精神科訪問看護は、利用者の心の状態や生活背景に深く寄り添う必要があり、看護師に求められる能力も多岐にわたります。
そのため、「思っていたより大変だった」「精神的にきつい」と感じ、辞めたいと考える看護師も少なくありません。
しかし、精神科訪問看護は向いている人にとっては大きなやりがいを感じられる分野でもあるため、「辞めたい理由の正体」や「向き不向き」を知れば働きやすくなるケースもあります。
本記事では、精神科訪問看護を辞めたいと思う5つの理由と、向いている人・向いていない人の特徴を詳しく解説します。
目次
精神科訪問看護を辞めたいと思う5つの理由
① 利用者の“精神状態の変化”への対応が難しい
精神科訪問看護では、利用者の症状が日によって大きく変動することがあります。
・前回は安定していたのに今回は不穏
・気分の波が激しい
・幻覚・妄想が強く出ている
・突然怒り出す、落ち込む
こうした精神状態の変化に対応するのが難しく、「どう接していいか分からない」と悩む看護師は多いです。
特に精神科経験が少ない場合、戸惑いや不安が強くなり、辞めたい気持ちにつながりやすくなります。
② 境界性課題(依存・要求)が精神的負担になる
精神科訪問には、依存傾向や境界性の課題を持つ利用者も一定数います。
・訪問時間外の電話が多い
・感情の起伏が激しい
・強い依存を示す
・否定や批判を繰り返す
こうした関わりが続くと、看護師自身の心が疲弊してしまい、「精神的にもう限界…」と感じて辞めたくなる原因になります。
③ トラブル対応に疲れる(家族対応・生活環境・金銭問題など)
精神科訪問看護では、医療的な問題だけでなく、生活背景に起因するトラブルも起こりやすいです。
<代表的な例>
・家族間トラブル
・物が散乱した環境での訪問
・お金の管理ができず生活が破綻している
・孤立・貧困による問題
これらは看護師一人では解決が難しく、「自分の力ではどうにもできない」と感じて疲れが溜まりやすいのが特徴です。
④ 安全面の不安(暴力・自傷・薬物など)
精神科訪問看護は安全に働ける環境が整っているものの、ゼロではありません。
<考えられるリスク>
・不穏・興奮による暴言
・急な行動変化
・刃物が身近にある環境
・薬物・アルコール使用
こうした環境に不安を感じ、恐怖心が強くなると「訪問するのが怖い」「辞めたい」と感じる看護師もいます。
⑤ 感情労働が多く、気持ちが沈みやすい
精神科訪問看護では利用者の気持ちを受け止める場面が非常に多いため、
・話を聞き続ける
・相手の悩みに共感する
・否定しない姿勢が必要
といった“感情労働”が多くなり、心の消耗が大きくなりがちです。
特に繊細なタイプの看護師は、自分の感情まで揺さぶられやすく、「しんどい」「続かない」と感じる原因になります。
精神科訪問看護に向いていない人の特徴
辞めたい原因の多くは「向き不向き」とも関係しています。
① 一人判断が極度に不安な人
精神科訪問は判断に迷う場面も多いため、「すぐ誰かに相談したい」「一人が怖い」というタイプは負担が大きくなります。
② 相手の感情の影響を受けやすい人
利用者の落ち込みや怒りが強いと、自分まで気持ちが沈む人は疲れやすいです。
③ 境界線を引くのが苦手な人
・断れない
・良い人でいたい
・距離感が近くなりすぎる
というタイプは精神的に疲れやすい傾向があります。
④ 精神科の知識が薄いまま不安が消えない人
精神科は“慣れ”が大切です。
学習や同行が少ないと、ずっと不安を抱えて働くことになり、辞めたい原因になります。
⑤ 安定したルーティンが好きな人
精神科訪問は状態が日によって変わるため、決まった仕事を淡々とこなす方が向いている人には合わない可能性があります。
精神科訪問看護に向いている人の特徴
辞めたいと感じる一方で、精神科訪問看護が「天職」と感じる人も多い分野です。
① 相手の言葉にじっくり耳を傾けられる
傾聴力が高い人、相手の話を否定せず受け止められる人は非常に向いています。
② 柔軟で穏やかなコミュニケーションが得意
・ゆっくり話す
・急がせない
・相手のペースに合わせる
こうしたコミュニケーションが得意な看護師は利用者から信頼されます。
③ 冷静で落ち着いて対応できる
症状の変化にも冷静に対応できる人は精神科訪問で重宝されます。
④ 相手の背景を読み取るのが得意
関係性、家庭環境、生活状況、過去の背景などからアセスメントする力がある人は精神科訪問で活躍できます。
⑤ 多職種で協力しながら支援するのが好き
精神科訪問はチーム支援が基本。
・医師
・ケアマネ
・相談支援
・包括
などとの連携が好きな人に向いています。
辞めたい気持ちを軽くするためにできる5つの対処法
① まずは相談する(管理者・同僚・精神科医)
精神科訪問は「一人で抱えない」が大前提。
相談するだけで楽になることも多いです。
② 二人体制・同行訪問を増やしてもらう
不安がある利用者は、同行数を増やすことで安全性が高まります。
③ スーパービジョンや研修を活用する
精神科領域は学ぶほど安心して働けます。
④ 訪問件数・担当利用者を調整する
精神科は“量より質”。
件数を減らすだけで負担が大きく軽くなることがあります。
⑤ 自分に合うステーションを探す
精神科訪問看護はステーションによって特徴が大きく異なります。
・医療依存度が高い
・生活支援中心
・若年層が多い
・高齢者中心
など、自分に合えば働きやすくなります。
まとめ:辞めたいと感じる理由を知ることで、自分に合う働き方が見つかる
精神科訪問看護は、利用者の心の状態や家庭環境に深く関わる分、精神的負担が大きくなりやすい仕事です。
辞めたいと感じる理由には、
-
精神状態の変化に対応が難しい
-
依存・境界性課題が負担
-
家族トラブルなど外的要因
-
安全面への不安
-
感情労働の負荷
などがあります。
しかし一方で、精神科訪問看護はやりがいも大きく、向いている人にとっては非常に充実した働き方になります。
辞めたいと感じている今こそ、
・負担の原因は何か
・環境か
・自分の特性か
を見直すチャンスです。
精神科訪問看護があなたに合う働き方なのか、この記事が判断の参考になれば幸いです。



















