中できる環境が生まれます。
また、記録に要する時間が10分が5分になれば、6件訪問なら60分が30分で終え、もう1件訪問できるかもしれません。
まとめ
訪問看護記録は、看護実践の証であり、情報共有や質の向上、請求やトラブル対応など多くの役割を持っています。
- 記録の5つの目的を押さえる
- SOAPで情報を整理し、混在させない
- 今、起こっている課題と看護実践を中心に記録
- 重要事項は見出し付きでわかりやすく
- 加算要件や法的リスク管理も忘れずに
必要以上に時間をかける記録は、現場の負担となり看護の質の低下にもつながります。
「書くべきこと」を見極め、事業所内でルール化することが、働きやすさやチーム力の向上につながるはずです。
記録は大切な業務の一つですが、「記録に追われる」のではなく「看護を支えるツール」として、ぜひ見直してみてください。
訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。
この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。