訪問看護ステーションの利用者獲得のための地域連携活動

 

訪問看護師
新規利用者さんが増えません。どうしたらいいのでしようか?

 

訪問看護ステーションが安定的に利用者さんを獲得し、質の高いサービスを提供し続けるためには、地域との連携が欠かせません。

営業という言葉には抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、実際には「地域との連携活動」として、訪問看護の必要性を伝え、関係機関と良好な関係を築くことが目的です。

本記事では、利用者獲得につながる地域との連携活動の具体的な方法について解説します。

 

なぜ地域との連携活動が必要なのか?

 

訪問看護は、医師の指示やケアマネジャーの紹介がなければ利用者さんに届きません。

そのため、まずは地域の関係機関に自分たちの存在を知ってもらうことが重要です。

特に以下の点を伝えることで、訪問看護の必要性を理解してもらいやすくなります。

 

  • 訪問看護ステーションの特徴(24時間対応の有無、スタッフ数、専門性など)
  • 訪問可能エリアと受け入れ状況
  • どのような利用者さんに対応できるのか(慢性疾患、ターミナルケア、精神疾患など)

 

顔を出し、訪問看護師の人柄を知ってもらうことで、「ここなら信頼できる」と思ってもらうことが、継続的な紹介につながります。

 

連携活動先のリスト化と計画的な活動

どこと連携するのかを明確にし、計画的に回ることで効率的な地域との連携活動が可能になります。

 

地域での連携活動先の例
  • 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)
  • 病院(地域医療連携室、退院調整看護師、病棟看護師)
  • 診療所(在宅医、開業医)
  • 地域包括支援センター
  • 訪問看護併設の居宅事業所(外部の訪問看護を利用することもあるため)

 

連携活動計画の立て方

 

  1. 訪問エリア内での新規依頼を増やす目的が達成できる活動エリアを指定し(どの地域での利用者さんの訪問しているのかなど)、効率よく活動してしていきます。
  2. 1時間に何件回れるか活動計画を立てます。
  3. 訪問業務の合間の空き時間やキャンセルが生じた時を有効活用し、地域との連携活動に充てることを意識し、訪問と地域との連携活動が継続できるようにします。
  4. 管理者だけが行うことではなく、スタッフ全員でどういった連携がとれるのかを考えていきます。

 

挨拶回りのポイント

連携に向けての挨拶回りの際には、以下の情報を簡潔に伝えることが大切です。

 

  1. 訪問看護ステーションの訪問可能エリア(どこを訪問しているのか)
  2. スタッフの紹介(看護師の人数、対応可能な時間帯など)
  3. 24時間対応の有無、緊急時の連絡体制
  4. 受け入れ可能な利用者の条件(精神科・医療依存度が高いケースにも対応できるかなど)

 

上記の内容はパンフレットやチラシを有効活用するとよいです。

挨拶回りとは、自分たちのことを知ってもらうと思いがちですが、地域との連携活動には相手の要望や困りごとを聞く姿勢が重要です。

「どのような訪問看護が求められているのか?」

「今、困っていることはないか?」

「どのような情報提供が役立つか?」

対話を積み重ねる中で、常に相手目線で関係機関の要望に答えられるようにします。

もしかしたら、相手が気づいていない潜在的な要望があるかもしれません。

それらを提案できることが重要となってきます。

そうすることで、おのずと関係機関との信頼関係を築くことができます。

 

地域との連携活動を通じた信頼の構築

 

訪問看護の新規依頼は、信頼関係のある機関から紹介されることがほとんどです。

そのため、以下のような活動を積極的に行い、関係者との信頼を深めることが重要です。

 

初回訪問・定期的な報告

 

初回訪問後の報告(主治医・ケアマネジャーに対し、利用者の状況を共有)

新規の初回訪問後には必ず行うようにします。

なぜなら、ケアマネジャーは利用者さんのことをすごく大切にされているので、ケアだけでなく、寄り添った看護をしてもらえているかなども気にされています。

主治医やケアマネジャーに対してきちんと報告することで、サポート体制・協力体制ができるという安心感を持ってもらえます。

 

病状変化時の報告・相談(早期発見・早期対応・早期治療につなげる)

