高齢化が進むなか、在宅医療の要として注目されている訪問看護ステーション。
しかし現実には、「黒字化が難しい」「開業したけど収支が合わない」といった悩みを抱える事業所も少なくありません。
なぜ訪問看護ステーションは赤字になってしまうのでしょうか?
この記事では、訪問看護ステーションが赤字になる主な4つの理由を詳しく解説し、経営改善のヒントも合わせてご紹介します。
目次
訪問看護ステーションが赤字になる主な4つの理由とは?
訪問看護ステーションが赤字になる背景には、構造的・運営的な要因が複数あります。
以下の4点が、特に多くの事業所で共通して見られる要因です。
1. 稼働率の低さ(訪問件数の不足)
訪問看護ステーションの売上は、看護師や療法士が訪問してサービスを提供した実績に応じて発生します。つまり、訪問件数が少なければ、どれだけ優秀なスタッフがいても売上にはつながらないのです。
訪問件数が少なくなる主な要因には以下のようなものがあります。
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新規開設間もなく、紹介元が少ない
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ケアマネとの関係構築が進んでいない
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訪問可能エリアが狭く、利用者が限定されている
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スタッフが足りず、1日の訪問上限が低い
たとえば、常勤換算1.0の看護師が、1日あたり4〜5件以上の訪問を安定して行って初めて事業として採算が取れるようになります。
1日3件以下の稼働状況が続けば、ほぼ確実に赤字になります。
2. 固定費・人件費の負担が重い
訪問看護は人材集約型のビジネスであり、売上の多くが人件費として消えていきます。
特に以下のようなケースでは、収支バランスが大きく崩れます。
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看護師やリハ職を正社員で雇用しているが、件数が追いついていない
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管理者が現場に出ず、間接業務のみを行っている
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事務スタッフを複数名雇っている
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給与設定が地域相場より高めになっている
訪問看護の1件あたりの単価は高く見えますが、移動時間や記録作業などを考慮すると、時間あたりの生産性が高いわけではありません。そのため、非効率な働き方をしていると、すぐに赤字に転落します。
3. 医療保険と介護保険のバランスが悪い
訪問看護は、「医療保険」と「介護保険」の両方を使って運営されるという特徴があります。実はこの保険の使い分けにも、赤字経営の要因が潜んでいます。
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医療保険:訪問回数が多く取れるが、請求の手続きや審査が厳しく、レセプト返戻や査定が起こりやすい
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介護保険:訪問回数に上限があるため、収益性に限界がある
特に、「介護保険の利用者ばかりが増え、医療保険の利用者が少ない」という状態では、売上の伸びに限界が生じます。
また、医療保険の請求でミスが重なると、返戻や減点により、予定していた売上が回収できなくなることもあるため、慎重な運営が求められます。
4. 営業不足・地域連携の欠如
訪問看護は、ただ待っているだけでは利用者が来てくれるサービスではありません。
特に開設初期や利用者が減ってきた時期には、積極的な営業と関係構築が必要不可欠です。
営業不足の事業所に見られる課題は以下の通りです。
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ケアマネジャーとの信頼関係ができていない
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医師や病院との連携が弱く、退院支援が取れていない
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地域包括支援センターや他サービスとの連携が希薄
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SNSやウェブサイトなどの情報発信をしていない
地域包括ケアの時代においては、地域との関係構築が事業存続の鍵を握ります。
営業を「苦手」と避けていると、いつまで経っても稼働率が上がらず、赤字が常態化してしまいます。
訪問看護ステーションを黒字化するためのヒント
赤字を脱却するためには、上記の原因をひとつずつ潰していくことが重要です。
以下に改善のヒントをいくつかご紹介します。
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訪問件数の見直し:1人あたり1日5件を目安に稼働調整
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雇用形態の工夫:非常勤や業務委託の活用で固定費を圧縮
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訪問可能エリアの拡大:近隣市町へのエリア拡張も検討
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営業活動の強化:週1回はケアマネ・病院等への定期訪問を
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SNSやWeb活用:情報発信で“思い出してもらえる存在”に
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医療保険の割合アップ:主治医との連携を強め、指示書を確保
まとめ
訪問看護ステーションが赤字になる背景には、訪問件数の不足、人件費の重さ、保険制度の活用バランス、そして営業不足といった複合的な要因があります。
しかし、これらの課題は対策次第で改善可能です。特に「稼働率の見直し」と「地域連携の強化」は、すぐにでも取り組める重要なポイントです。
もし赤字が続いている場合は、一度現状を冷静に見直し、早めに改善アクションを起こすことが黒字化への第一歩となるでしょう。



















