認知症の在宅看護、関わり方のポイントを教えます!

認知症のある利用者さんと聞くと、「危険行動をしてしまう」「言ったことが伝わらない」など、苦手意識を持つ人も少なくありません。

反対に、認知症のある人も、分からないことや、できないことが増え、不安な気持ちを抱えています。

認知症の症状は周りの人の関わり方一つで、良くなることも、悪くもなることもあります

 

認知症がありながらも在宅生活を続け、笑顔で過ごされている利用者さんもたくさんいます。

今回は、在宅看護でも使える、認知症のある利用者さんと関わるポイントについて紹介していきます。

 

認知症のある利用者さんとの関わり方

 

認知症を発症すると中核症状(記憶障害、言語障害、見当識障害、失認、失行、遂行機能障害など)が生じます。

発症初期のころには忘れてしまうことや、できなくなってしまうことが増えていくことに、不安や焦る気持ちを抱えていることが多いです。

不安な気持ちをうまく表出できず、行動・心理症状(以下、BPSD)として徘徊・暴力行動、幻覚、妄想など問題となる行動をしてしまいます。

その結果、周りの人からの望まない反応につながり、利用者さんのBPSDが悪化する悪循環に陥ります。

なじみの関係

中核症状は大幅な改善は難しいと言われています。

しかし、BPSDにおいては関わる人により、症状が大きく変わることがあります。

 

認知症のある人が安心し過ごすためには、慣れ親しんだなじみの関係を作ることが必要です。

では、なじみの関係を作るにはどのような関わり方が必要でしょうか?

 

ここから、基本的な体調確認、その人を知る関わり、コミュニケーションの3つに分けて解説します。

 

体調確認

認知症のある利用者さんは、体調不良をうまく言葉で表出することができず、BPSDとして表すことがあります。

高齢者は普段から脱水、便秘、栄養不良などにおちいりやすい状況にあります。

バイタル測定、内服状況の確認、生活状況の聴取から、普段と変化がないか気がつくことが大切です。

 

利用者さんから情報を集められないときには、家族からも聴取するようにしましょう。

 

家の中で暴力行動がある

→トイレに行きたい気持ちを表出できない

 

また、訪問看護では複数人が担当したり、時には担当が交代したりすることもあります。

認知症のある人は、環境変化に過敏になりやすいです。

なじみの関係を意識し、できるかぎり同じメンバーで関わるようにましょう。

 

コミュニケーション

 

認知症のある利用者さんは言語的な理解力が低下し、コミュニケーションをスムーズにとることが難しくなります。

1人1人、それぞれの保たれているコミュニケーション能力を探り、関わることが必要です。

 

まずは自分を知る

利用者さんと関わる前に、まずは自分自身を振り返りましょう。

自分自身を知ることで、利用者さんにどのように関わるかヒントを見つけることができます。

 

・身長が高く、目力が強い

→初対面の人に威圧的に取られやすい

・普段話すペースが速い

→利用者さんが理解しにくいことがある

 

目線を合わせゆっくり話す

目線の高さを合わせること、ゆっくり話すことは高齢者と関わる基本です。

高いところから話しかけられると、威圧感や不快感を与えてしまうことがあります。

そのため、利用者さんと目線の高さを合わせることは大切です。

 

理解力が低下していると思われている利用者さんでも、大きな声でゆっくり話せばやりとりができることも少なくありません。

どのくらいの声の大きさ、スピードであれば聞き取ることができるか、探りながら関わるようにしましょう。

 

非言語的コミュニケーションを大事にする

認知症のある利用者さんは、その場の雰囲気や相手の様子を理解できることは多いです。

表情が怖い、威圧的と不快に感じると、一層コミュニケーションが難しくなります。

 

笑顔を大切に、その場を和やかな雰囲気にできるよう心がけ、居心地がいいと感じてもらえるようにしましょう。

 

言語的な理解が難しくても、優しく手を握る、触れることなどスキンシップを取り入れたコミュニケーションも効果的です。

「ここにいてもいい」という安心感につながります。

 

否定しない

認知症のある利用者さんは、繰り返し同じことを話したり、聞いたりすることがあります。

間違っていることを言ってしまったり、忘れてしまっていることもあるでしょう。

本人が「知らない、違う」と言ったら否定はせず、自尊心を傷つけない関わり方が大切です。

話した内容を忘れてしまっても、つらい気持ちや、不快感は残ります。

利用者さんに共感し、寄り添うように関わることで、信頼関係を築く一歩になります。

 

その人を知る

認知症のある利用者さんは家族や周りの人から、何もできない人や問題がある人と思われてしまうことが多いです。

まずは、その人を知ることが、利用者さんがその人らしく尊厳の保たれた生活を送る一歩になります。

 

生活歴を知る

その人がどのような人生を歩んできたのか、生活歴を聴取します。

どんなことを大切にしてきたのか、趣味や好みなど、信頼関係を築くための話題や介入のヒントが隠れています。

 

認知症があっても、過去の思い出など長期記憶は保たれていることが多いです。

誰しも昔の栄光、得意だったことを聞いてもらい、認めてもらえることはうれしいものです。

 

できることを見つける

認知症のある利用者さんは手続き記憶が保たれていることが多いです。

生活歴の中から得意だった活動をもう一度やってみると、案外できるものもあります。

課題の全てはむずかしくても、一部分を手伝ってもらうことも手です。

利用者さんができることを見つけ、参加し、褒められることで、快感情を得ることができ、安心感にもつながります。

 

異食行動があり、介助者も目を離せない不安から、日中はベッドで寝ていることが多かった。

若いころの趣味:将棋

訪問時に将棋をやってみたところ、先を読みながら実施できた。

介助者に「一緒にできることがある」と気付きがあり、家族で将棋を打つ時間ができ、離床につながった。

 

まとめ

認知症のある利用者さんは、中核症状の不安をBPSDとして表出してしまいます。

そのせいで周囲から「問題のある人」と、とらえられ、さらに孤独になる負の循環におちいっています。

 

BPSDがなぜ起こっているのか、利用者さんに共感し寄り添いながら探ること。

その中でなじみの場ができることで、認知症のある利用者さんは安心して在宅看護を利用できることにつながります。

 

合わせて、利用者さんができることを見つけること。家族の中での役割をつくる関わりをすることで、BPSDが落ちつくこともあります。

 

利用者さん一人一人に合わせ、寄り添いながら、在宅でも笑顔で過ごせるよう支援をしていきましょう!

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