このような悩みを解決できる記事です。
高齢化が進んでいる社会において、在宅での転倒事故は重要な課題です。
訪問看護の利用者さんでも、転倒のエピソードをよく聞きます。
そこで今回は、転倒事故に関する概要や原因を解説したうえで、訪問看護の転倒予防における対応方法を5つ紹介します。
在宅での転倒事故を減らせるように、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
転倒事故に関する概要
要介護者や高齢者の転倒事故に関する概要を解説します。
「転倒と要介助状態の関係」と「転倒の発生場所」の2点から見ていきましょう。
骨折・転倒は介護が必要になる原因の3位である
2022年の国民生活基礎調査による報告を紹介します。
厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 統計表 第13表より
- 認知症
- 脳血管疾患
- 骨折・転倒
上記のとおり介護が必要になった原因は、認知症と脳血管疾患に次いで、骨折・転倒が3位であるとわかりました。
転倒の発生場所は住宅が最多である
続いて、消費者庁の調査による報告を紹介します。
転倒の発生場所は住宅が最多であり、約600件の転倒報告のうち、半数を占めていることもわかりました。
これら転倒事故に関する概要から、訪問看護においても転倒予防について何らかの対応をしていくことが重要であると考えられます。
転倒事故の要因は2種類ある
転倒事故の要因は大きく2種類に分けられます。
- 身体的要因を主とする内的要因:バランス障害、筋力低下、視力障害、薬剤の影響など
- 生活環境要因を主とする外的要因:段差、照明の暗さ、不適切な靴など
転倒予防を考えるのであれば、上記2点を理解し、それぞれに対応していきましょう。
訪問看護の転倒予防における対応方法5つ
転倒に関する概要や原因などを踏まえ、訪問看護での転倒予防における対応方法を5つ紹介します。
- バランス能力の評価をもとに動作を指導する
- つまずきにくい歩き方や履物について指導する
- 環境を調整する
- 簡単にできる運動を日常に取り入れる
- 体調や服薬状況を確認する
それぞれ見ていきましょう。
①バランス能力の評価をもとに動作を指導する
バランス能力を客観的に表す指標を用いて、評価と動作指導を行いましょう。
やや時間はかかりますが、さまざまな要素からなるBerg Balance Scale(BBS)は自宅でも行いやすいです。
- 日常生活動作と関連のある14項目の検査から構成
- 14項目それぞれの安全性や遂行時間などから0~4点で評価
- 最大で56点となり、45点以下はバランス障害があると判断
BBSにはこういった特徴があり、転びやすい方向や足の出しにくい方向などがわかり、どのような動作においてバランス障害が影響するのか判断しやすくなります。
この評価をもとに、苦手になりそうな動作を安全に行えるよう指導していきましょう。
- 方向転換時にふらつく場合は、ゆっくり振り向く
- 細かく足を出すようにして、バランスをとりながら向きを変える
- 開き戸を開ける際は、後方に下がらなくてもよい位置から開けるようにする
このように具体的な動き方を伝えて対応できるため、おすすめです。
②つまずきにくい歩き方や履物について指導する
つまずきによる転倒を防ぐためには、以下の方法が有効です。
- 歩くときは踵からつくことを意識する
- 脱げにくい靴を履いて歩く
つま先が地面に接しないように、十分上げることが大切です。
しかしつま先が接しないことを意識しすぎると、足全体を高く上げてしまい、かえって動きがぎこちなくなってしまいます。
そのため、指導する際は「踵からつく」ことを意識してもらい、自然につま先が上がるように指導しましょう。
履物にも注意が必要です。
スリッパは脱げてしまうこともあるため、踵まで覆う介護シューズや運動靴を履くように指導しましょう。
靴底のすり減りも確認しておくことをおすすめします。
③環境を調整する
自宅内の環境調整も大切です。
- 家電類のコード
- 床に置いた荷物
- 座布団やカーペット、玄関マット
- 部屋の敷居
- 照明の暗さ
- 杖や車いすの不具合
こういったほんの少しの段差や足場の悪さ、使う物品の不具合などが、転倒につながりやすいです。
そのため、以下のように調整しましょう。
- コード類や荷物は壁際に寄せ、部屋の中央に置くことを避ける
- 座布団は必ず踏まないように移動する
- 玄関マットやカーペットは滑り止めを使い固定する
- 部屋の敷居には段差解消用スロープを使ったり、テープなどを使って目立たせたりする
- 照明の明かりが届かない箇所には、センサーで点灯する間接照明などを置く
- 普段から使うものは、床や高いところを避けて手の届くところに置く
- 杖先のゴムを交換したり、車いすブレーキやタイヤの修理を依頼したりする
普段の環境を変えるため、心理的に抵抗感をもつ方がいるのも事実です。
あくまでも利用者さんとご家族の価値観を尊重したうえで、安全性と利便性ができるだけ高くなるように落としどころを決めましょう。
④簡単にできる運動を日常に取り入れる
下肢の筋力トレーニングやストレッチをして、転びにくい身体を作ることも大切です。
モチベーションを保ちつつ、あまり無理せずに続けていける簡単な運動を日常に取り入れましょう。
- テレビを見ながら足上げする
- つま先の上げ下げをしてから立つ
- 体幹の回旋や側屈をしたり、大腿部をさすったりしてから歩き出す
上記の運動なら、長続きできそうだと思いませんか?
始めるまでに高いモチベーションが必要な運動は、初めのうちしかやっていただけない可能性が高いです。
⑤体調や服薬状況を確認する
普段と異なる様子がないかどうかも確認しておきましょう。
- 血圧・体温・脈拍・呼吸数に変動がある
- めまいや立ちくらみがある
- 疲れやすく、非常に眠そうにしている
- 食欲がなく、水分摂取量も少ない
- 薬の飲み忘れや多剤服用の可能性がある
こういった場合は転倒のリスクが高まるだけでなく、新たな病気の発症も懸念されます。
転倒予防としては、そもそも動かないようにして、安静に過ごすことを優先してください。
そして、主治医やケアマネジャーへの報告や相談をしましょう。
まとめ
今回は、訪問看護の転倒予防における対応方法を紹介しました。
本記事のポイントを以下にまとめます。
- 客観的指標をもとに動作指導する
- つまずかない歩き方や履物の使用について指導する
- 環境を整える
- 頑張りすぎずにできる運動を日常に取り入れる
- 体調に異変があるときは安静にし、医療機関に相談する
一人ひとりの状況を見て、利用者さんに合わせた転倒予防を指導していきましょう。