訪問看護での医師への報告・連絡・相談にはSBARを!

 

訪問看護師
訪問看護で主治医へ状態変化の報告したり、指示をもらうことが頻繁にありますが、いったいなにが言いたいの?と否定的な反応をされると、次回からの報告を躊躇してしまいます。

 

訪問看護の中で、主治医とのコミュニケーションを困難と感じたことはありませんか?

私自身も訪問看護の現場で主治医との“衝突”を経験しています。

主治医側からすれば、要領の得ない報告をする看護師が多い、看護師の知識や報告の仕方についての能力の低さを指摘した意見も聞かれます。

しかし、私が看護師になった頃は報告するスキルなどありませんでした。

自分たちは先輩に質問されながら学んできたんだからと言われ、ジレンマを感じるしかありませんでした。

しかしそれでは利用者さんが不利益を被ることになりますよね。

私は医療安全管理者養成研修に参加したことがあります。

この研修の中の海外から学ぶという章で「SBAR(エスバー)」という手法を知りました。

当記事では、利用者さんの安全と主治医との円滑なコミュニケーションが成立するSBARについて解説していきたいと思います。

 

SBARとは?

 

SBAR」は、アメリカのワシントンDC州のプロビデンス病院の看護師の教育方法として用いられているものです。

医療安全対策として多職種が長年の研究結果をもとに作成した「TeamSTEPPS」というプログラムの中の一つを切り取ったものです。

「分かりやすく相手に伝えること」は当然「医療安全」にも関与していることであり、利用者の安全・安楽を提供する看護師にとって欠かせないスキルと言えます。

SBARは以下の構成からなります。

 

  • 状況、状態(Situation)
  • 背景、経過 (Background)
  • アセスメント、評価 (Assessment)
  • 提案、依頼、要請 (Recommendation)

 

この「SBAR」にそって報告・連絡・相談したい内容を組み立てると、わかりやすい報告・連絡・相談ができるようになります。

 

SBARの実際

では、実際にSBARを使った報告・連絡・相談をやってみます。

しかしその前に、迷うことも多い主治医への報告ですが、本当に報告が必要なのかを考えてみましょう。

変化した利用者さんの状態を目の前にして、独りよがりの「おかしい」ではなく、他の看護師の観察した情報や最近の経過、主治医の治療方針などを再確認します。

 

確認したい項目
  • カルテからこれまでの経緯を確認
  • 現病名や既往歴
  • 経過の過程と過去のアセスメントはどうだったか
  • 飲んでいる薬剤、検査結果など

 

これらを確認し、「やはりおかしい、報告すべきだ」と判断したら、SBARを使って報告・連絡・相談をしていきましょう。

 

「SBAR」
  • 状況、状態(Situation)
  • 背景、経過 (Background)
  • アセスメント、評価 (Assessment)
  • 提案、依頼、要請 (Recommendation)

 

ではやってみましょう。

 

1.状況、状態(Situation)

まず利用者さんに何が起こっているかを簡潔に伝えます。

 

  • 〇〇さんが発熱しているので報告します。
  • 〇〇さん、SPO2 90%が持続しています。

 

ここで、背景(B)をダラダラと伝えてしまいがちなので注意が必要です。

 

2.背景、経過(Background)

利用者さんの気になること以外の情報を伝えます。

 

  • 「熱感もあり、水分も取れていません」
  • 「四肢がダラリとしていて、はっきり話ができません」
  • 「在宅酸素は1.0L使用中です」
  • 「慢性腎不全で、週3回透析に行っています」 など

 

3.アセスメント、評価 (Assessment)

看護師が「こうではないか」と考えたことを伝えます。

実際に利用者の状況を見ているため、アセスメントをしたことを伝えられるとよいです。

 

「熱の原因はわかりませんが、咳もないようですし尿路感染の可能性が考えられます」

 

状態が悪くなっている場合や急変している場合は、その重大性を伝えることも必要です。

 

「問題は何か分かりませんが、状態は悪化しています」

 

4.提案、依頼、要請 (Recommendation)

最後に、必要だと考えることを提案します。

 

  • 「自宅にカロナールがありますので、飲ませておきましょうか?」
  • 「在宅酸素の流量を上げましょうか?」
  • 「臨時往診してもらえますか?」

 

利用者のそばにいるためできることは自信をもって提案しましょう。

SBARは、理解することはできても、実際に使っていくには多少の訓練が必要と思います。

私は、主治医に報告する前にSBARを意識することと、アセスメント力の向上に努めています。

事業所全体で訓練するのもひとつであると思います。

 

SBARからI-SBARCへ

 

SBARは、緊急時など簡潔にもれなく報告を行うためのツールです。

そのため状況から報告するようになっています。

しかし、近年では「自分が何者」で「誰(〇〇さん)」の報告をするかを宣言すること“Identify”が安全面からも求められるようになりました。

訪問看護の現場は特に所属の異なる医師に報告するため「SBAR」ではなく「I-SBAR」にします。

 

「〇〇訪問看護ステーションの〇〇です。〇〇町の〇〇さんについて報告です。」

 

そして、口頭指示、特に電話での報告などでは、指示内容を復唱“Confirm”(口頭指示の復唱確認)まで行うことで指示内容が確実なものとなり、「I-SBARC」に発展しています。

 

(主治医からの指示を聞いた後)

「わかりました。在宅酸素の流量を、3.0Lまで上げます。」

 

まとめ

 

SBARとは
  • 主治医がほしい情報に答えられる
  • 状況(S)背景(B)によって必要な情報が報告できる
  • 報告の手順が分かる
  • 評価(A)を必要とするため訪問看護師のスキルがあがる
  • I-SBARCを行うことで、医療安全対策となる

 

私たち訪問看護師は医師の指示のもとに医療行為を行っていますが、医師に従うだけでなく、協働が不可欠と考えます。

主治医は、対応・処置の判断を誤らないための的確な情報収集を訪問看護師の観察や状況報告に求めています。

医療安全の観点からSBARを用いて主治医との円滑なコミュニケーションを図りたいものです。

私が参加した医療安全管理者養成研修は終了すれば、病院等の医療安全管理者になることができます。

訪問看護ステーションには医療安全管理者をおく義務などはありませんが、これらの知識を習得しておくことをぜひおすすめします。

訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。

この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。

 

 

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