主治医は、訪問看護師がきちんとアセスメントをして適切なタイミングで報告をしてくれるかなどが重要です。

また、訪問看護師は利用者さんとの会話の中から、訪問診療や受診時には得られないような情報を収集して報告し、主治医の診療の役に立てるように努めます。

 

退院後のフォロー(1週間以内に病院・地域連携室に経過報告を行う)

入院先の主治医や地域連携室も退院支援をおこなった患者さんのことは、気にしているものです。

退院後の経過や状況を報告することは、地域との連携活動にはかかせません。

 

スムーズな情報提供

 

スムーズな情報提供の例
  • 問い合わせへの迅速な対応はもちろん、計画書・報告書の手渡しを行い、プラスαの情報を提供する。
  • ケアマネジャーのモニタリング前に報告し、利用者さんの日常がよりよくできることにつなげる。
  • ターミナルケースや状態の不安定な利用者さんなどは、週末ごとなど状態変化をまとめたものを、FAX等で報告する。
  • 利用者さんが入院した場合、病棟看護師や地域連携と連絡をとり、経過を把握する。
    把握できた情報は、ケアマネジャーや在宅医と情報共有を行う。
  • 利用者さんの退院のめどが把握できるように努め、ケアマネジャー、在宅医、ヘルパー等と情報共有をし、事前に方向性を統一しておき、退院前カンファレンスに参加できるようにする。
  • 退院前カンファレンスの段取りをケアマネジャーに任せっきりにしないように気をつける。等

 

 勉強会の企画・提案

ケアマネジャーのいる居宅支援事業所にも研修が義務付けされています。

以下のようなテーマで勉強会を企画し、関係機関とのつながりを深めることができます。

 

  • 認知症ケア
  • 終末期ケア
  • 感染対策
  • 難病申請・医療費助成制度
  • 事例検討会

 

戦略的な地域との連携活動

 

戦略的な連携活動

重点的な地域との活動エリアを決め(狙ったエリアで新規依頼をもらう)、狙ったエリア内の居宅支援事業所との連携活動や新規居宅支援事業所ができたら早めに挨拶に行きます。

ターミナルや重度の方など、狙ったエリア内で新規依頼をもらえることを考えれば、少し離れた大学病院なども連携先となります。

 

 地域との連携活動の苦手意識をなくす工夫

新入職員や地域との連携活動を苦手とする職員には、以下の方法で工夫します。

 

  • 慣れているベテランスタッフと同行してやり方を学ぶ
  • あいさつや名刺の渡し方まで、丁寧に教える
  • 私たちがやっている活動は、相手にとって必要な情報を渡し、繋がりにいくこと
  • パンフレットの作成など得意なことを活かしてもらうことも連携活動

 

 計画的な活動の継続

訪問看護は訪問業務だけではなく、スタッフ全員が地域での連携活動を継続して行っていくことが必要です。

 

  • 訪問キャンセル時に地域との連携活動にシフトできるよう計画しておく。
  • 同じ事業所から複数の依頼をもらえているかは連携がとれている指標になる。
  • 必要なタイミングでの地域連携室への報告が、のちの退院後の新規依頼につながる。
  • ケアマネジャーへは利用者のリハビリ動画などで、訪問看護介入後の効果などをみてもらい効果を実感してもらう。

 

地域との連携活動で選ばれる訪問看護ステーションへ

 

地域との連携活動は、単なる営業ではなく、地域の関係機関と信頼関係を築き、利用者により良いケアを提供するための大切な活動です。

また、これらの地域との連携活動を継続的に行うことで、土地勘を得たり、移動距離の把握にも繋がり、スケジュール調整など訪問看護師ひとりひとりにとっても活かせることがあります。

 

  • 活動先をリスト化し、計画的に回る
  • 挨拶時に訪問看護ステーションの特徴を伝え、相手の要望を聞く
  • こまめな報告と情報提供で信頼を得る
  • 勉強会の開催や事例共有を通じて連携を強化する
  • 移動距離の把握や土地勘もつき、スケジュール調整に活かせる。

 

こうした積み重ねが、新規利用者獲得につながり、地域に根付いた訪問看護ステーションの成長につながります。

訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。

この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。

 

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